もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

文字の大きさ
82 / 102

永久循環機関🟰ヴァーロ、ジョシュ。つまり人外

しおりを挟む
『アルスのバカァ……』

 ぷんぷん頬を膨らませつつ、そのまま……一応バッグは一旦部屋に戻り置いてきて、脱いだ服は洗濯カゴ、パジャマ代わりのジャージの上下を頭に乗せて風呂場にきたヴァーロは、着替えを脱衣カゴに入れて風呂場に入る。
 そして、浴槽にドボンと浸かった。
 水飛沫をあげすぎると次の人に迷惑だと先日遊びすぎて桜智に徹底的に制裁を受け、しっかりわかったので、外で遊ぶ時のみにしている。
 もふもふの毛の間に空気が溜まるようで、少しふよふよ浮きながら犬かきをして遊んでみる。
 そんなに大きくはない浴槽だが、ヴァーロが入れるのがありがたい。
 でも次に入る琴葉のためにも、上から水滴が落ちてびっくりさせるのもどうかと思われるので、必要以上暴れず、ただただイライラを発散させるようにバシャバシャし、そして人の姿に戻り、上を向いて浮かんでボーッとする。

 この世界にある家や建物とは違いすぎる、この成長する家……。
 周囲は石を積み上げた家か、もしくはこの地域の大半を占める金の森は、樹木の伐採を完全に禁じているのでここより少し離れた人工林の丸太と板を利用した建物が多いのに、この家は不思議な素材でできた家……。
 琴葉に聞いて教わった知識を深掘りすればするほどわからなくなるけれど、途中で内容よりもその声に酔っていく。
 一応、この天井のライトは琴葉がいうには屋根の上の無骨な黒い板が日光を浴びて、浴びた太陽の熱を変化させて作った動力でつけたり消えたりするようだ。
 他にも風見鶏のようなもので風を受け、その回転で動力を得てるとか。

【一種の魔法のようなものよ。アンタが言ってた術っていうのが体の内にある力を用いた……もしかしたら非効率、効率悪いものかもよ?】

「なんで?」

 自分よりも桜智の方がこういうことは得意かもというので代わってもらい、簡単に……それでもヴァーロには難しかったのだが教わる。

【アンタはドラゴンだから内蔵量が多いのよ、きっと。攻撃なんかは筋肉、骨、筋がバランス良くついている状態で瞬発力と一時的な体の強化で大丈夫だけど、ファンタジー小説では、魔法や術は数パターンで生み出すのよ。一つは……】

 桜智の説明は結構途中から参加したジョシュやバーバラにとっては興味深かったらしいが、ヴァーロにはそれ? というものが多かった。

 簡単に言うと、術は体の内部に力を溜め込む部分があり、その部分の力を使い様々な術を構築する。
 一種の魔石を内包しているようだ。
 それは一人一人大きさが違い、ジョシュのように有能な術師はかなり巨大な魔石が身体の中にあると思えばいいのだという。
 ジョシュのようなタイプだと、使っても使っても屋根の上の板から送られる動力のようにすぐ溜め込まれるため、ほぼ無限に使い続けられる。
 永遠機関のようなものだと言う。
 ジョシュの力は全身に満たされたその石の内部を循環しているらしく、常に滞らないので、その分身体にも負担が少なく老化も遅くなっているのではないかという。
 そして、琴葉や桜智が読むファンタジー小説の魔法は、一人一人身体には魔法の数値が決められていて、そして一つ一つの魔法……術でいう詠唱には消耗する数値が決まっていて、使うほどにそれが減少する。
 回復は一旦動きを止め睡眠状態になってしまうか、魔法の数値を回復する薬を飲むことでしか回復しない。
 常に数値を確認しなければならず非効率だという。
 でもこれはこの世界の一般的な術師もほぼ同様に思えるので、もしかしたらジョシュのような魔石を内包している人間の術師は少ないのかもと桜智は言っていた。

 そして、ボクやドラゴン族はジョシュタイプ。
 魔石を内包している状態で、強大な術を行使しているらしい。
 ドラゴン族は後一つ、世界から力を分けてもらっているのかもしれないという。
 桜智の小説では精霊魔法ともいうらしい。
 世界にいる精霊に自分の力の一部を差し出すことで、その対価として精霊の所属する属性の力を借り使役する。
 その少し変化したものは、琴葉たちの世界の伝承にある妖精精霊のお話だ。
 全くそう言った力のない人間が、お菓子やミルクを分けることで掃除をしてもらったり、作業を頼むというものだ。
 これは対価を渡すことで使役するものに似ている……。

「もしかしたら、ボクもドラゴンだから、うまくいけばそっちの方も知識を吸収して使えるようにできるかも……そうしたら人型でもドラゴンでも成長できるのかな」

 最近自覚はある。
 昔は、本当に赤ん坊サイズだったのだ。
 それが少しずつ成長していたはずだった。
 でも、この7歳児で成長が止まり、もふもふの方も乗獣の子供サイズでぴたりと止まった。
 必死に成長してほしいからと無茶もした。
 その無茶が現在のギルドの運営の一翼を担っているので後悔はないが……大きくなりたいものである。

「……いいなぁ、アルス。ボクもアルスぐらい大きかったらなぁ……」

 良く、義弟には、

「デカイ! 暑苦しい!」

というが、はっきり言えば本心は、

「長身が羨ましい、ボクの頭撫でるなよ! 弟のくせに! ボクの方が兄なのに! なんで、癇癪を起こすボクを見てニコニコするんだ! 子供扱いするな~!」

と言いたい。
 嫌いじゃないが、よく無意識に子供扱いするのが癪に触るのだ。
 でも、暑苦しいと言うと、ないはずの頭の上の耳がペタッとして、上目遣いでこちらを見ているようで鬱陶しいというより、外見と内面が全くそぐわない弟だと思う。
 アルスこそ、自分と外見を交換すべきである。

 トントントン……

 脱衣所の向こうからノックがする。

「ヴァーロくん……」
「あ、はーい!」

 慌てて足を下ろすと、少しだけ開き琴葉の声を届けてくれる。

「あんまり長く入ってると湯疲れするから気をつけてね? あ、タオルだけ持ってきたから」
「はーい、ありがとう! すぐにでるね~」

 声を返すとそっとドアが閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...