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諸葛家の兄弟関係はいつもこんな感じです。
孔明さんの嫁取りは、後々笑い話になるでしょう。
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琉璃と孔明の式は日取りを決め、行われることになった。
均の為に準備していたお金を一旦使い、結婚の準備である六礼を行おうとした孔明だが、紅瑩の嫁ぎ先の馬家や、晶瑩の龐家が率先して動き回り、孔明はあれよあれよというまに花婿として、実家の代わりに龐家から黄家に琉璃を迎えに行ったのだが……。
「ふあぁぁぁん、にいしゃま、どこぉ……?」
と走り回る花嫁と、追いかける義兄月英と、義父黄承彦。
「な、何をされて……」
「にいしゃまぁぁぁ……いたぁーの」
泣きじゃくりながら孔明にしがみつく琉璃に、ゼイゼイと荒い息をした親子は、
「やっぱり、も、もう……こいつはお前に任せた、孔明」
「た、頼み、ましたぞ。婿殿!」
「な、にかありましたか?」
恐る恐る訊ねる孔明に、月英と黄承彦は交互に、
「あったも何も、お前が龐家から、眠ってる琉璃を連れておいて帰っただろう?」
「先程、目を覚ましてからは、この状態での……」
「『あにしゃまがいにゃい~、あにしゃまぁぁぁ、あにしゃま、どこぉ』って、ビービー泣き通し。それで、一応オレがもうすぐ来るからって言ったら、『自分で行く!』ってこのざまだ! 折角の準備は水の泡! 実家で逃げ回る花嫁なんて前代未聞だぞ?」
怒ると言うよりも、呆れ返る月英の横で、黄承彦は腹を抱えて笑い始める。
「ははははっ」
「親父、大丈夫か? おかしくなってねぇな?」
「当たり前だ!」
ポカッと息子の頭を平手で軽く叩いた黄承彦は再び笑いながら、孔明を見る。
「こんな、馬鹿げた騒がしい式など、聞いた試しもなく、きっと他にありますまい。……婿殿。まだ幼く、ものの道理もここでの常識も、全く解らぬ娘ですが、よろしくお願いします。まぁ、これで良いと言われたのは婿殿ですからの。安心してお任せ致します」
「は、はい。お嬢さんを大事に、大切に致します」
孔明は隣に琉璃を座らせ、子供として親に対する拝礼をする。
そして、腰に手を当てニッと照れ臭そうに笑っている月英にも、弟としての拝礼をする。
「そして、義兄上。これからもよろしくお願いします」
「……あ、兄貴の前に、親友だからな! 当然だ!」
その後、孔明は琉璃と共に、何とか滞りなく儀式を済ませ、龐家に戻った。
車の中、居心地悪そうにもぞもぞしているらしい琉璃に、孔明は声をかける。
「琉璃? 」
「ご、ごめんにゃしゃい、なの……にいしゃま。めがしゃめたりゃ、にいしゃま、いなくて……しやない、おねーしゃんがいっぱいいたにょ。こ、こわかったの。で、も……お、おとーしゃまとおにーしゃまに、わゆいことしたにょ。ごめんにゃしゃいするの」
たどたどしい言葉。
琉璃の言葉は、北方の俗語のその又、訛り。
一度それとなく訊ねると、北方の戦を転々とする一団に物心着いた頃からいたらしい。
一団はただの兵士達のだけではなく、その家族や親族、途中で出会った仲間や、戦場となった故郷を捨てて流離う女子供もいた。
しかし、琉璃は髪と瞳の色の為に、ほとんどの者に忌避され、苛められたり食事を与えられなかったりと、悲惨な目に遭っていたらしい。
だが、その中には仲良くしてくれた一つ上の女の子もいて、蔑まれ吐き捨てられた言葉を意味も解らず繰り返すしか出来なかった琉璃に、言葉を教えてくれたらしい。
そしてようやく覚え始めた頃には、一団の中でも戦に出る部隊に否応なく押し込まれ、裸馬の光華と共に戦場を駆け巡ることになったのだという。
「おこってうかにゃ……おにーしゃま、おとーしゃま。琉璃きあいってゆうかにゃ……?」
「それはないよ。琉璃」
孔明は、優しく告げる。
「琉璃のお父さんもお兄さんも、怒ってなかったよ。それよりも、嬉しがってたね。こんな式は前代未聞だって笑ってたでしょう?」
「わらうにょ?」
「そう。家の娘はこれだけお転婆でも、婿が来た。良い婿を貰ったって自慢するらしいよ? 私が良い婿か良く解らないけれどね? それと、大袈裟に話を流すんだろうね。家の娘の琉璃は可愛いって」
「かわいー?」
孔明の言葉を繰り返す。
「そう、可愛いって。義父上は、大人しすぎる娘よりも、琉璃みたいなお転婆で可愛い娘が大好きだよ。同じく月英も」
「なのー?」
「そう。だから、心配しないこと。でも、やっぱり心配だったら、明日。義父上と月英に会いに行こう。お父さん、お兄さん、遊びに来ましたって。喜ぶよ?」
孔明の言葉に、見る間に目を輝かせる。
「は、はいにゃの、いくにょ!」
「じゃぁ、約束。行こうね? 明日が楽しみだね」
話しながら歩いていると、龐家の門が見えてきたのだった。
均の為に準備していたお金を一旦使い、結婚の準備である六礼を行おうとした孔明だが、紅瑩の嫁ぎ先の馬家や、晶瑩の龐家が率先して動き回り、孔明はあれよあれよというまに花婿として、実家の代わりに龐家から黄家に琉璃を迎えに行ったのだが……。
「ふあぁぁぁん、にいしゃま、どこぉ……?」
と走り回る花嫁と、追いかける義兄月英と、義父黄承彦。
「な、何をされて……」
「にいしゃまぁぁぁ……いたぁーの」
泣きじゃくりながら孔明にしがみつく琉璃に、ゼイゼイと荒い息をした親子は、
「やっぱり、も、もう……こいつはお前に任せた、孔明」
「た、頼み、ましたぞ。婿殿!」
「な、にかありましたか?」
恐る恐る訊ねる孔明に、月英と黄承彦は交互に、
「あったも何も、お前が龐家から、眠ってる琉璃を連れておいて帰っただろう?」
「先程、目を覚ましてからは、この状態での……」
「『あにしゃまがいにゃい~、あにしゃまぁぁぁ、あにしゃま、どこぉ』って、ビービー泣き通し。それで、一応オレがもうすぐ来るからって言ったら、『自分で行く!』ってこのざまだ! 折角の準備は水の泡! 実家で逃げ回る花嫁なんて前代未聞だぞ?」
怒ると言うよりも、呆れ返る月英の横で、黄承彦は腹を抱えて笑い始める。
「ははははっ」
「親父、大丈夫か? おかしくなってねぇな?」
「当たり前だ!」
ポカッと息子の頭を平手で軽く叩いた黄承彦は再び笑いながら、孔明を見る。
「こんな、馬鹿げた騒がしい式など、聞いた試しもなく、きっと他にありますまい。……婿殿。まだ幼く、ものの道理もここでの常識も、全く解らぬ娘ですが、よろしくお願いします。まぁ、これで良いと言われたのは婿殿ですからの。安心してお任せ致します」
「は、はい。お嬢さんを大事に、大切に致します」
孔明は隣に琉璃を座らせ、子供として親に対する拝礼をする。
そして、腰に手を当てニッと照れ臭そうに笑っている月英にも、弟としての拝礼をする。
「そして、義兄上。これからもよろしくお願いします」
「……あ、兄貴の前に、親友だからな! 当然だ!」
その後、孔明は琉璃と共に、何とか滞りなく儀式を済ませ、龐家に戻った。
車の中、居心地悪そうにもぞもぞしているらしい琉璃に、孔明は声をかける。
「琉璃? 」
「ご、ごめんにゃしゃい、なの……にいしゃま。めがしゃめたりゃ、にいしゃま、いなくて……しやない、おねーしゃんがいっぱいいたにょ。こ、こわかったの。で、も……お、おとーしゃまとおにーしゃまに、わゆいことしたにょ。ごめんにゃしゃいするの」
たどたどしい言葉。
琉璃の言葉は、北方の俗語のその又、訛り。
一度それとなく訊ねると、北方の戦を転々とする一団に物心着いた頃からいたらしい。
一団はただの兵士達のだけではなく、その家族や親族、途中で出会った仲間や、戦場となった故郷を捨てて流離う女子供もいた。
しかし、琉璃は髪と瞳の色の為に、ほとんどの者に忌避され、苛められたり食事を与えられなかったりと、悲惨な目に遭っていたらしい。
だが、その中には仲良くしてくれた一つ上の女の子もいて、蔑まれ吐き捨てられた言葉を意味も解らず繰り返すしか出来なかった琉璃に、言葉を教えてくれたらしい。
そしてようやく覚え始めた頃には、一団の中でも戦に出る部隊に否応なく押し込まれ、裸馬の光華と共に戦場を駆け巡ることになったのだという。
「おこってうかにゃ……おにーしゃま、おとーしゃま。琉璃きあいってゆうかにゃ……?」
「それはないよ。琉璃」
孔明は、優しく告げる。
「琉璃のお父さんもお兄さんも、怒ってなかったよ。それよりも、嬉しがってたね。こんな式は前代未聞だって笑ってたでしょう?」
「わらうにょ?」
「そう。家の娘はこれだけお転婆でも、婿が来た。良い婿を貰ったって自慢するらしいよ? 私が良い婿か良く解らないけれどね? それと、大袈裟に話を流すんだろうね。家の娘の琉璃は可愛いって」
「かわいー?」
孔明の言葉を繰り返す。
「そう、可愛いって。義父上は、大人しすぎる娘よりも、琉璃みたいなお転婆で可愛い娘が大好きだよ。同じく月英も」
「なのー?」
「そう。だから、心配しないこと。でも、やっぱり心配だったら、明日。義父上と月英に会いに行こう。お父さん、お兄さん、遊びに来ましたって。喜ぶよ?」
孔明の言葉に、見る間に目を輝かせる。
「は、はいにゃの、いくにょ!」
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