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始まりの始まりはいつからか解らない、とある一日から。
強烈な個性を持った兄弟の中では全く太刀打ち出来ません。
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孔明はひとまず、3人を安全な場所とおぼしき元、畑だった場所に座らせ、枯れ葉や小枝を用いて火をおこすと薪をくべる。
そして、
「ここで大人しくしていて下さい。姉上方。それに……」
姉達から離れ、ぷぅうっと頬を膨らませた可愛らしい桃色の衣を纏った少女を見る。
「均。そんなにしかめっ面の上に頬を膨らませたら、不細工になるよ。可愛くなるんじゃなかったのか? 髪の毛は後で整えてあげるから、衣の汚れを叩いて身綺麗にしておいで」
「……っ」
「返事ははい、だろう? 兄さんは礼儀のなってない子に、お前を育てていないよ」
孔明の一言に、均と呼ばれた少女は顔をあげる。
女の子……と思いきや、眼差しはキリッとしており、顔立ちは少年……中性的でもない……。
しかし、違和感なく女の子の格好ができるのは、二人の破壊魔神である姉達のお陰である。
「返事は?」
再び問いかける孔明の声に、小声で告げる。
「はい……兄様、ごめんなさい」
「よろしい。じゃあ、ここにちゃんといなさい。家の中から鍋とか、野宿に必要なものを取ってくるから、均はそこの菜もの取ってきて。均、出来るね?」
「はい」
今度はハッキリと返事をした可愛らしい弟の頭を撫で、そして、怖じ気づくこともなく破壊された家の残骸に入って行った。
しばらくして、鍋だけでなくめぼしいものをかき集めて来たらしい孔明が戻ってくると、均が井戸で汲んだ水を沸かし始める。
その間に孔明は、姉達が仕留めた豚をさばく。
さばいた肉の特に傷みの早い部位が、次々鍋に入れられていき、他の部位は燻したり、塩漬けにする。
鍋の様子を見ながら、手慣れたように解体していく。
そして、鍋が美味しい匂いを漂わせ始めると、さっさと3人の器によそう。
「はい。3人共。食べて下さい。お腹空いてるでしょう?」
「うんっ! 頂きます」
嬉しそうに食べ始める均の頭を撫で、姉達を見る。
「どうしたんですか? 食べないと無くなっちゃいますよ?」
首をかしげる弟に、躊躇いがちに晶瑩は、
「り、亮の分は?」
「あぁ、先に食べてて下さい。私なら先に寝る準備に、薪を一晩分は置いておかないといけないでしょう? 取りに行ってきます」
「で、でも……亮は朝……」
こちらも躊躇う紅瑩に、にっこりと、
「一食抜いても大丈夫ですよ。それに、姉上達は3人で全部食べる気ですか? 幾ら大食漢の姉上達でも、ここの肉の山までペロリっと食べる気ですか?」
「失礼な! そこまで食べないわよ。晶瑩じゃあるまいし」
「何ですって? 姉様と一緒にしないで、失礼だわ」
睨み合う姉達の頭をよしよしと撫で、
「はいはい、大人しくしてて下さい。行ってきます」
と、完璧な廃墟に入っていく。
雨漏りがしていて修復しようと思っていた屋根の残骸を剥がし、中に潜り込んだ孔明はその場にしゃがみこみ、溜め息が零れそうになる唇を噛む。
解っている。
解っているのだ。
3人に、本当に悪気がないのだということは……。
二人の姉達は突き抜けてお転婆で、末弟がただひ弱で気が小さく、外で遊ぶより家でいることが多かったこともあって、可愛らしいものや綺麗なものに、興味があるのだと……。
だが、これは酷すぎる。
自分はごくごく普通の一般の人間で、兄のように遊学出来るような優秀な人間ではないと、自覚している。
星を読むのは田畑の大根などの成育の為だし、計算は市場で買い物をする為に充分役にたっている。
読み書きも自分や家族が関わることすら理解できれば、それで充分満足なのだ。
ここは、衣食住の心配がない。
のんびりと田畑を耕し、雨の日には内職、暇があれば故郷から何とか持ち出した書物を読んだり、昼寝をしたり……それで良いのだ。
それなのに今、自分は何をしているのだろう。
何かが滲みそうになる目をまばたきをして隠し、唇には何とか笑みを作り、まずは数日程度生活に必要なものを探し出そうとし始めたのだった。
そして、
「ここで大人しくしていて下さい。姉上方。それに……」
姉達から離れ、ぷぅうっと頬を膨らませた可愛らしい桃色の衣を纏った少女を見る。
「均。そんなにしかめっ面の上に頬を膨らませたら、不細工になるよ。可愛くなるんじゃなかったのか? 髪の毛は後で整えてあげるから、衣の汚れを叩いて身綺麗にしておいで」
「……っ」
「返事ははい、だろう? 兄さんは礼儀のなってない子に、お前を育てていないよ」
孔明の一言に、均と呼ばれた少女は顔をあげる。
女の子……と思いきや、眼差しはキリッとしており、顔立ちは少年……中性的でもない……。
しかし、違和感なく女の子の格好ができるのは、二人の破壊魔神である姉達のお陰である。
「返事は?」
再び問いかける孔明の声に、小声で告げる。
「はい……兄様、ごめんなさい」
「よろしい。じゃあ、ここにちゃんといなさい。家の中から鍋とか、野宿に必要なものを取ってくるから、均はそこの菜もの取ってきて。均、出来るね?」
「はい」
今度はハッキリと返事をした可愛らしい弟の頭を撫で、そして、怖じ気づくこともなく破壊された家の残骸に入って行った。
しばらくして、鍋だけでなくめぼしいものをかき集めて来たらしい孔明が戻ってくると、均が井戸で汲んだ水を沸かし始める。
その間に孔明は、姉達が仕留めた豚をさばく。
さばいた肉の特に傷みの早い部位が、次々鍋に入れられていき、他の部位は燻したり、塩漬けにする。
鍋の様子を見ながら、手慣れたように解体していく。
そして、鍋が美味しい匂いを漂わせ始めると、さっさと3人の器によそう。
「はい。3人共。食べて下さい。お腹空いてるでしょう?」
「うんっ! 頂きます」
嬉しそうに食べ始める均の頭を撫で、姉達を見る。
「どうしたんですか? 食べないと無くなっちゃいますよ?」
首をかしげる弟に、躊躇いがちに晶瑩は、
「り、亮の分は?」
「あぁ、先に食べてて下さい。私なら先に寝る準備に、薪を一晩分は置いておかないといけないでしょう? 取りに行ってきます」
「で、でも……亮は朝……」
こちらも躊躇う紅瑩に、にっこりと、
「一食抜いても大丈夫ですよ。それに、姉上達は3人で全部食べる気ですか? 幾ら大食漢の姉上達でも、ここの肉の山までペロリっと食べる気ですか?」
「失礼な! そこまで食べないわよ。晶瑩じゃあるまいし」
「何ですって? 姉様と一緒にしないで、失礼だわ」
睨み合う姉達の頭をよしよしと撫で、
「はいはい、大人しくしてて下さい。行ってきます」
と、完璧な廃墟に入っていく。
雨漏りがしていて修復しようと思っていた屋根の残骸を剥がし、中に潜り込んだ孔明はその場にしゃがみこみ、溜め息が零れそうになる唇を噛む。
解っている。
解っているのだ。
3人に、本当に悪気がないのだということは……。
二人の姉達は突き抜けてお転婆で、末弟がただひ弱で気が小さく、外で遊ぶより家でいることが多かったこともあって、可愛らしいものや綺麗なものに、興味があるのだと……。
だが、これは酷すぎる。
自分はごくごく普通の一般の人間で、兄のように遊学出来るような優秀な人間ではないと、自覚している。
星を読むのは田畑の大根などの成育の為だし、計算は市場で買い物をする為に充分役にたっている。
読み書きも自分や家族が関わることすら理解できれば、それで充分満足なのだ。
ここは、衣食住の心配がない。
のんびりと田畑を耕し、雨の日には内職、暇があれば故郷から何とか持ち出した書物を読んだり、昼寝をしたり……それで良いのだ。
それなのに今、自分は何をしているのだろう。
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