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三世紀だよ。全員集合?
次男坊は未婚のまま、子育てを決意したようです。
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急いで駆けつけた黄家の主治医に傷の手当てをして貰い、酷い怪我も孔明が育てている薬草を用い固く包帯を巻く。
当時、華元化(華佗)や張仲景(張機)と言う名医がいて、麻酔を使った外科手術が行われたり、新しい薬などを調合していると聞いていたのだが……。
余程心配そうな顔をしていたのか、医者は首を竦める。
「大丈夫ですよ。深い傷ですが、戦場じゃ当たり前の傷です。痛み止めには薬草を噛んで貰う事になりますが、そのままにしておいて体が腐るより、手当てが出来るのですからましでしょう」
「……何故この子が戦場にいたと?」
「固くなっている両手ですよ。それに血が染み込んでいますしな。この子供、武器を握っていたのでしょう。自業自得ですな」
冷たいと言うよりも、蔑むような眼差しと、死んで当然と言いたげな口調に、孔明はすぅぅっと表情を凍らせる。
その表情に均はわたわたと慌て、話を逸らせるように話し掛ける。
「あ、あのっ、この後は定期的に包帯を取り替えて行けばいいんですよね? 老師」
「まぁ、そうですが……傷を受けてから時が経ってますからな。他領からやって来た孤児か、もしくは売られた先から逃げ出した者でしょう。面倒な事が起こる前に……」
言い募る医者の言葉に、
「……黙れ!」
孔明は低い声で言い放つ。
「出ていけ! この子の怪我を診てくれと頼みはしたが、余計なお喋りをしろと頼んだつもりはない! 銭なら払ってやる、今すぐ出ていけ!」
「なっ……!」
「襄陽一の名医か何か知らないが、生きたいと必死に息をしている子供に……患者にベラベラと、よく言えたものだな! 均! 今すぐ銭を出してやれ!」
「は…はーいっ! 先生のお帰りでーす! お送りします!」
長身の上に、ある程度筋肉の付いている孔明の上からの迫力に、均は医者の背中を押し出し逃走する。
「……悪い……あぁいう医者とは、思わなかった。これからは家にも出入り禁止にする」
近づいてきた月英は頭を下げる。
「……いいえ、月英が悪い訳ではないですから。それに、この庭で育てている薬草で充分だと解っただけでも良かったですよ……このまま、動かさなくていいですからね」
首をすくめ、苦笑する孔明。
「それよりもすみません。私はは余り感情の起伏はないと思っていたのですが……駄目ですね」
「駄目なもんか、お前が怒鳴ってなければオレが殴ってた。何だアイツ、自分を何様だと思ってるんだ」
月英はプリプリと怒る。
「で、こいつ……じゃない、この子供は……」
「家で面倒を見ますよ。家族が見つかると良いのですが……」
「いなかったら?」
「そのまま家で……えと、月英は平気ですか?」
恐る恐る問い返す。
「何がだ?」
孔明は言いにくそうに、ボソボソと告げる。
「げ、月英は……毎月生活費を入れてくれているのに、私はこの子を……」
「何言ってる。ここまで面倒を見てこれで見捨てるようじゃ、オレはお前を見損なう所か、親友やめてやる! ……と言うことでどーだ?」
ニヤリっと笑った月英は、バンバンっと背中を叩く。
「じゃぁ、今日から交代で看病な?」
「そうですね、看病しましょう」
孔明はほっとして、微笑んだのだった。
当時、華元化(華佗)や張仲景(張機)と言う名医がいて、麻酔を使った外科手術が行われたり、新しい薬などを調合していると聞いていたのだが……。
余程心配そうな顔をしていたのか、医者は首を竦める。
「大丈夫ですよ。深い傷ですが、戦場じゃ当たり前の傷です。痛み止めには薬草を噛んで貰う事になりますが、そのままにしておいて体が腐るより、手当てが出来るのですからましでしょう」
「……何故この子が戦場にいたと?」
「固くなっている両手ですよ。それに血が染み込んでいますしな。この子供、武器を握っていたのでしょう。自業自得ですな」
冷たいと言うよりも、蔑むような眼差しと、死んで当然と言いたげな口調に、孔明はすぅぅっと表情を凍らせる。
その表情に均はわたわたと慌て、話を逸らせるように話し掛ける。
「あ、あのっ、この後は定期的に包帯を取り替えて行けばいいんですよね? 老師」
「まぁ、そうですが……傷を受けてから時が経ってますからな。他領からやって来た孤児か、もしくは売られた先から逃げ出した者でしょう。面倒な事が起こる前に……」
言い募る医者の言葉に、
「……黙れ!」
孔明は低い声で言い放つ。
「出ていけ! この子の怪我を診てくれと頼みはしたが、余計なお喋りをしろと頼んだつもりはない! 銭なら払ってやる、今すぐ出ていけ!」
「なっ……!」
「襄陽一の名医か何か知らないが、生きたいと必死に息をしている子供に……患者にベラベラと、よく言えたものだな! 均! 今すぐ銭を出してやれ!」
「は…はーいっ! 先生のお帰りでーす! お送りします!」
長身の上に、ある程度筋肉の付いている孔明の上からの迫力に、均は医者の背中を押し出し逃走する。
「……悪い……あぁいう医者とは、思わなかった。これからは家にも出入り禁止にする」
近づいてきた月英は頭を下げる。
「……いいえ、月英が悪い訳ではないですから。それに、この庭で育てている薬草で充分だと解っただけでも良かったですよ……このまま、動かさなくていいですからね」
首をすくめ、苦笑する孔明。
「それよりもすみません。私はは余り感情の起伏はないと思っていたのですが……駄目ですね」
「駄目なもんか、お前が怒鳴ってなければオレが殴ってた。何だアイツ、自分を何様だと思ってるんだ」
月英はプリプリと怒る。
「で、こいつ……じゃない、この子供は……」
「家で面倒を見ますよ。家族が見つかると良いのですが……」
「いなかったら?」
「そのまま家で……えと、月英は平気ですか?」
恐る恐る問い返す。
「何がだ?」
孔明は言いにくそうに、ボソボソと告げる。
「げ、月英は……毎月生活費を入れてくれているのに、私はこの子を……」
「何言ってる。ここまで面倒を見てこれで見捨てるようじゃ、オレはお前を見損なう所か、親友やめてやる! ……と言うことでどーだ?」
ニヤリっと笑った月英は、バンバンっと背中を叩く。
「じゃぁ、今日から交代で看病な?」
「そうですね、看病しましょう」
孔明はほっとして、微笑んだのだった。
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