56 / 66
第2章
『ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜』
しおりを挟む
今日は、彰一の長男の理央と、その妻である祐実の結婚式である。
理央は父と同じ人前式もいいなと思っていたのだが、彰一が、
「祐実さんの親族に安心してもらえるように、ちゃんとした式にしてあげなさい。理央は自慢の息子で、向こうのご両親は分かって下さっているけれどね? だけど、祐実さんが辛い事件に巻き込まれて、苦しまれたのは事実だからね? ご親族を考えなさい」
「そうね。それに、祐実さんが可愛いのは知っているけれど、理央さんがかっこいいのは本当だから、お母さんも素敵なお式がいいと思うの」
遼は、遼一を抱っこしながら微笑む。
「遼さん……僕とそんなに年違いませんけど……お母さんで良いんですか? お姉さんの方が近いと思います」
「えぇぇぇ? お母さんじゃ駄目かしら……」
「いえ、嫌いじゃなくて、えっと、お母さんが大好きですから!」
理央は必死に答える。
すると、
「嬉しい! りょうちゃん、お兄ちゃんが大好きって……あぁ、りょうちゃんも早く言ってくれないかしら……」
「いや、遼? 遼一はまだ喋らないよ」
彰一は口を挟む。
「だからね、理央? お金のことは気にしなくて良い。理央は私達の息子だからね? 父母として、できる限りしてあげたいんだ。祐実さんに幸せだって思ってもらえるように……」
「……ありがとうございます。お父さん、お母さん……」
頬を赤くする理央。
先日から貸し衣裳ではなく、ウェディングドレスやタキシードなど一式を仕立て屋に頼む父に焦っていた理央だが、本当に嬉しく感じる。
「でもね? 理央さん」
遼は真剣に告げる。
「結婚式は、ウェディングドレスとイブニングドレスだけにしましょうね。本当は白無垢や色打掛も素敵だけど、祐実さんの身体に負担になると思うの。それに、私の夢なの! ウェディングベアとウェイトベア! 二人の為に作りますからね!」
「……えっとね? 遼……お母さんが言いたいのは、祐実さんは小柄だし、白無垢は似合うけれど、着て歩くのは大変だと言いたいんだ。だからね? ウェディングドレスとカクテルドレスの式はどうかな? という事。巴? どう思う?」
巴は、小さい頃から着物を着て色々なお稽古事をしてきたので頷く。
「お兄さん。着物なんですけど、男性もお腹にタオルを巻いて袴を履きます。女性は、祐実さんのようにほっそりとした人だと、ハンドタオル5枚、バスタオル2枚を体に巻いて、上を重ねて帯を巻きます。その上に打掛を羽織るのでかなり重いです。頭の日本髪もかつらですが、ずっしりします。折角のお式です。お姉さんが疲れてしまうものではなく、あぁ良かったと笑ってくれるお式がいいと思うのです」
「えっ! そんなに!」
「はい、訪問着とかはある程度減らしますが、それでも、見栄えがするようにタオルを巻いておくのです」
「見栄え……」
「そうねぇ……この前のりょうちゃんのお宮参り。私でも巻いたのよ。しかもね? 胸をぐいぐいって圧迫よ~。胸があるのも駄目なんですって」
遼は母乳で子育て中であり、厳しかったらしい。
「だから、可愛いドレスがいいと思うの! 巴ちゃんも可愛いから、お母さん楽しみなの」
「落ち着きなさい。遼」
次第にテンションが上がる妻を止める彰一は、末っ子を抱くと溜息をつく。
「遼は、理央と巴が大好きだからね……でも、あれこれ口出しするのは駄目だよ?」
「えっ。お父さん、お母さん。二人だけだと、本当に困ります! 僕たち、向こうとこっち行き来しなくちゃいけないし……巴ちゃん! 忙しいのは分かるけど、お願い出来ないかな?」
「あ、良いですよ。えっと、お兄さん!」
「えっ! う、嬉しいなぁ」
二人が照れ笑う。
兄妹仲は本当に良いらしい。
そう言ったやりとりと、祐実やその家族との話し合いが続き、結婚式の当日……。
祐実は、父と腕を組みながらゆっくり歩く。
途中で理央が待つ……。
その場所に到着すると、沢山傷つき苦しみ抜いた娘の手を優しく撫で、そっと外すと、
「理央くん……よろしく頼むよ」
「はい、お義父さん。祐実さんを大事にします」
祐実の手を取り、歩き出した。
その後の式で、二人は誓いを口にし、夫婦となった。
披露宴会場では、何故か最初のお酒が、新郎の父である彰一が……入場の曲は新郎の母、遼が選んでいた。
曲は、森口博子さんの『ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~』である。
昔のアニメの曲だが、根強いファンが多い。
そして、乾杯のお酒が配られる。
ビールやワインが多いのだが、今回配られたのは、
「初めまして。私は、新郎の粟飯原理央くんの親友で、谷本大輔です。このカクテルは、理央くんのお父さんから、皆さん……特に、新婦の祐実さんに贈るカクテルです」
式の司会進行を担当する人は別にいるものの、このカクテルだけは大輔は説明したかった。
「カクテルの名前は『ゴッドマザー』。アルコール度数が少し高いので、ご注意ください。乾杯用のものです。そして、このカクテルを理央くんのお父さんが何故用意したかったか……カクテルにはそれぞれ花言葉のように、カクテル言葉があります。この『ゴッドマザー』は、『無償の愛』『他人の考え方を受け入れられる優美な人』と言います。理央くんは私が学生時代から迷惑をかけ通しの、本当に優しく強く、そして祐実さんには、愛情と幸せな日常を共に過ごせる最高のパートナーだと思います」
目を丸くして大輔を見る理央に、
「そして、祐実さんは理央くんにはもったいない程、とても知的な美人です。それでいて個人で動くのではなく、周囲の仕事を確認しながらサポートし、人の意見を調整するサポート役として祐実さんの会社の方だけでなく、私たちの会社でも有能な人材として知られています。新郎の父、彰一さんが2人の為に選んだカクテルです。乾杯をお願い致します」
それぞれがグラスを手にし、そして、
「理央くん、祐実さんの今後を祝して!」
「おめでとう!」
祐実が頬を赤くして理央に、
「……幸せって、理央さんの側にあるんですね」
と囁き、理央も、
「これからも二人で……ううん、お互いの家族と幸せになろうね」
と微笑んだのだった。
理央は父と同じ人前式もいいなと思っていたのだが、彰一が、
「祐実さんの親族に安心してもらえるように、ちゃんとした式にしてあげなさい。理央は自慢の息子で、向こうのご両親は分かって下さっているけれどね? だけど、祐実さんが辛い事件に巻き込まれて、苦しまれたのは事実だからね? ご親族を考えなさい」
「そうね。それに、祐実さんが可愛いのは知っているけれど、理央さんがかっこいいのは本当だから、お母さんも素敵なお式がいいと思うの」
遼は、遼一を抱っこしながら微笑む。
「遼さん……僕とそんなに年違いませんけど……お母さんで良いんですか? お姉さんの方が近いと思います」
「えぇぇぇ? お母さんじゃ駄目かしら……」
「いえ、嫌いじゃなくて、えっと、お母さんが大好きですから!」
理央は必死に答える。
すると、
「嬉しい! りょうちゃん、お兄ちゃんが大好きって……あぁ、りょうちゃんも早く言ってくれないかしら……」
「いや、遼? 遼一はまだ喋らないよ」
彰一は口を挟む。
「だからね、理央? お金のことは気にしなくて良い。理央は私達の息子だからね? 父母として、できる限りしてあげたいんだ。祐実さんに幸せだって思ってもらえるように……」
「……ありがとうございます。お父さん、お母さん……」
頬を赤くする理央。
先日から貸し衣裳ではなく、ウェディングドレスやタキシードなど一式を仕立て屋に頼む父に焦っていた理央だが、本当に嬉しく感じる。
「でもね? 理央さん」
遼は真剣に告げる。
「結婚式は、ウェディングドレスとイブニングドレスだけにしましょうね。本当は白無垢や色打掛も素敵だけど、祐実さんの身体に負担になると思うの。それに、私の夢なの! ウェディングベアとウェイトベア! 二人の為に作りますからね!」
「……えっとね? 遼……お母さんが言いたいのは、祐実さんは小柄だし、白無垢は似合うけれど、着て歩くのは大変だと言いたいんだ。だからね? ウェディングドレスとカクテルドレスの式はどうかな? という事。巴? どう思う?」
巴は、小さい頃から着物を着て色々なお稽古事をしてきたので頷く。
「お兄さん。着物なんですけど、男性もお腹にタオルを巻いて袴を履きます。女性は、祐実さんのようにほっそりとした人だと、ハンドタオル5枚、バスタオル2枚を体に巻いて、上を重ねて帯を巻きます。その上に打掛を羽織るのでかなり重いです。頭の日本髪もかつらですが、ずっしりします。折角のお式です。お姉さんが疲れてしまうものではなく、あぁ良かったと笑ってくれるお式がいいと思うのです」
「えっ! そんなに!」
「はい、訪問着とかはある程度減らしますが、それでも、見栄えがするようにタオルを巻いておくのです」
「見栄え……」
「そうねぇ……この前のりょうちゃんのお宮参り。私でも巻いたのよ。しかもね? 胸をぐいぐいって圧迫よ~。胸があるのも駄目なんですって」
遼は母乳で子育て中であり、厳しかったらしい。
「だから、可愛いドレスがいいと思うの! 巴ちゃんも可愛いから、お母さん楽しみなの」
「落ち着きなさい。遼」
次第にテンションが上がる妻を止める彰一は、末っ子を抱くと溜息をつく。
「遼は、理央と巴が大好きだからね……でも、あれこれ口出しするのは駄目だよ?」
「えっ。お父さん、お母さん。二人だけだと、本当に困ります! 僕たち、向こうとこっち行き来しなくちゃいけないし……巴ちゃん! 忙しいのは分かるけど、お願い出来ないかな?」
「あ、良いですよ。えっと、お兄さん!」
「えっ! う、嬉しいなぁ」
二人が照れ笑う。
兄妹仲は本当に良いらしい。
そう言ったやりとりと、祐実やその家族との話し合いが続き、結婚式の当日……。
祐実は、父と腕を組みながらゆっくり歩く。
途中で理央が待つ……。
その場所に到着すると、沢山傷つき苦しみ抜いた娘の手を優しく撫で、そっと外すと、
「理央くん……よろしく頼むよ」
「はい、お義父さん。祐実さんを大事にします」
祐実の手を取り、歩き出した。
その後の式で、二人は誓いを口にし、夫婦となった。
披露宴会場では、何故か最初のお酒が、新郎の父である彰一が……入場の曲は新郎の母、遼が選んでいた。
曲は、森口博子さんの『ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~』である。
昔のアニメの曲だが、根強いファンが多い。
そして、乾杯のお酒が配られる。
ビールやワインが多いのだが、今回配られたのは、
「初めまして。私は、新郎の粟飯原理央くんの親友で、谷本大輔です。このカクテルは、理央くんのお父さんから、皆さん……特に、新婦の祐実さんに贈るカクテルです」
式の司会進行を担当する人は別にいるものの、このカクテルだけは大輔は説明したかった。
「カクテルの名前は『ゴッドマザー』。アルコール度数が少し高いので、ご注意ください。乾杯用のものです。そして、このカクテルを理央くんのお父さんが何故用意したかったか……カクテルにはそれぞれ花言葉のように、カクテル言葉があります。この『ゴッドマザー』は、『無償の愛』『他人の考え方を受け入れられる優美な人』と言います。理央くんは私が学生時代から迷惑をかけ通しの、本当に優しく強く、そして祐実さんには、愛情と幸せな日常を共に過ごせる最高のパートナーだと思います」
目を丸くして大輔を見る理央に、
「そして、祐実さんは理央くんにはもったいない程、とても知的な美人です。それでいて個人で動くのではなく、周囲の仕事を確認しながらサポートし、人の意見を調整するサポート役として祐実さんの会社の方だけでなく、私たちの会社でも有能な人材として知られています。新郎の父、彰一さんが2人の為に選んだカクテルです。乾杯をお願い致します」
それぞれがグラスを手にし、そして、
「理央くん、祐実さんの今後を祝して!」
「おめでとう!」
祐実が頬を赤くして理央に、
「……幸せって、理央さんの側にあるんですね」
と囁き、理央も、
「これからも二人で……ううん、お互いの家族と幸せになろうね」
と微笑んだのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる