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第二章
進みゆく未来……滲み出す不安。
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スラヴォミールは時々熱を出すこともあったが、可愛らしく育った。
「にーに?」
「はーい? なぁに?」
母親にツインテールにしてもらい、今日は次兄のカシュパルと一緒に庭を歩いている。
「ミールも歩けるようになったね? 偉い偉い」
「……リリー。生まれる」
ポツン。
辿々しく告げた妹に目を見開く。
「……ミール、覚えてるの?」
兄を見上げたもうすぐ2歳のスラヴォミールは頷く。
髪は結んでもらったが、まだ幼いのでスモックとショートパンツ姿で、ふみふみと地面の感覚を確認している。
「にーに」
「大丈夫……と言うか、頑張るからね?」
「んっ!」
兄と手を繋ぎ、ハーブを植えてある庭を歩いていると、
「カシュパル、スラヴォミール!」
9歳になったマティアーシュは、一年前から王都の学校に入学し通っていたのだが、休暇で戻ってきたらしい。
「兄さま」
「にーさま」
マティアーシュは一人の男の子の手を引いていた。
「カシュパル、スラヴォミール。紹介するよ。ダグマル子爵家の孫のツィリルくん。スラヴォミールとラディスラフのちょうど間だね」
「は、はじめまして。ダグマル子爵家のツィリルです。よろしくお願いします」
3歳の男の子はもじもじと頭を下げる。
「はじめまして。ボクはブレイハ家の次男カシュパルです。そして、妹のスラヴォミール。あれ? スラヴォミール?」
兄の後ろに隠れ、チラッと顔を出すスラヴォミール、
「ミール? はじめまして言おうね?」
「ミールでしゅ」
ぺこんと頭を下げる。
「兄さま。ボクが二人と遊んでいますね」
「じゃぁ良い? 僕は、ダグマル子爵を案内するからね?」
「いってらっしゃい……じゃぁ、ツィリルくん。こっち行ってみようか?」
兄を見送り、二人の手を引いて歩き出した。
そして、庭の花だけでなく、温室やハーブ園を案内する。
「……わぁ……知らないお花です」
「そうだね。これは根付くかどうかわからないんだ。ある国でも決まった地域しか育たない花らしいから。図鑑とかしか描かれていないんだ」
「へぇ……! 今度おじいさまにずかんを見せてもらいます! でも、あの、触っても良いですか?」
キラキラと目を輝かせてツィリルはハーブを見つめている。
「良いよ? トゲとかないはずだけど、気をつけてね?」
「はい!」
「……」
ぷぅ……
頬を膨らませているスラヴォミールを見下ろし、
「ツィリルくん。スラヴォミールと一緒にいいかな?」
「はい! えっと、スラヴォミールちゃん?」
「……ミールでしゅ」
「じゃぁ、ミール。いこう?」
ツィリルは手を差し出す。
その手をじっと見つめ、真っ赤になると、自分の手を伸ばした。
「近くにいるからね? 危ないところに行かないんだよ?」
「はい!」
「はーい!」
手を繋いだ二人を邪魔はしない距離で見守る。
「そういえば、ツィリルはこの頃から遊びに来ていたんだよね」
少しずれつつあるものの、未来に進みつつあることにほっとしていいのか、不安に思えばいいのかわからないカシュパルだった。
「にーに?」
「はーい? なぁに?」
母親にツインテールにしてもらい、今日は次兄のカシュパルと一緒に庭を歩いている。
「ミールも歩けるようになったね? 偉い偉い」
「……リリー。生まれる」
ポツン。
辿々しく告げた妹に目を見開く。
「……ミール、覚えてるの?」
兄を見上げたもうすぐ2歳のスラヴォミールは頷く。
髪は結んでもらったが、まだ幼いのでスモックとショートパンツ姿で、ふみふみと地面の感覚を確認している。
「にーに」
「大丈夫……と言うか、頑張るからね?」
「んっ!」
兄と手を繋ぎ、ハーブを植えてある庭を歩いていると、
「カシュパル、スラヴォミール!」
9歳になったマティアーシュは、一年前から王都の学校に入学し通っていたのだが、休暇で戻ってきたらしい。
「兄さま」
「にーさま」
マティアーシュは一人の男の子の手を引いていた。
「カシュパル、スラヴォミール。紹介するよ。ダグマル子爵家の孫のツィリルくん。スラヴォミールとラディスラフのちょうど間だね」
「は、はじめまして。ダグマル子爵家のツィリルです。よろしくお願いします」
3歳の男の子はもじもじと頭を下げる。
「はじめまして。ボクはブレイハ家の次男カシュパルです。そして、妹のスラヴォミール。あれ? スラヴォミール?」
兄の後ろに隠れ、チラッと顔を出すスラヴォミール、
「ミール? はじめまして言おうね?」
「ミールでしゅ」
ぺこんと頭を下げる。
「兄さま。ボクが二人と遊んでいますね」
「じゃぁ良い? 僕は、ダグマル子爵を案内するからね?」
「いってらっしゃい……じゃぁ、ツィリルくん。こっち行ってみようか?」
兄を見送り、二人の手を引いて歩き出した。
そして、庭の花だけでなく、温室やハーブ園を案内する。
「……わぁ……知らないお花です」
「そうだね。これは根付くかどうかわからないんだ。ある国でも決まった地域しか育たない花らしいから。図鑑とかしか描かれていないんだ」
「へぇ……! 今度おじいさまにずかんを見せてもらいます! でも、あの、触っても良いですか?」
キラキラと目を輝かせてツィリルはハーブを見つめている。
「良いよ? トゲとかないはずだけど、気をつけてね?」
「はい!」
「……」
ぷぅ……
頬を膨らませているスラヴォミールを見下ろし、
「ツィリルくん。スラヴォミールと一緒にいいかな?」
「はい! えっと、スラヴォミールちゃん?」
「……ミールでしゅ」
「じゃぁ、ミール。いこう?」
ツィリルは手を差し出す。
その手をじっと見つめ、真っ赤になると、自分の手を伸ばした。
「近くにいるからね? 危ないところに行かないんだよ?」
「はい!」
「はーい!」
手を繋いだ二人を邪魔はしない距離で見守る。
「そういえば、ツィリルはこの頃から遊びに来ていたんだよね」
少しずれつつあるものの、未来に進みつつあることにほっとしていいのか、不安に思えばいいのかわからないカシュパルだった。
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