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諸葛家の兄弟関係はいつもこんな感じです。

月英さんも、諸葛ファミリーの一人になりました。

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 残った4人と月英げつえいは、それぞれの近況や月英の研究の話にわいた。

「へぇ、月英殿ときんはそんなことを……」
「こ、孔明こうめい……殿も手伝ってくれています」

 孔明にあれこれ話を聞いていたので、緊張する月英に、

「あはははっ! 良いよ、良いよ! きんでも子瑜しゆでも。私も月英と呼ぶから。義理とはいえ兄弟なんだし」
「か、構いませんか!? お、私は琉璃りゅうり以外に兄弟いませんので……」
「やった!可愛い弟戴き! それに、研究家なんて最高! 明日になったら、研究室覗かせて貰おうっと!」

ワクワクした顔で子瑜はのたまい、月英は、

「良いですよ、でも私は、兄上程『墨子ぼくし』や『孫子そんし』などに通じていないので、戦に利用するようなものは余り作ったりしていませんけれど……」
「あぁ、大丈夫。りょうに聞いてるよ。それに、乱れた世の中の為に色々と作っているんだろう? 凄いことだと思うよ。私が住んでいる江東はまだまだ色々と遅れているし、見せて貰って盗めるなら技術貰いたいなぁ……」
「戦争技術に使えるものに、変化するものは今では多分ないですよ」
「当たり前。そんなのは武将と指揮官に任せます。私は、主君の教育係。主君は亮と同じ位の歳なんだけど、うーん。先々代と先代が武力重視なんだけど、主君もそういう方向にくそじじい……いや、先々代に従っていた暑苦しい武将が進ませようとする訳だ。私と一つ違いだった先代もそうだったんだ。出来る、やれって押し付ける訳。で、子敬しけい殿……魯子敬ろしけい殿と私が、そういう馬鹿から主君を守って勉強を叩き込んでるところだよ。主君は、言っては悪いけど家族で転々としてて、ろくに勉強してなくてねぇ。武力もそこそこ、政治力、帝王学もさっぱりじゃ、主、武将達に良いように使われるに違いない……と言うことで、びしばし只今調教中」

なんだけど……と、溜め息をつく。

「やっぱり、先代と先々代のことを出して、嫌味を言ってくる武将共に色々言われては、癇癪起こすから、もう少し学問についてや内政、外交その他、主君としての心得を教えないと、将来が不安でね……。だから、今回は亮の結婚をぶっ潰すのと、紅瑩こうえい晶瑩しょうえい、均に天誅てんちゅうをくれてやるのが次いでで、月英の研究とか見せて貰うのが、許可を貰った本当の理由だよ~!」
「嘘つき」
「亮の事が一番だった癖に」
「そうそう」

 弟妹が顔を見合わせる。

「うるさいな。一応、そういう理由でしか子敬殿に、出して貰えなかったんだよ。戻って来なかったら困るって」

 顔をしかめる。

「本当は、先代の頭脳と言われている周公瑾しゅうこうきん殿がいて、その人の言うことは良く聞くんだよ。義理の兄でもあるし、でも公瑾殿は暇な私と違って軍を率いる元帥だからね。滅多に戻ってこないから、拗ねてる」
「そ、そうなんですか……」

 月英は、顔をひきつらせる。

「……まぁねぇ、子猿みたいなもんだよ。気に入らないことがあると、ウキーッて癇癪。手懐けるのは少々手こずったけど、慣れたら可愛いもんだよ。で、何か、おもちゃになりそうなものを与えておこうかなって、思ってるんだよ」

 主を猿扱いする子瑜に、今度は月英は言葉をなくす。

「え~と、主ですよね?」
「そだよ。主君」
「しゅ、主君に子猿って……」
「可愛いんだよ。くるくるっとした巻き毛でね。目は大きくて真ん丸で、やんちゃそうな大きな口に、ワガママ放題でね。あれ嫌い、これ気に入らないって言うのを、こんこんと理詰めで追い詰めていって、最後に半泣きで御免なさい言わせるのが楽しくてねぇ……」

 クスクスと笑う子瑜に、月英は、

「もしかして、孔明や他の兄弟に……」
「亮は無理。理詰めで論破出来ないもん。亮は小さい頃から、私が徹底的に学問を叩き込んだから。それにあの子、星を読むでしょ? 理論で追い詰めていっても、星はこう言ってるって、空を見上げて淡々と言うんだもん。無理。昼間でも読むからね、駄目だよ。何度か星を読んで貰って、命からがら逃げ延びたの1回どころじゃないよ」
「へ?」

キョトンとする。

「あれ? 聞いてない? 私は洛陽らくよう長安ちょうあん遊学ゆうがくしているけれど、亮に勧められたからだよ。西に行った方がいいって」
「そ、そうなんですか!? 」
「じゃないと、普通地方の小役人の息子が12才で遊学しないって。まぁねぇ、亮言った時2才だったから、覚えてないんだろうね~。他にも江東に行くように勧められたのもそうだし、色々ね。今どき、星見はそんなに重要視されないんだろうし、黄巾賊の張角ちょうかくのように怪しい宗教めいたものと思われるかもしれないけれど、故郷は泰山郡たいざんぐんだから……そういった能力を持ってるとばれたら、何か変な宗教に連れていかれたりもあるからね。亮には、家族以外には決して言うな。口の固い親友にだけ伝えろと」

 真顔で答える。

「父も最初は信用しなかったよ。でも、蝗の害に、黄巾賊の乱、母の死、全部星を読んだ。父は亮が手に余るとどこかにやろうとした。それを止めたのが私と義母だよ。まぁ、その後すぐに亡くなったからしなかったけれど、もし亮をどこかにやってたら、息の根止めてたよ」

 ははは……乾いた笑いを漏らす。
 その顔にゾッとしながら、

「い、息の根……ですか」
「そうだよ。私は、父より亮の方が大事だからね」

あっさり答える。

「という訳だから、亮のことを頼むよ。月英」
「は、はい。大丈夫です!」

 とんだ兄弟に関わってしまったと思いつつも、自分も変わり者なのだから一緒だと首をすくめる月英だった。
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