16 / 100
三世紀だよ。全員集合?
諸葛家の次男坊は余り変わっていないようです。
しおりを挟む
199年の、官渡の戦い……北東の豪族、袁本初(字は紹)と、近年、献帝を迎え入れ勢力を伸ばしつつある曹孟徳との両者の戦いは、圧倒的な兵力の差を参謀達の献策と、曹孟徳本人の判断力によって予想を覆し勝利した。
曹孟徳は過去の因縁の相手ではあるものの、彼の元で行われる政策には孔明すら驚かされることも多く、日々塾で議論をしたり、書庫で珍しい書を見つけては水鏡老師に借り、書き写しては返していた。
姉達やいつの間にか居候と化していた月英が、時々お金を渡してくれるものの、それは全て4年後に結婚する予定の均の費用の為に貯め、生活は水鏡老師から回ってくる子供達の塾の講師や、塾の後輩に講義をしたり、書物の模写、複写と畑仕事でやりくりをしていた。
「兄様も結婚すればいいのに……」
背が余り伸びず、ギスギス感の無い均は、いまだに女装を続けている。
孔明程学問が好きではない均は、孔明がある程度まで叩き込んだ勉強のみで満足し、今は家で月英と共に様々なものを作ったり、手先の器用さを生かして女性用の細工や、小物を作って売っている。
そんなことで将来は大丈夫かと聞いてみると、恋人の習家の玉音は男装の麗人であり、似た者同志らしい。
しかも趣味が毒薬収集と毒草育て、毒虫を捕まえ飼育するのが好きで、将来結婚後は不老不死の研究をしたいという物騒なというより、かなりヤバイ女性である。
自分も将来的に結婚するだろうが、兄弟達やその伴侶程ぶっ飛んだ人が来たらどうしようかと今から心配しているのだが……。
「……よし、できた!」
孔明は竹簡に文章の最後の一文字を書き込み、ほっと息を吐いた。
戦乱の為散文していた『孫子』の兵法書の完全版だという書簡を、知人から譲って貰ったという老師に頼み込み、写させて貰ったのである。
かくかくとしていて堅苦しい、けして美しい文字ではないが自分で読めるのなら満足だ。
「よし、時間は少し遅いけれど、老師の元に返しにいってこなければ。明日でもいいけれど、星は……今日の方がいいと示しているし……」
空を見つめポツリ呟いた孔明は、墨だらけの模写の時に着る衣から普段着に着替え、借りていた竹簡を布に巻き、母屋兼月英の研究室に、顔を覗かせる。
中では月英と均が二人して設計図を覗き込み、何やら話し込んでいる。
「水鏡老師の所に行ってきますね。二人共。食事は用意しておきましたから食べて下さい。いいですね?」
「おぉ行ってこい……これは、こうだ、解るか?」
「解ります。では、こちらの作業は……あぁ、兄様、気を付けて」
発明に熱中している二人の何とも気の抜けた返事に、首をすくめながら、
「じゃあ、行ってきますね? 爆発や怪我に注意して下さいね」
「おー」
その声を聞きながら扉を閉め、外に出ると空を見上げる。
今日は青空、快晴……。
そしてその空の向こうの星は、孔明の運命を変える何かが起こると出ていた。
「……まぁ、兄上が江東で暴走したり、姉上方が子供を投げ飛ばしたとか、拳術を教えたりや投擲武器を与えたとか……無いから大丈夫……のはず。それともあの季常と幼常が暴走するとか、それに便乗して士元が何かを仕出かしたり……な、無いよな~うん、ない!」
孔明は何とか悪い予感を振り払って、老師の館まで歩いていくのであった。
曹孟徳は過去の因縁の相手ではあるものの、彼の元で行われる政策には孔明すら驚かされることも多く、日々塾で議論をしたり、書庫で珍しい書を見つけては水鏡老師に借り、書き写しては返していた。
姉達やいつの間にか居候と化していた月英が、時々お金を渡してくれるものの、それは全て4年後に結婚する予定の均の費用の為に貯め、生活は水鏡老師から回ってくる子供達の塾の講師や、塾の後輩に講義をしたり、書物の模写、複写と畑仕事でやりくりをしていた。
「兄様も結婚すればいいのに……」
背が余り伸びず、ギスギス感の無い均は、いまだに女装を続けている。
孔明程学問が好きではない均は、孔明がある程度まで叩き込んだ勉強のみで満足し、今は家で月英と共に様々なものを作ったり、手先の器用さを生かして女性用の細工や、小物を作って売っている。
そんなことで将来は大丈夫かと聞いてみると、恋人の習家の玉音は男装の麗人であり、似た者同志らしい。
しかも趣味が毒薬収集と毒草育て、毒虫を捕まえ飼育するのが好きで、将来結婚後は不老不死の研究をしたいという物騒なというより、かなりヤバイ女性である。
自分も将来的に結婚するだろうが、兄弟達やその伴侶程ぶっ飛んだ人が来たらどうしようかと今から心配しているのだが……。
「……よし、できた!」
孔明は竹簡に文章の最後の一文字を書き込み、ほっと息を吐いた。
戦乱の為散文していた『孫子』の兵法書の完全版だという書簡を、知人から譲って貰ったという老師に頼み込み、写させて貰ったのである。
かくかくとしていて堅苦しい、けして美しい文字ではないが自分で読めるのなら満足だ。
「よし、時間は少し遅いけれど、老師の元に返しにいってこなければ。明日でもいいけれど、星は……今日の方がいいと示しているし……」
空を見つめポツリ呟いた孔明は、墨だらけの模写の時に着る衣から普段着に着替え、借りていた竹簡を布に巻き、母屋兼月英の研究室に、顔を覗かせる。
中では月英と均が二人して設計図を覗き込み、何やら話し込んでいる。
「水鏡老師の所に行ってきますね。二人共。食事は用意しておきましたから食べて下さい。いいですね?」
「おぉ行ってこい……これは、こうだ、解るか?」
「解ります。では、こちらの作業は……あぁ、兄様、気を付けて」
発明に熱中している二人の何とも気の抜けた返事に、首をすくめながら、
「じゃあ、行ってきますね? 爆発や怪我に注意して下さいね」
「おー」
その声を聞きながら扉を閉め、外に出ると空を見上げる。
今日は青空、快晴……。
そしてその空の向こうの星は、孔明の運命を変える何かが起こると出ていた。
「……まぁ、兄上が江東で暴走したり、姉上方が子供を投げ飛ばしたとか、拳術を教えたりや投擲武器を与えたとか……無いから大丈夫……のはず。それともあの季常と幼常が暴走するとか、それに便乗して士元が何かを仕出かしたり……な、無いよな~うん、ない!」
孔明は何とか悪い予感を振り払って、老師の館まで歩いていくのであった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
北海道防衛作戦 赤き嵐を吹きとめよ
みにみ
歴史・時代
1945年8月15日
日本国はポツダム宣言を受諾し太平洋戦争は終結した
だが、そのことを無視する北方の国があった
ソビエト社会主義共和国連邦 独裁者スターリンの指揮する共産主義国
8月18日からソ連軍は占守島を攻略
そして20日 北海道本島にソ連軍が上陸する
政府から武装解除を求められつつ自らの生のため武器を持つ日本軍
労働者解放という目標を信じるソ連軍兵士
終結したはずの戦争に巻き込まれる民間人
衝突しないために動くことはできないアメリカ軍
彼らがどう生きていくのか
北海道の地の行方は 御照覧あれ

架空戦記 旭日旗の元に
葉山宗次郎
歴史・時代
国力で遙かに勝るアメリカを相手にするべく日本は様々な手を打ってきた。各地で善戦してきたが、国力の差の前には敗退を重ねる。
そして決戦と挑んだマリアナ沖海戦に敗北。日本は終わりかと思われた。
だが、それでも起死回生のチャンスを、日本を存続させるために男達は奮闘する。
カクヨムでも投稿しています
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
日本が日露戦争後大陸利権を売却していたら? ~ノートが繋ぐ歴史改変~
うみ
SF
ロシアと戦争がはじまる。
突如、現代日本の少年のノートにこのような落書きが成された。少年はいたずらと思いつつ、ノートに冗談で返信を書き込むと、また相手から書き込みが成される。
なんとノートに書き込んだ人物は日露戦争中だということだったのだ!
ずっと冗談と思っている少年は、日露戦争の経緯を書き込んだ結果、相手から今後の日本について助言を求められる。こうして少年による思わぬ歴史改変がはじまったのだった。
※地名、話し方など全て現代基準で記載しています。違和感があることと思いますが、なるべく分かりやすくをテーマとしているため、ご了承ください。
※この小説はなろうとカクヨムへも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる