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三世紀だよ。全員集合?
犬猿の仲とは琉璃と季常のような関係です。
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ところで、孔明の敬弟、馬季常は、しばらくぶりに弟の幼常と共に臥竜崗に訪れようとしていた。
二人の義理の姉である紅瑩と、その妹で龐家の嫁である晶瑩が、久々に実家に戻りたいと言い出したので、着いていったのである。
襄陽の龐家に一旦入り、馬車に乗った姉達の横を歩きながら、二人が中で話している内容を盗み聞きする。
「……それより、どうするの? 姉様」
晶瑩の声がする。
「黄家の月英さんが最近、あんなに嫌がっていたご実家に出入りしているようなのよね。でもね? 酷いと思わない? 嫌がってる月英さんが実家に出入りしているのに、どうして私達の所に孔明は来てくれないの? 均は遊びに来てくれてるのにっ!」
「そうねぇ……晶瑩のところにも来ないなんて、酷いわねぇ? ねぇ、季常さん、最近孔明と遊ばれて?」
内からの義理の姉の問いに、にこにこと、
「二月ぶりです。お会い出来るのが、楽しみです」
声を弾ませる季常の本性を、とうの昔に気付いている紅瑩は、扇の奥で溜め息をつく。
「そろそろ着く頃ね……あら、何かしら?」
丘の上から駆け降りるのは、幼常よりも小さく痩せた子供。
「やーにゃーのー!」
後ろを振り返り、言い放つ。
その後ろから、孔明の声が追いかける。
「こらっ! 琉璃。今日はお利口にしてって言ったでしょう? 約束は?」
「やーにゃもん!」
たたたっと馬車の前に現れ、横を走り抜けようとした子供に、季常はそ知らぬ顔で足を出す。
その足に引っかけられた子供は、勢いのまま道に叩きつけられる。
身を起こしたものの、顔を歪ませ……、
「ふ、あぁぁぁーん、こにょ、こにょ、おにーしゃん、いじわゆぅぅぅ!」
泣きじゃくる少女は季常を示し訴えるが、季常は当然のようににこにこと、
「何もしていないよ? 嫌だなぁ。石に引っ掛けて転んだ癖に」
「ちやうもぉぉん。にいしゃまー! いたいにょー!」
馬車の中にいた姉妹は顔を見合せ、溜め息を漏らす。
子供を生み、子育てや家の事をしているものの、いまだに武器を手放さない二人は、運動神経は平均以下の季常の嫌がらせは完全に見えていた。
そして、幼いとしか言い様のない子供にやるべきではない、その卑劣な行為に拳を握りしめ、隠し持つ暗器(暗殺武具)を取り出す。
が、気配は柔らかく、
「季常さん? 坂を駆け降りる方の通る所に、わざととは思いませんけれど足を出しては駄目ですよ。泣いているではありませんか」
チッと舌打ちをする季常を黙らせ、紅瑩と晶瑩は馬車を降りる。
近づき汚れるのも構わず、膝をついて泣きじゃくる子供の顔を覗き込む。
「ごめんなさいね? 私の義弟が意地悪をして……」
「ふぁぁぁーん、にいしゃまぁ!」
「ハイハイ、どうしたの?」
坂の上から早足で近づいてくるのは、ひょろひょろっとした紅瑩、晶瑩の弟である。
「にいしゃまぁぁ。いたいにょー! あぁーん」
「わぁぁ! 大丈夫? あぁ、だから走っちゃダメって言ったでしょ? 後で手当てしようね、泣かない、泣かない」
孔明は片腕で抱き上げると土ぼこりを払い、よしよしと頭を撫でて微笑む。
「琉璃? これで解ったでしょ? 私の言うことは聞くこと。いーい?」
「……あいっ……」
「お利口!」
目の前の親族に全く目もくれず、誉める。
「じゃぁ、帰ろうか。琉璃」
立ち去ろうとした孔明の頭部に、即座に手にしていた地面の石を投げた紅瑩は、ぎょっとする。
弟の腕の中で泣いていた子供が表情を一変させると、手を伸ばし石を払ったのだ。
「にゃにしゅうにょ! にいしゃま、いじめちゃらめ!」
必死で庇っているつもりなのか、弟を抱き締め紅瑩を睨む瞳は青い。
だが、その少女は知らないのか?
二人の弟は、この程度など平気で避けるのに。
「ねぇ、亮。この子、誰?」
「あれ? 姉上方に季常に幼常まで。どうしたんです? もしかして……姉上、琉璃を転ばせたりしませんよね?」
振り返った孔明は、姉達を見下ろす。
「違うわよ、紅瑩姉様の所の……」
「ごめんなさい! 僕が足を出していて、この子が転びました!」
季常は深々と頭を下げる。
「駄目だよ? 季常。わざとじゃないと思うけど、この子は女の子なんだからね? 可愛い顔を傷つけたら大変だよ。もうやめようね?」
「はい、気を付けます」
孔明の前ではしおらしい少年を、ぷくうーっと頬を膨らませて見下ろす琉璃。
琉璃にとって、季常は敵と認識したらしい。
孔明は自分のだと主張するように、ぎゅぅぅぅっとしがみつく。
それは正しい判断だと、晶瑩と紅瑩は心の中で賛同する。
それほど季常は外面がよく、兄弟や家族、孔明すら騙し通す演技力の持ち主である。
「所で、突然どうしたんです? 兄上方と喧嘩ですか?」
孔明は問いかける。
「そんな訳ないでしょう。私が喧嘩? 有り得なくってよ」
自信満々に、高笑いする晶瑩と首を竦める紅瑩。
「それより喧嘩なんてする程の度胸もないわよ。亭主には。鬱陶しいから妾の5、6人でも作ってこいって言ったら大泣きよ? 意気地がないんだから」
「兄上が泣くの解りますよ……私は」
孔明は呟く。
「あら、そう? それよりも、亮。その子だあれ?」
「ここから遠い姉様なら、分からなくても仕方ないけれど、同じ襄陽の私にも連絡なしなんて、どういう事かしら?」
姉達の追求に苦笑い、
「まぁ、まず家に着いてからにしましょう。月英も均もいますから」
琉璃を抱いたまま歩き出す。
紅瑩と晶瑩は馬車に戻り、実家に進んでいった。
二人の義理の姉である紅瑩と、その妹で龐家の嫁である晶瑩が、久々に実家に戻りたいと言い出したので、着いていったのである。
襄陽の龐家に一旦入り、馬車に乗った姉達の横を歩きながら、二人が中で話している内容を盗み聞きする。
「……それより、どうするの? 姉様」
晶瑩の声がする。
「黄家の月英さんが最近、あんなに嫌がっていたご実家に出入りしているようなのよね。でもね? 酷いと思わない? 嫌がってる月英さんが実家に出入りしているのに、どうして私達の所に孔明は来てくれないの? 均は遊びに来てくれてるのにっ!」
「そうねぇ……晶瑩のところにも来ないなんて、酷いわねぇ? ねぇ、季常さん、最近孔明と遊ばれて?」
内からの義理の姉の問いに、にこにこと、
「二月ぶりです。お会い出来るのが、楽しみです」
声を弾ませる季常の本性を、とうの昔に気付いている紅瑩は、扇の奥で溜め息をつく。
「そろそろ着く頃ね……あら、何かしら?」
丘の上から駆け降りるのは、幼常よりも小さく痩せた子供。
「やーにゃーのー!」
後ろを振り返り、言い放つ。
その後ろから、孔明の声が追いかける。
「こらっ! 琉璃。今日はお利口にしてって言ったでしょう? 約束は?」
「やーにゃもん!」
たたたっと馬車の前に現れ、横を走り抜けようとした子供に、季常はそ知らぬ顔で足を出す。
その足に引っかけられた子供は、勢いのまま道に叩きつけられる。
身を起こしたものの、顔を歪ませ……、
「ふ、あぁぁぁーん、こにょ、こにょ、おにーしゃん、いじわゆぅぅぅ!」
泣きじゃくる少女は季常を示し訴えるが、季常は当然のようににこにこと、
「何もしていないよ? 嫌だなぁ。石に引っ掛けて転んだ癖に」
「ちやうもぉぉん。にいしゃまー! いたいにょー!」
馬車の中にいた姉妹は顔を見合せ、溜め息を漏らす。
子供を生み、子育てや家の事をしているものの、いまだに武器を手放さない二人は、運動神経は平均以下の季常の嫌がらせは完全に見えていた。
そして、幼いとしか言い様のない子供にやるべきではない、その卑劣な行為に拳を握りしめ、隠し持つ暗器(暗殺武具)を取り出す。
が、気配は柔らかく、
「季常さん? 坂を駆け降りる方の通る所に、わざととは思いませんけれど足を出しては駄目ですよ。泣いているではありませんか」
チッと舌打ちをする季常を黙らせ、紅瑩と晶瑩は馬車を降りる。
近づき汚れるのも構わず、膝をついて泣きじゃくる子供の顔を覗き込む。
「ごめんなさいね? 私の義弟が意地悪をして……」
「ふぁぁぁーん、にいしゃまぁ!」
「ハイハイ、どうしたの?」
坂の上から早足で近づいてくるのは、ひょろひょろっとした紅瑩、晶瑩の弟である。
「にいしゃまぁぁ。いたいにょー! あぁーん」
「わぁぁ! 大丈夫? あぁ、だから走っちゃダメって言ったでしょ? 後で手当てしようね、泣かない、泣かない」
孔明は片腕で抱き上げると土ぼこりを払い、よしよしと頭を撫でて微笑む。
「琉璃? これで解ったでしょ? 私の言うことは聞くこと。いーい?」
「……あいっ……」
「お利口!」
目の前の親族に全く目もくれず、誉める。
「じゃぁ、帰ろうか。琉璃」
立ち去ろうとした孔明の頭部に、即座に手にしていた地面の石を投げた紅瑩は、ぎょっとする。
弟の腕の中で泣いていた子供が表情を一変させると、手を伸ばし石を払ったのだ。
「にゃにしゅうにょ! にいしゃま、いじめちゃらめ!」
必死で庇っているつもりなのか、弟を抱き締め紅瑩を睨む瞳は青い。
だが、その少女は知らないのか?
二人の弟は、この程度など平気で避けるのに。
「ねぇ、亮。この子、誰?」
「あれ? 姉上方に季常に幼常まで。どうしたんです? もしかして……姉上、琉璃を転ばせたりしませんよね?」
振り返った孔明は、姉達を見下ろす。
「違うわよ、紅瑩姉様の所の……」
「ごめんなさい! 僕が足を出していて、この子が転びました!」
季常は深々と頭を下げる。
「駄目だよ? 季常。わざとじゃないと思うけど、この子は女の子なんだからね? 可愛い顔を傷つけたら大変だよ。もうやめようね?」
「はい、気を付けます」
孔明の前ではしおらしい少年を、ぷくうーっと頬を膨らませて見下ろす琉璃。
琉璃にとって、季常は敵と認識したらしい。
孔明は自分のだと主張するように、ぎゅぅぅぅっとしがみつく。
それは正しい判断だと、晶瑩と紅瑩は心の中で賛同する。
それほど季常は外面がよく、兄弟や家族、孔明すら騙し通す演技力の持ち主である。
「所で、突然どうしたんです? 兄上方と喧嘩ですか?」
孔明は問いかける。
「そんな訳ないでしょう。私が喧嘩? 有り得なくってよ」
自信満々に、高笑いする晶瑩と首を竦める紅瑩。
「それより喧嘩なんてする程の度胸もないわよ。亭主には。鬱陶しいから妾の5、6人でも作ってこいって言ったら大泣きよ? 意気地がないんだから」
「兄上が泣くの解りますよ……私は」
孔明は呟く。
「あら、そう? それよりも、亮。その子だあれ?」
「ここから遠い姉様なら、分からなくても仕方ないけれど、同じ襄陽の私にも連絡なしなんて、どういう事かしら?」
姉達の追求に苦笑い、
「まぁ、まず家に着いてからにしましょう。月英も均もいますから」
琉璃を抱いたまま歩き出す。
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