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異世界とはどんなものかしら?
続いて蒸留酒を作りましょう。
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本来、消毒用のアルコールはエタノールではあるのだが、そのエタノールを説明できなかったので、古いワインを蒸留させることにした。
しかし、マーヤは、泡盛、テキーラ、ジン、コニャック、ラム酒、焼酎などは蒸留させたものと聞いているが、ワインは蒸留出来るのか……と思ったのだが、まず作ってみようと思い、簡単な蒸留器を作った。
確か、アルコールは約78度で蒸発するので、それを受け冷却し、溜まったものが蒸留酒である。
ガラスなどのビンに入れたワインなどを火で温め、水は100度なので、その前に蒸発するアルコールを集めるのである。
その、覚えている限りの知識で、ブラザー・ドロスの兄や父に作ってもらう。
そしてそれは、ビンに詰め、週に一回の教会での祈りの後に、配る。
一回試してもらい、次からはビンを持ってくると、お布施としてコイン一枚を払ってもらうことにしたのだ。
「教会で酒を売るとは……」
マザー・ライムは考え込む。
「違います。マザー・ライム。これはこう言ったものです」
準備していたビンを取り、布にほんの少し垂らすと、手を拭く。
「消毒になるのです。例えば、護衛の人が怪我をした時にそのままにせず、これを使って清めるのです。切り傷がばい菌で悪化することを免れます。それに、病気の時に看病する人が病人に触れる前に使ったり、病人の人が体を清めたりする事で悪化を避けます。それにこのお酒は、蒸留しているので飲むと、軽くて酔いつぶれ、酷いと死んでしまいます。強いんです」
「そうねぇ……私の実家は酒を作ってたから解るけど、ものすごい濃い臭いよ。飲めないわぁ」
マザー・オーリーはおっとりと言う。
「それに、よく言われていたのよ。怪我をすると酒を傷口に注ぐと消毒になるって。結構昔からの言い伝え。マーヤ様は素晴らしいわぁ……こんな田舎の言い伝えご存知だなんて。マーヤ様。もし良ければ、私の実家の葡萄畑を使って下さいませんか?」
「えぇ? 良いのですか?」
「父が死んで、兄も若くして喧嘩に巻き込まれて……。叔父に預けていたのですが年をとりましたから、葡萄畑をどうしようかと……使って頂けると有り難いですわ」
「あ、ありがとうございます! 古いワインは、元々保存状態が良ければ物凄くコクに深み、樽の原木の違いでも味が変わるのです。私の知っている限りでは、良いもので一本で一般家庭の半年分位の高額で取引されます」
マザー達は目を見開く。
「オークと呼ばれる木で作られた樽で熟成させると、木から香りが移ります。でも、果汁だけで作られたワインはビンに詰めておく方がいいです。皮や種子なども全て使って作ったものは熟成させることがいいそうです」
「うちは、濃い色の実と緑の実を混ぜてます」
「ピンク色のロゼですね。ちょうど中間です。もしするのなら、手間はかかりますが三種類作るのも手です」
「あの……マーヤ様? 何に使うのです」
マザー・ライムの声ににっこりと、
「ブラザー・ドロスのご実家のクラウス商会にお願いして、仕事を探す人々に仕事を提供してもらうのです。最初は消毒用、沢山収穫できるようになったら、ワインを作り、それを売ったお金で生活をしてもらうのです。ブラザー・ドロスの家には申し訳ありませんが、頑張って頂こうと思います」
「余り、クラウス商会ばかりを……」
マザー・ライムの苦言に、マザー・オーリーは、
「あら、いいじゃないですか。この商品はクラウス商会、あれは別より、『パンはパン屋』……商人に任せたら良いんですよ。いかがです? マザー・ミーム」
「そうですね……まぁ、これからこの街の排水工事などをマーヤ様が考えているようですし、そのお金を稼ぐことがまず必要でしょう。それにあの遺体が、シスター・マルガなら……大変な事です」
「……そうですね……分かりました。では、その手配を致しましょう」
「私は、家の方に連絡を致しますわ」
二人は頭を下げると下がっていく。
「マーヤ? 本当に大丈夫?」
「えぇ、アネッサ、ありがとう」
マーヤは苦笑する。
「本当は曖昧なのよ……私、まだお酒飲んだ事なくて、おじいちゃんが飲んでたのが主に蒸留酒だったの。でも、ワインはね……おじいちゃんが私が生まれた年に有名なワイナリーが作ったワインを、幾つか買っていて……私が成人したら飲もうって……あ、樽のままだと木の匂いが移って味が変化、熟成し過ぎてもダメだから、数年したらビンに移すのよ」
「そうなの……」
「うん。おじいちゃんは詳しくて、昔はワインに蜂蜜……虫が溜めた甘い蜜を混ぜたとか言っていたけれど……」
「あぁ、蜂蜜……それならある」
「えぇぇ! あるの?」
マーヤに、アネッサはシスター・サラを見る。
「蜂蜜は……」
「教会で作られる数少ない収入源です。ですので、ワインにもパンにも入れています。唇にもですね」
「そうなのね……私何も知らない……もっと勉強しなきゃ……」
「それより、無理はしないでくださいませ。マーヤ様」
シスター・サラにも念を押されたのだった。
しかし、マーヤは、泡盛、テキーラ、ジン、コニャック、ラム酒、焼酎などは蒸留させたものと聞いているが、ワインは蒸留出来るのか……と思ったのだが、まず作ってみようと思い、簡単な蒸留器を作った。
確か、アルコールは約78度で蒸発するので、それを受け冷却し、溜まったものが蒸留酒である。
ガラスなどのビンに入れたワインなどを火で温め、水は100度なので、その前に蒸発するアルコールを集めるのである。
その、覚えている限りの知識で、ブラザー・ドロスの兄や父に作ってもらう。
そしてそれは、ビンに詰め、週に一回の教会での祈りの後に、配る。
一回試してもらい、次からはビンを持ってくると、お布施としてコイン一枚を払ってもらうことにしたのだ。
「教会で酒を売るとは……」
マザー・ライムは考え込む。
「違います。マザー・ライム。これはこう言ったものです」
準備していたビンを取り、布にほんの少し垂らすと、手を拭く。
「消毒になるのです。例えば、護衛の人が怪我をした時にそのままにせず、これを使って清めるのです。切り傷がばい菌で悪化することを免れます。それに、病気の時に看病する人が病人に触れる前に使ったり、病人の人が体を清めたりする事で悪化を避けます。それにこのお酒は、蒸留しているので飲むと、軽くて酔いつぶれ、酷いと死んでしまいます。強いんです」
「そうねぇ……私の実家は酒を作ってたから解るけど、ものすごい濃い臭いよ。飲めないわぁ」
マザー・オーリーはおっとりと言う。
「それに、よく言われていたのよ。怪我をすると酒を傷口に注ぐと消毒になるって。結構昔からの言い伝え。マーヤ様は素晴らしいわぁ……こんな田舎の言い伝えご存知だなんて。マーヤ様。もし良ければ、私の実家の葡萄畑を使って下さいませんか?」
「えぇ? 良いのですか?」
「父が死んで、兄も若くして喧嘩に巻き込まれて……。叔父に預けていたのですが年をとりましたから、葡萄畑をどうしようかと……使って頂けると有り難いですわ」
「あ、ありがとうございます! 古いワインは、元々保存状態が良ければ物凄くコクに深み、樽の原木の違いでも味が変わるのです。私の知っている限りでは、良いもので一本で一般家庭の半年分位の高額で取引されます」
マザー達は目を見開く。
「オークと呼ばれる木で作られた樽で熟成させると、木から香りが移ります。でも、果汁だけで作られたワインはビンに詰めておく方がいいです。皮や種子なども全て使って作ったものは熟成させることがいいそうです」
「うちは、濃い色の実と緑の実を混ぜてます」
「ピンク色のロゼですね。ちょうど中間です。もしするのなら、手間はかかりますが三種類作るのも手です」
「あの……マーヤ様? 何に使うのです」
マザー・ライムの声ににっこりと、
「ブラザー・ドロスのご実家のクラウス商会にお願いして、仕事を探す人々に仕事を提供してもらうのです。最初は消毒用、沢山収穫できるようになったら、ワインを作り、それを売ったお金で生活をしてもらうのです。ブラザー・ドロスの家には申し訳ありませんが、頑張って頂こうと思います」
「余り、クラウス商会ばかりを……」
マザー・ライムの苦言に、マザー・オーリーは、
「あら、いいじゃないですか。この商品はクラウス商会、あれは別より、『パンはパン屋』……商人に任せたら良いんですよ。いかがです? マザー・ミーム」
「そうですね……まぁ、これからこの街の排水工事などをマーヤ様が考えているようですし、そのお金を稼ぐことがまず必要でしょう。それにあの遺体が、シスター・マルガなら……大変な事です」
「……そうですね……分かりました。では、その手配を致しましょう」
「私は、家の方に連絡を致しますわ」
二人は頭を下げると下がっていく。
「マーヤ? 本当に大丈夫?」
「えぇ、アネッサ、ありがとう」
マーヤは苦笑する。
「本当は曖昧なのよ……私、まだお酒飲んだ事なくて、おじいちゃんが飲んでたのが主に蒸留酒だったの。でも、ワインはね……おじいちゃんが私が生まれた年に有名なワイナリーが作ったワインを、幾つか買っていて……私が成人したら飲もうって……あ、樽のままだと木の匂いが移って味が変化、熟成し過ぎてもダメだから、数年したらビンに移すのよ」
「そうなの……」
「うん。おじいちゃんは詳しくて、昔はワインに蜂蜜……虫が溜めた甘い蜜を混ぜたとか言っていたけれど……」
「あぁ、蜂蜜……それならある」
「えぇぇ! あるの?」
マーヤに、アネッサはシスター・サラを見る。
「蜂蜜は……」
「教会で作られる数少ない収入源です。ですので、ワインにもパンにも入れています。唇にもですね」
「そうなのね……私何も知らない……もっと勉強しなきゃ……」
「それより、無理はしないでくださいませ。マーヤ様」
シスター・サラにも念を押されたのだった。
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