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諸葛家の兄弟関係はいつもこんな感じです。
魔王降臨は周囲にも多大な影響を与えた模様です。
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祝宴の中で、客よりも可愛い妻にだけは見せたくなかった孔明はニコニコと微笑みながら、
「どうしたら、8年ぶりの再会でそこまで荒んだ会話を出来るんでしょうかね……4人共? 一応、私の六礼の祝宴なんですけど……?」
龐家の一室を借り受け、4人兄弟を見回し孔明は告げる。
「だ、だってね? 私の情報網で調べたら馬家の4番目、曲者だし、龐家の士元と言う男は切れ者だ! そんな奴らの中で、何かがあってはと思ってて、それなのに紅瑩が毒を盛られた。亮が急に結婚すると言う話だろう? ビックリして、気が気じゃなくてっ!」
子瑜が訴える。
「あぁ、兄上は姉上達が心配で……」
珍しい?
と、感心したように呟く孔明に、真顔で、
「そんな訳ないに決まってるでしょ! こんな破壊魔と変態、気にしてどうする! 紅瑩なんて、毒ごときで死ぬ訳ないだろう! 死んだら喜んで、祭壇の前で踊ってあげるよ~。亮も踊る?」
その一言にさすがにキレかかり、しかし、何とか抑えた孔明は、
「踊りますか! それに、そのせいで流産した紅瑩姉上を、いたわるつもりはないんですか?」
「姪っ子の死は素直に悼むけど、紅瑩がそんな状態で、周囲敵だらけなのに気を抜くのも悪い。だから武道馬鹿じゃなく、もう少し勉強をして賢くなってれば良かったんだよ。まだ、15、16才程度の少年にしてやられるとは、諸葛家の恥だよ! 恥!」
「兄上! 姉上の心の傷をえぐるような事を言わないで下さい! 兄弟ですよ! もっと大事に……」
「亮なら可愛いけど、他は可愛くないもん!」
予想通りの言葉に、紅瑩と晶瑩、均は目をそらす。
そして、長兄の暑苦しいねちっこい、はた迷惑な重い愛を一身に受ける孔明を不憫そうに見つめるが、口を挟まない。
挟めば、孔明を問答無用で偏愛している暴走兄に、食って掛かられるのがおちである。
これ以上鬱陶しいのはごめんであると、いつもはしないが三人は長兄に、孔明を餌に差し出す。
「それよりもお前だよ、亮!亮にとばっちりがあっては困るだろう! それに、何だい? その白髪! まだ20だというのに……こいつらの暴走に巻き込まれたり、巻き込まれたり……いいや、絶対そうに違いない! 亮は私の大事な弟だからね! 今すぐ荷をまとめ、江東に来なさい! 紅瑩も晶瑩も、均も手が離れたのだから……。それに、仕官したくなければしなくて良いんだよ? #周公瑾#__しゅうこうきん__#殿に亮が自分で決めるまでは仕官させない、勧誘しに来ないと確約をさせてきたからね!」
「無理です」
孔明は即答する。
「何故だ?」
「私は結婚しましたから、妻を守る責任があります。それに家族も友人もいます。見捨てたりするつもりはありません。……おいで、琉璃」
4人が驚き振り返ると、花嫁装束から夜衣に着替え、真っ赤に目を腫らした琉璃が、義兄の月英に開けて貰った扉の向こうから飛び込んでくる。
一目散に孔明めがけ突進ししがみつくと、うぎゃぁぁぁんと、泣き始める。
「にーしゃまぁぁぁ……どっこもいかにゃいれ! 琉璃もいくにょ……一緒にいくにょ! 良い子しゅゆかや、おいこうしゅゆかや、いかにゃいれ……」
「大丈夫だよ、琉璃。約束したよね? ずっと一緒だって。ねんね出来なかったの? 疲れてるのに」
抱き上げよしよしと宥める。
その時に、子瑜は初めて気づく。
「その娘、黄金色の髪してるじゃないか! それに、その兄殿も黄金の髪だ!」
その言葉に月英は苦しげに一瞬だけ、表情を歪ませ、
「私の……私達の母が西から来た舞姫で、見初められて妾になったもので……」
「あ、れ? 勘違いした? ち、違う違う……じゃなかった。いや、貴方達兄弟を貶めるような物言いをしたつもりではないんだ。本当に申し訳ない」
子瑜はスッと居ずまいを正し、ゆったりと頭を下げるとにこっと笑いかける。
その顔は、先程のような毒舌とは無縁のようだが、月英には解る。
文官とはいいながら、隙がない。
「嫌みとか卑下、蔑んでいる訳じゃないんだ。そうとられてしまうような言い方をしてしまったとしていれば、私が悪かったよ。申し訳ない」
もう一度繰り返すが、スッとくだけた物言いに周囲は、これは諸葛家の長子と内心ホッとする。
敵に回せば、危険きわまりない存在……。
初対面で、しかも孔明に聞いたところ、主君の直属の側近として教育したり、主君の仕事を調整したりするような高級官僚に、仕官してすぐに大抜擢された人物が、心底申し訳ないと丁寧に頭を下げつつ、周囲に自分の弟に何かしてみろと、牽制するとは……。
しかし、驚くだけの月英以外は微笑みながら、ほくそえむ。
向こうは牽制するだけしか出来ないと、内心悔しがっている。
これで……こちらにますます有利になる、と……。
そしてその通りで、それをまた読み取っていた子瑜は、内心家訓を繰り返しつつ、
「あのね?亮に聞いていると思うけれど、私は元々、洛陽に長安とか遊学経験があるんだよ。特に長安より北は馬を売り、絹織物やこの国の鉄製品などをもって帰る、そういう道が出来つつある。貿易の道だよね? その道から来た人は多いし、長安辺りの人はその、貿易に来た人と結婚をすることだってあるし、長安の西の涼州も混血の人が当たり前にいるんだ。でも、こちらではそういう差別があるのにと思って。でも、江東は余りないんだよ。そういう差別」
「そうなんですか?」
目を丸くする月英に、子瑜は、
「海の貿易があるから、江東は。それに、南方にも貿易相手はいるだろう?」
にっと笑う。
「こちらは珍しい貝や宝玉、海にだけ出来る丸い宝石と、様々なものとの貿易。様々な色を持つの人達は当たり前のように歩くし、私の主は赤茶色? かな? そう言う髪の色と緑色の瞳をしている。亡き主君の母君がその血を引いた女性で、主は母君の血を濃く引いたらしい。先々代……主の父上は周囲の反対を押しきって、一目見て愛した女性を正妻にしたんだよ。だから驚いちゃってねぇ……? この内陸で、しかも頭の固い、水軍が一番とか馬鹿げた妄想に捕らわれている遅れた街に、君達兄妹。そして君、亮が自慢してた天才技術者の黄月英殿でしょ? うわ、良いなぁ、亮に均。私も研究、開発したモノ見てみたいー!」
「兄上も破壊魔ですから、触らないように」
亮は、よしよしと琉璃をあやしながら口を挟むと、ブーと頬を膨らませる。
「えー? 亮は、いつも厳しいんだから、けーち!」
「ケチで結構です。それよりも、紅瑩姉上に謝って仲直りして下さい。喧嘩は後々まで尾を引くと恐ろしいことになりますよ。ちなみに、余りそのままにしておくと、荊州の4家出てきますよ」
「それは面倒だな……」
一瞬にして、頭の中で何かしら計算をした子瑜は紅瑩に謝り、紅瑩はそれを受け入れる。
「じゃぁ、兄上や姉上、均も4人で……あぁ、何なら月英も一緒に語って下さい。私は琉璃を寝かしつけてきますから……」
「いやにゃぁー。琉璃、にいしゃまとねんねしゅゆー。いっしょにゃにょー」
ぐずぐず最高潮の琉璃はわぁぁんと、泣きじゃくる。
「……わ、解ったよ。一緒にお休みしようね。……と言う訳ですので、明日。お話ししましょう」
孔明は抱っこした琉璃に微笑みかけ、何事か囁きながら部屋を出ていった。
「あれ、何? 嫁って幾つ? えっ? 幾ら亮が江東の武将よりも巨体だからって、あんなに小さくて舌ったらずで、うにゃうにゃぐずる子、幾つ?可愛い! 欲しい! 亮と一緒に!」
そう言いきった子瑜の言葉に、紅瑩は、
「8才よ、8才」
「可愛いのよ~? 一瞬にして馬家の腹黒、季常殿を敵認定」
晶瑩は続け、均は、
「朝から晩まで『にいしゃまー、にいしゃまいないー』って、家中走り回ってるわ。でも、あれで馬を操るのが得意で、黄家や、ここ龐家の馬は簡単に服従させるし、鞍も置かずに走らせるのよ。瞬発力も優れているの」
「そうなの、一度亮に仕返ししようと、拳より小さい石投げたら、亮に抱っこされて甘えてた琉璃が表情を変えて、手で振り払ったのよ。で、時々……」
「姉様と二人で遊ぶんだけど、素早いし動きに隙がないし、その上最後には箒や棒でやって来るから、負けちゃうわ~」
「どこまでやってる、一応大豪族の嫁が」
まだ遊び足りないのか、そこまでやっているのか?
顔をひきつらせる、子瑜である。
「だって琉璃は、元々戦場を転々としていた流浪の一団の先頭部隊にいたらしいの。裸馬に乗って、自分の武器も防具もなく、敵から武器を奪って戦っていたんでしょう。でも大怪我をして、その利用価値がないと捨てられたのね。愛馬と共に放浪し亮が助けたの。だから、亮以外見えないの」
「亮はどんなに甘えても、我が儘を言っても、許してくれる。琉璃にとってただ一人の人なの。琉璃には、甘えても許してくれる人が他にいないのよ。あぁ、月英殿や黄家の黄承彦様は少し慣れているけれど」
「……」
黙り込む子瑜。
「だから、兄貴……頼むから、琉璃を苛めないでくれない? 絶対に! 兄様しか琉璃にはいないかった。光華って言う、放浪していた時に乗っていた白馬しかいなかったんだよ?」
均が兄にゆっくりと繰り返す。
「お願いだから、琉璃を泣かせないで。そして、大事なものを見つけた亮兄様を振り回さないで……」
「どうしたら、8年ぶりの再会でそこまで荒んだ会話を出来るんでしょうかね……4人共? 一応、私の六礼の祝宴なんですけど……?」
龐家の一室を借り受け、4人兄弟を見回し孔明は告げる。
「だ、だってね? 私の情報網で調べたら馬家の4番目、曲者だし、龐家の士元と言う男は切れ者だ! そんな奴らの中で、何かがあってはと思ってて、それなのに紅瑩が毒を盛られた。亮が急に結婚すると言う話だろう? ビックリして、気が気じゃなくてっ!」
子瑜が訴える。
「あぁ、兄上は姉上達が心配で……」
珍しい?
と、感心したように呟く孔明に、真顔で、
「そんな訳ないに決まってるでしょ! こんな破壊魔と変態、気にしてどうする! 紅瑩なんて、毒ごときで死ぬ訳ないだろう! 死んだら喜んで、祭壇の前で踊ってあげるよ~。亮も踊る?」
その一言にさすがにキレかかり、しかし、何とか抑えた孔明は、
「踊りますか! それに、そのせいで流産した紅瑩姉上を、いたわるつもりはないんですか?」
「姪っ子の死は素直に悼むけど、紅瑩がそんな状態で、周囲敵だらけなのに気を抜くのも悪い。だから武道馬鹿じゃなく、もう少し勉強をして賢くなってれば良かったんだよ。まだ、15、16才程度の少年にしてやられるとは、諸葛家の恥だよ! 恥!」
「兄上! 姉上の心の傷をえぐるような事を言わないで下さい! 兄弟ですよ! もっと大事に……」
「亮なら可愛いけど、他は可愛くないもん!」
予想通りの言葉に、紅瑩と晶瑩、均は目をそらす。
そして、長兄の暑苦しいねちっこい、はた迷惑な重い愛を一身に受ける孔明を不憫そうに見つめるが、口を挟まない。
挟めば、孔明を問答無用で偏愛している暴走兄に、食って掛かられるのがおちである。
これ以上鬱陶しいのはごめんであると、いつもはしないが三人は長兄に、孔明を餌に差し出す。
「それよりもお前だよ、亮!亮にとばっちりがあっては困るだろう! それに、何だい? その白髪! まだ20だというのに……こいつらの暴走に巻き込まれたり、巻き込まれたり……いいや、絶対そうに違いない! 亮は私の大事な弟だからね! 今すぐ荷をまとめ、江東に来なさい! 紅瑩も晶瑩も、均も手が離れたのだから……。それに、仕官したくなければしなくて良いんだよ? #周公瑾#__しゅうこうきん__#殿に亮が自分で決めるまでは仕官させない、勧誘しに来ないと確約をさせてきたからね!」
「無理です」
孔明は即答する。
「何故だ?」
「私は結婚しましたから、妻を守る責任があります。それに家族も友人もいます。見捨てたりするつもりはありません。……おいで、琉璃」
4人が驚き振り返ると、花嫁装束から夜衣に着替え、真っ赤に目を腫らした琉璃が、義兄の月英に開けて貰った扉の向こうから飛び込んでくる。
一目散に孔明めがけ突進ししがみつくと、うぎゃぁぁぁんと、泣き始める。
「にーしゃまぁぁぁ……どっこもいかにゃいれ! 琉璃もいくにょ……一緒にいくにょ! 良い子しゅゆかや、おいこうしゅゆかや、いかにゃいれ……」
「大丈夫だよ、琉璃。約束したよね? ずっと一緒だって。ねんね出来なかったの? 疲れてるのに」
抱き上げよしよしと宥める。
その時に、子瑜は初めて気づく。
「その娘、黄金色の髪してるじゃないか! それに、その兄殿も黄金の髪だ!」
その言葉に月英は苦しげに一瞬だけ、表情を歪ませ、
「私の……私達の母が西から来た舞姫で、見初められて妾になったもので……」
「あ、れ? 勘違いした? ち、違う違う……じゃなかった。いや、貴方達兄弟を貶めるような物言いをしたつもりではないんだ。本当に申し訳ない」
子瑜はスッと居ずまいを正し、ゆったりと頭を下げるとにこっと笑いかける。
その顔は、先程のような毒舌とは無縁のようだが、月英には解る。
文官とはいいながら、隙がない。
「嫌みとか卑下、蔑んでいる訳じゃないんだ。そうとられてしまうような言い方をしてしまったとしていれば、私が悪かったよ。申し訳ない」
もう一度繰り返すが、スッとくだけた物言いに周囲は、これは諸葛家の長子と内心ホッとする。
敵に回せば、危険きわまりない存在……。
初対面で、しかも孔明に聞いたところ、主君の直属の側近として教育したり、主君の仕事を調整したりするような高級官僚に、仕官してすぐに大抜擢された人物が、心底申し訳ないと丁寧に頭を下げつつ、周囲に自分の弟に何かしてみろと、牽制するとは……。
しかし、驚くだけの月英以外は微笑みながら、ほくそえむ。
向こうは牽制するだけしか出来ないと、内心悔しがっている。
これで……こちらにますます有利になる、と……。
そしてその通りで、それをまた読み取っていた子瑜は、内心家訓を繰り返しつつ、
「あのね?亮に聞いていると思うけれど、私は元々、洛陽に長安とか遊学経験があるんだよ。特に長安より北は馬を売り、絹織物やこの国の鉄製品などをもって帰る、そういう道が出来つつある。貿易の道だよね? その道から来た人は多いし、長安辺りの人はその、貿易に来た人と結婚をすることだってあるし、長安の西の涼州も混血の人が当たり前にいるんだ。でも、こちらではそういう差別があるのにと思って。でも、江東は余りないんだよ。そういう差別」
「そうなんですか?」
目を丸くする月英に、子瑜は、
「海の貿易があるから、江東は。それに、南方にも貿易相手はいるだろう?」
にっと笑う。
「こちらは珍しい貝や宝玉、海にだけ出来る丸い宝石と、様々なものとの貿易。様々な色を持つの人達は当たり前のように歩くし、私の主は赤茶色? かな? そう言う髪の色と緑色の瞳をしている。亡き主君の母君がその血を引いた女性で、主は母君の血を濃く引いたらしい。先々代……主の父上は周囲の反対を押しきって、一目見て愛した女性を正妻にしたんだよ。だから驚いちゃってねぇ……? この内陸で、しかも頭の固い、水軍が一番とか馬鹿げた妄想に捕らわれている遅れた街に、君達兄妹。そして君、亮が自慢してた天才技術者の黄月英殿でしょ? うわ、良いなぁ、亮に均。私も研究、開発したモノ見てみたいー!」
「兄上も破壊魔ですから、触らないように」
亮は、よしよしと琉璃をあやしながら口を挟むと、ブーと頬を膨らませる。
「えー? 亮は、いつも厳しいんだから、けーち!」
「ケチで結構です。それよりも、紅瑩姉上に謝って仲直りして下さい。喧嘩は後々まで尾を引くと恐ろしいことになりますよ。ちなみに、余りそのままにしておくと、荊州の4家出てきますよ」
「それは面倒だな……」
一瞬にして、頭の中で何かしら計算をした子瑜は紅瑩に謝り、紅瑩はそれを受け入れる。
「じゃぁ、兄上や姉上、均も4人で……あぁ、何なら月英も一緒に語って下さい。私は琉璃を寝かしつけてきますから……」
「いやにゃぁー。琉璃、にいしゃまとねんねしゅゆー。いっしょにゃにょー」
ぐずぐず最高潮の琉璃はわぁぁんと、泣きじゃくる。
「……わ、解ったよ。一緒にお休みしようね。……と言う訳ですので、明日。お話ししましょう」
孔明は抱っこした琉璃に微笑みかけ、何事か囁きながら部屋を出ていった。
「あれ、何? 嫁って幾つ? えっ? 幾ら亮が江東の武将よりも巨体だからって、あんなに小さくて舌ったらずで、うにゃうにゃぐずる子、幾つ?可愛い! 欲しい! 亮と一緒に!」
そう言いきった子瑜の言葉に、紅瑩は、
「8才よ、8才」
「可愛いのよ~? 一瞬にして馬家の腹黒、季常殿を敵認定」
晶瑩は続け、均は、
「朝から晩まで『にいしゃまー、にいしゃまいないー』って、家中走り回ってるわ。でも、あれで馬を操るのが得意で、黄家や、ここ龐家の馬は簡単に服従させるし、鞍も置かずに走らせるのよ。瞬発力も優れているの」
「そうなの、一度亮に仕返ししようと、拳より小さい石投げたら、亮に抱っこされて甘えてた琉璃が表情を変えて、手で振り払ったのよ。で、時々……」
「姉様と二人で遊ぶんだけど、素早いし動きに隙がないし、その上最後には箒や棒でやって来るから、負けちゃうわ~」
「どこまでやってる、一応大豪族の嫁が」
まだ遊び足りないのか、そこまでやっているのか?
顔をひきつらせる、子瑜である。
「だって琉璃は、元々戦場を転々としていた流浪の一団の先頭部隊にいたらしいの。裸馬に乗って、自分の武器も防具もなく、敵から武器を奪って戦っていたんでしょう。でも大怪我をして、その利用価値がないと捨てられたのね。愛馬と共に放浪し亮が助けたの。だから、亮以外見えないの」
「亮はどんなに甘えても、我が儘を言っても、許してくれる。琉璃にとってただ一人の人なの。琉璃には、甘えても許してくれる人が他にいないのよ。あぁ、月英殿や黄家の黄承彦様は少し慣れているけれど」
「……」
黙り込む子瑜。
「だから、兄貴……頼むから、琉璃を苛めないでくれない? 絶対に! 兄様しか琉璃にはいないかった。光華って言う、放浪していた時に乗っていた白馬しかいなかったんだよ?」
均が兄にゆっくりと繰り返す。
「お願いだから、琉璃を泣かせないで。そして、大事なものを見つけた亮兄様を振り回さないで……」
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