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引きこもり竜が穴蔵からおいだされるかもしれません。

腹黒達は仕出かした事を省みず、自分が正しいと信じています。

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 使いが帰ってくる。

「返事を頂きました。明日、宮城に来られるそうです」
「それでは間に合わん! 今日だ! 今日中に!」
 
 景升けいしょうが怒鳴るが、使者は、

黄承彦こうしょうげん殿は顔を殴られた上に壁に叩きつけられ、ご令息は髪を掴まれ引きずられた上に両腕を捻られ、参上出来ないそうです」
「くっ……」

怪我をさせたと聞いていたが、実際の怪我の状態を聞くとそこまでやったかと馬鹿息子を罵りたくなる。

「そ、それならば、娘の主人とやらは?」
「奥方の怪我が思ったより酷く、熱を出したとのことで、民間医もしているらしく手当てと看病に……」
「私が参りましょうか?」

 スッと、口を挟むのは玄徳げんとくである。

「いや、結構だ。そちらはそちらで、新谷しんやに入ったばかりだろう。お帰りになり、長旅の疲れをとられるとよかろう」

 そっけなく言い返し、

「衛兵、玄徳殿のお帰りだ。お見送りをして差し上げろ」
「畏まりました」

衛兵が近づく。

「では、景升様、又」

 にっこりと底知れぬ微笑みを浮かべ、頭を下げた玄徳は去っていく。

「そして、そうとそなたは今すぐ、黄家に謝罪に行ってこい! 盗んだものは後日返す。今日は謝罪だけお受け取り下さいと申し上げろ! いいな?」

 景升は妻子に怒鳴る。

「な、貴方!」
「うるさい! 言い訳は聞かん! 今すぐ質素な衣装に着替え、謝罪に行け! 受け入れて貰えるまで帰ってくるな!」

 外を示し追い出す。

「くそっ。どいつもこいつも厄介事を押し付けやがって……」

 舌打ちをする景升。

 黄巾賊の乱がなければ中央で、王族の末裔としてそこそこの地位を得られていたはずである。
 清流派の人間として、学問をしながらのんびりと……そして、中央官僚の娘である嫁との間に息子が生まれ、将来まで安定した生活が出来たのだ。
 
 ここは中原の中央、都会と田舎の中間。
 洛陽らくよう長安ちょうあん董仲穎とうちゅうえいによって破壊され、仕方なくこの地に長男を連れて来たのである。

 妻はすでに亡くなっていたので、ここ襄陽じょうようの有力者の令嬢である蔡氏さいしを後妻として迎えた。
 田舎者の嫁である。
 余り期待はしていなかったが、期待以下の事ばかり仕出かす。

 長男をイビり襄陽を追い出し、重要な南東の国境を警備する役割をわずかな兵のみで守らせる。
 そして、自分で生んだ次男を可愛がり、愚か者に育て上げ、弟である蔡瑁さいぼうに勝手に水軍の全権を与え、妻の親族は思い上がり増長し、今回とんでもないことを仕出かした。

 今、この地がどんな立場か、嫁やその親族や取り巻きは知っているのだろうか……いや解っていれば、こんな馬鹿げたことは仕出かすまい。

「くそっ。こんな面倒なことをしでかしやがって……」

 舌打ちをする。

「こちらが頭を下げる羽目になるとは、この大事な時期に仕出かした……借りは後々返して貰う……」

 景升は窪んだ瞳をさ迷わせる。
 


……荊州が、世界が動き始める。

 しかし、孔明も琉璃も知らなかった……自分達が巻き込まれる運命の力を……。
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