懐かしい初期作品

息子の葬式

「私のお墓の前で 泣かないで下さい
　ここに私は いません
　眠ってなんか いません
　千の風に 千の風になって
　あの大きな空を 吹きわたっています」

　実家に行った自分は、息子の子竜に対面し、病みやつれ、一番体重が重かったときよりももっと小さくなった体に、悲しげな顔を見て、涙を流す。
　こんなに、私は息子に心配をかけていたのか……、
　まだ眠らないと私を心配してくれるのか……と。

「おかあしゃん。泣かないで……そばにいるからね」

　そう言っているように見えた。
　もう閉ざされることはないだろう……と思っていたまぶたも、

「子竜、遅くなってごめんね？お母さんだよ。大丈夫だよ。ねんね、ねんねだよ」

　と言い、まぶたを撫でると、スゥゥット閉ざされた。
　待ってくれていたんだと泣き崩れつつ、必死に３つの歌を歌った。

『アメイジンググレイス』
『木蘭の涙』

　そして、

『千の風になって』

　である。

　カラオケよりも、息子に優しい言葉を伝えてあげたいと、あえて『アメイジンググレイス』の歌詞カードを準備し、アカペラで歌った。

『アメイジンググレイス』

　黒人霊歌のひとつである。
　とても好きな曲で、心を込めて歌うのは本当に緊張する。
　それでも愛おしい息子に贈りたかった。

『木蘭の涙』は、スターダスト・レビューさんの曲で、大切な人を失った悲しみを歌った歌で、

「会いたくて会いたくて
　この胸の囁きが
　あなたを探している
　あなたを呼んでいる」

　から始まる。

「いつまでもいつまでも
　そばにいると言ってた
　あなたは嘘つきだね
　私を置き去りに……」

　と言うさびの部分は泣けた。
　でも、解りきったことで、二年以上生きるハムスターは老齢である。
　それでも、苦しいと思えた。
　そして、秋川雅史の『千の風になって』を、アカペラで呟くのではなく、大声で、歌えるだけの高音で、歌った。

　子竜は本当に頑張りやさんだから……。
　こんなに頑張ってくれた。
　泣いてばかりじゃいけない。
　土で眠って心残りのひとつである母のしゃこが、ずっと泣いててはいけない。もう一人いる息子の最後を看取ってあげたい……。

　最後に、三国志の愛のテーマを歌って最後に天国に送り出した。

「子竜ちゃんは趙雲から取ったんだよ。趙雲は白馬に乗った美形の武将でね、やっぱりかっこいいよ( 〃▽〃)」
「可愛い可愛い。プニプニだよ？食べ過ぎじゃない？エェ？お母さんも？じゃぁ親子だね。ダイエットだぁぁ‼」

　一方的に話すものの、ちゃんと聞いているみたいで、４人が元気だった頃から、一番おっとりが子竜だけれど、ビックリすると、

『ワァァ～‼』

　と逃げ出す。本当に可愛い息子。

　手を合わせ祈ったのは、

「来世は幸せになってね。お母さんの息子に生まれてほしいけど、それよりももっと幸せになってね。ありがとう。子竜……」

　子竜を失ったことは、心を失うこと。
　それが本当であったことを思い知ったのでした。



　それと、10月22日にネットフリマで、ミニチュアベア50個を購入した。
　実は、発送は２９日までである。
　それなのに、３０日になっても、連絡が来ない上に、発送したとメッセージがなく、キレた刹那はその当人にメッセージを送り、

『連絡ないですが大丈夫ですか？』

　と、昼を過ぎてから連絡があり、

『午前中送りました‼』

　にプッチン‼

　そして、昨日の夕方届いた。
　それで、本当に我慢ができず、

「何で、22日に購入したのが、今日（11月2日）に届くんですか‼遅くなるなら連絡くださいよ‼非常識にも程がある‼」

　と苦情を言うと、向こうも切れて、

「仕方がないでしょ‼祖母が倒れたのよ‼祖母の方が大切じゃない‼」

　と言うので、

「私は祖母のことも気にしつつ、責任や約束を放棄しません‼私は今年祖母を亡くしました。それに、遅れるなら遅れるとメッセージをいただくことも無理なんでしょうか？私も出品したことがありますが、でも、連絡はしましたし、納得いただいて、おいそぎの方だけは優先に発送しました。どこかおかしいですか？」
「……で、でも、こちらから送る期日には間に合ったでしょ‼」
「いいえ、29日の夜中が発送期限で、貴方は30日に投函されてますので、その時点でアウトです」

　はっきり伝えると。

「わ、私だって、頑張っているのに……」
「頑張っているのは分かりますが、最近はフリマを気軽に考えていらっしゃるようですが、商売です‼甘く見ないで下さい‼常識外れな行動を繰り返すと、恥ずかしいですよ‼事情も聞かないで自分の事情も伝えなかった私も悪かったのですが、その前に、遅れると言う重大な事実を先に報告戴けませんか？」
「……はい、すみませんでした」

　勝った‼

　……事はなく、むなしかった。
　連絡を怠ったのは、まぁいいやと思ったのは、自分も相手もそうである。
　どうしてこんなになってしまったのか……子竜ちゃんの死の前に、落ち込むしかなかった。

『会いたくて会いたくて
　この胸の囁きが
　あなたを探している
　あなたを呼んでいる

　いつまでもいつまでも
　そばにいると言ってた
　貴方は嘘つきだね
　心は置き去りに……』