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In The Forest ~森の中
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血族の若者たちが用意してくれたテントは小さめだったが、二人だけなので特に問題もなくリュウセイとユキナはそのシートの上に座り込んで、所在なげにしていた。
ユキナが何やら不機嫌そうに眉毛をぴくぴくと動かしながら口を尖らせている。
「……退屈ね」
彼女がそう言うのを聞いてリュウセイは苦笑した。
「そう言われてもな……。 しりとりでもするかぁ?」
リュウセイが間の抜けた声で言うとユキナはおかしそうにキャッキャと笑った。
「子供かよ~! う~ん……」
そのまま彼女は腕を組んで何やら考え始めた。
そして急に立ち上がるとスカートの皺を気にしながら狭いテントの天井を気にして中腰でリュウセイの側までくると、ニッと笑ってから胡坐をかいている彼の足の上に座った。
「おいおい~。 それこそ子供かよ~!」
リュウセイはユキナの口調を真似て言いながらも彼女のために足を崩して座りやすいように足を広げた。
そしてユキナの膝の上にシュレが飛び乗ると前足を伸ばしてあくびをした。
「あ~、シュレちゃんあったか~い!」
ユキナはシュレを抱きしめて言う。
「そういえば冷えてきたな……」
「うん、山の上だからねぇ」
「そうだな……」
するとテントの入り口の外に人の気配がしたので二人はなんとなく黙って様子を窺った。
「ユキナお嬢様。 開けてもよろしいでしょうか?」
コハクの声である。
ユキナは澄ました声で「どうぞ」と返事をした。
「失礼いたします……」
コハクがテントを開けて入って来ると彼は一瞬ギョッとした顔をして口元と眉をひくひく、とさせた。
「苦しゅうないわよ?」
そこには成人男性……リュウセイをまるでソファ代わりにして優雅にくつろぐユキナの姿があった。
コハクは困ったような顔をしながら何やら小さなナイロンの黒井バッグを差し出す。
「お食事です。 こんな物しかありませんが……温めてありますので」
ユキナがバッグを開けて中を覗き込むと、中には銀色の素っ気ないパッケージに入った缶詰やらレトルトパックのような物が沢山入っていた。
「ナニコレ?」
彼女は不思議そうに一つをつまみ上げてみた。
「ああ、缶メシだな」
リュウセイはそれを見て感心したように言った。
「缶メシって?」
「自衛隊の携行糧食だよ。 地震とかの災害の時に配ってたりするだろう? 見た事ないか?」
ユキナは目を丸くして、頷いた。
「ああ! そういえばテレビとかで見た事あるかも!」
そしてコハクを見て澄ました顔で笑顔を見せた。
「ありがとう、コハクj。 下がっていいわ」
コハクは何やら複雑な表情を浮かべたが、頭を下げてテントの入り口を開けて出ていった。
「なになに? ……これは、お赤飯! 鯖缶に、肉じゃがだって!」
「色々あるらしいぜ。 自衛隊の糧食はウマイってんで世界的に有名だって聞いた事あるな」
「へぇ~!」
ユキナは感心しながらいくつかのレトルトバックと缶詰を取り出して適当に開けた。
「まぁ、ちょうど退屈だったし……お腹も空いたしご飯にしましょう! ……シュレちゃんにもご飯あげるね!」
彼女は言いながら、クルマから持ってきたキャットフードを猫用の容器にザラザラと入れた。
「いただきまぁ~す!」
シュレは嬉しそうに食べ始めた。
そしてリュウセイとユキナも、顔を見合わせてご飯のパックを手に食事を始めた。
ユキナが何やら不機嫌そうに眉毛をぴくぴくと動かしながら口を尖らせている。
「……退屈ね」
彼女がそう言うのを聞いてリュウセイは苦笑した。
「そう言われてもな……。 しりとりでもするかぁ?」
リュウセイが間の抜けた声で言うとユキナはおかしそうにキャッキャと笑った。
「子供かよ~! う~ん……」
そのまま彼女は腕を組んで何やら考え始めた。
そして急に立ち上がるとスカートの皺を気にしながら狭いテントの天井を気にして中腰でリュウセイの側までくると、ニッと笑ってから胡坐をかいている彼の足の上に座った。
「おいおい~。 それこそ子供かよ~!」
リュウセイはユキナの口調を真似て言いながらも彼女のために足を崩して座りやすいように足を広げた。
そしてユキナの膝の上にシュレが飛び乗ると前足を伸ばしてあくびをした。
「あ~、シュレちゃんあったか~い!」
ユキナはシュレを抱きしめて言う。
「そういえば冷えてきたな……」
「うん、山の上だからねぇ」
「そうだな……」
するとテントの入り口の外に人の気配がしたので二人はなんとなく黙って様子を窺った。
「ユキナお嬢様。 開けてもよろしいでしょうか?」
コハクの声である。
ユキナは澄ました声で「どうぞ」と返事をした。
「失礼いたします……」
コハクがテントを開けて入って来ると彼は一瞬ギョッとした顔をして口元と眉をひくひく、とさせた。
「苦しゅうないわよ?」
そこには成人男性……リュウセイをまるでソファ代わりにして優雅にくつろぐユキナの姿があった。
コハクは困ったような顔をしながら何やら小さなナイロンの黒井バッグを差し出す。
「お食事です。 こんな物しかありませんが……温めてありますので」
ユキナがバッグを開けて中を覗き込むと、中には銀色の素っ気ないパッケージに入った缶詰やらレトルトパックのような物が沢山入っていた。
「ナニコレ?」
彼女は不思議そうに一つをつまみ上げてみた。
「ああ、缶メシだな」
リュウセイはそれを見て感心したように言った。
「缶メシって?」
「自衛隊の携行糧食だよ。 地震とかの災害の時に配ってたりするだろう? 見た事ないか?」
ユキナは目を丸くして、頷いた。
「ああ! そういえばテレビとかで見た事あるかも!」
そしてコハクを見て澄ました顔で笑顔を見せた。
「ありがとう、コハクj。 下がっていいわ」
コハクは何やら複雑な表情を浮かべたが、頭を下げてテントの入り口を開けて出ていった。
「なになに? ……これは、お赤飯! 鯖缶に、肉じゃがだって!」
「色々あるらしいぜ。 自衛隊の糧食はウマイってんで世界的に有名だって聞いた事あるな」
「へぇ~!」
ユキナは感心しながらいくつかのレトルトバックと缶詰を取り出して適当に開けた。
「まぁ、ちょうど退屈だったし……お腹も空いたしご飯にしましょう! ……シュレちゃんにもご飯あげるね!」
彼女は言いながら、クルマから持ってきたキャットフードを猫用の容器にザラザラと入れた。
「いただきまぁ~す!」
シュレは嬉しそうに食べ始めた。
そしてリュウセイとユキナも、顔を見合わせてご飯のパックを手に食事を始めた。
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