先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない

こえだ

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クリスマスイブ④ (美咲ver)

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「おっかえりー!」

先輩が扉を開けた途端元気よく迎えたのは多分先輩のお母さんだ。
目元がとても似ているのですぐにわかった。

「あ、お母さん。いってた子。」

「は、はじめまして!皆川美咲と言います!突然すみません!」

勢いよく頭を下げた。

「そんなに固くならなくてもー!全然大丈夫だよー!葵の後輩でしょ?あ、寒かったよね?入って入ってー!」

すぐに家に招き入れてくれる。
リビングの方へ通された。
リビングへは初めて入ったのでとても緊張した。

「葵と美咲ちゃん!何かあったかいものでも飲む?」

「うんー、お願いしてい?」

「はいはいー。」

「座って?」
先輩が席へ案内してくれる。
 
「あ、ありがとうございます。」

「はは、ガチガチだねー。」

「そ、それは、そうなりますよ!」

「あはは、そっかそっかー。ねえ、美咲、お母さんに話していい?」
先輩が少しボリュームを下げて聞いてきた。
葵先輩のお母さんはまだ帰ってきていない。

「ど、どのことをですか?」

「姉妹ってこと。」

「え…、あの…大丈夫なんですか?」

「うん!多分!」

「なら、はい。大丈夫です。」

「ありがと。」

正直に言うととても怖かった。
家庭を壊した人の子供なんて普通は恨まれて当然だから。

先輩のお母さんが飲みものを出してくれる。

「ありがとうございます。」

「はーい。」

「お母さん。」

「うんー?」

「美咲、私の妹なんだ。」

先輩が何のためらいも無く話を出した。
言うとは聞いたもののこんなにあっさり言うとは思わなくてとても驚いた。

「え!やっぱり!?」

「わかってたの?」

「いやー!噂でね?向こうの娘さんが同じ学校入ったって聞いててさー!それで、同じバスケ部で苗字皆川って流石にちょっと思うでしょー!」

「そうなんだー。私全然知らなかったんだけど。」

「あー、全然言ってなかったしね。ごめんごめん。」
先輩のお母さんが呑気に笑う。それは、とても葵先輩の笑い方に似ていた。

「ホントに軽いなー。」
と言っている先輩もとても軽いと思う。

「それにさー。美咲ちゃんお母さん似だよね?」

「はい。どちらかと言うと…。」

「うん。よく似てるよ。」

「美咲のお母さんと知り合いなの?」

「うん、まあ、ちょっとね。」

びっくりするぐらいに普通に会話が進んで私は段々頭がパニックになっていく。

「あの…。すみません。」

何に対して謝っているのか自分でもわからなかった。
でも、こんなにも素敵な人達を悪く言う母が許せなくなって。とても悲しくなった。

「美咲ちゃん、ごめんね。大人の事情で色々振り回して。」

「いや、そんな…。」

「美咲ちゃんが謝ることなんて何にもないんだよ?」

「でも…。」

「葵と仲良くしてくれてありがとね?できればこれからも仲良くしてあげてくれる?」

「いいんですか?私なんか…」

「うん!仲良くしてあげて!」

「ありがとうございます…。」
さっきあれほど泣いたのにまた涙が溢れる。
先輩のお母さんが優しく頭を撫でてくれる。
本当に先輩のお母さんだなあと思った。

「葵、もう遅いから落ち着いたらお風呂入って寝なさいよー。私、明日朝から仕事だからもう寝るわね。」

「うん!わかった!」

「美咲ちゃんもゆっくりしていってね。おやすみ。」

「はい…。おやすみなさい。」

おそらく、私に気を利かせて先輩のお母さんがその場から立ち去った。

「先輩。ありがとうございます。」

「私、なーんにもしてないけどね。」

「そんなことありません。先輩にしてもらってばっかりです。」

「そんなことないよ。私もたくさんもらったよ。」

「そんなこと…」

「だーもう、それじゃあキリないから!」

「あはは。そうですよね。すみません。」

「よしよし。」

また頭を撫でてくれる。

「先輩のこれってお母さんの影響ですか?」

「これって?」

「頭撫でる癖ありますよね?」

「あー、そうだねー。昔なんかあったらしょっちゅう頭撫でてきてさー。昔、それが嬉しくって…。」

先輩の顔が急に赤くなった。
どうやら、撫でられて喜んでたことが恥ずかしいみたいだった。

「なし!今のなし!」

「ええ、なんでですかー!いいじゃないですか!よしよしされるの嬉しいですよね!」

そう言って先輩の頭をなでなでした。

「ちょっ!美咲!やめて!」

先輩の顔が真っ赤になった。
なんだか、もう。可愛すぎる。

さっきまでとのギャップがすごくてたまらなくなって撫で続けた。

「ちょ、やめろって言ってるでしょ!」

先輩が私の腕つかむ。

「あ…。すみません。先輩がかわいくって…。」

「もう…。」

それから先輩が私の顔をじっと見つめてくる。

「先輩?」

「良かった。元気になって。」

「はい…。全部先輩のおかげです。」

「よーし、じゃあ、お風呂入ろっか!」

「はい!」

「一緒に入る?」

「え、ええ!?は、恥ずかしいです…。」

「えー何それいまさらー。」 

先輩が後ろから抱きついてきた。

「えっと…。じゃあ、先輩がいいなら…。」

「あー、ごめん無理だった。」

「え?」

「美咲の裸を前に普通に出来ないから別にしよう。」

「あはは、なんですか、それ!」

「先入る?」

「いやいや、お先に入って下さい!」

「そ?じゃあ先に入るね。部屋で待ってて。」

先輩が部屋まで案内をして、出て行った。

(今日は色々あったな…。)

疲れていたからなのか、そのまま目を閉じたらすぐに眠ってしまった。
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