先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない

こえだ

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クリスマスイブ③ (美咲ver)

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「美咲…。」

しばらく見つめ合う。

「お母さん怒らない?」

「もう、怒られてもいいです。」

「ええー?ダメだよー。」
先輩が小さい子供のように動こうとしない私の方へ近づいて頭を撫でる。

「いいんです!」

「あはは、じゃあせめて連絡して?心配かけちゃうでしょ?」

「わかりました…。」
そうして私は母に遅くなると連絡をした。
それから邪魔をされたくなくて通知をオフにした。
 
それから私達はご飯を食べてたくさんお話をした。
かわいいお店に入ったりして普通のデートをした。
普通のデートだけど先輩となら全部が特別な気があっという間に時間が過ぎた。

気づいたらもうすぐ10時になる頃だった。

「帰ろっか。近くまで送るよ。」

「え、いや、いいです!1人で帰れます!」

「お願い、もうちょっと一緒にいたいから。」

「あ、はい…。私もです…。」

こういえば私が断れないことを先輩はわかっていたのだろうか。
本当は心配をして送ってくれたんだと思う。
それを感じさせないようにしてくれている。

先輩が駅を降りてまだ送ろうとしてくれている。

「流石にもう大丈夫ですー!」

「私と一緒にいたくないってこと?」

「それは…。いたいです。」

「ならいいでしょ!」

先輩は少し強引に私の手を引いて進んだ。

「先輩。そっち逆です。」

「え…。ごめん、そういや場所知らないね…。」

「あはは!何やってんですかー!こっちです!」

そう言って先輩と歩いていたら車が一台通り過ぎて目の前に止まった。

見覚えのある車。見覚えのあるナンバー。
母の車だ。

車の主が降りてきた。
やっぱり母だった。

「美咲あなた何をしていたの。」

ブチ切れた母がこちらに近づいてきた。

「お母さん…。」

母が私と先輩の繋いでいた手を強引に引き離すように私の手を掴む。

「あなたね!人の家の子をこんな時間まで連れ回して何がしたいの!?あなたのせいでしょ美咲が成績落としたのも!そもそもあなたはこの子とどういう関係がわかってるの!?」

「はい。すみませんでした。」

先輩がお母さんに頭を下げた。
じっと頭を下げている。

「ちょっ、先輩っ!」

そんなこともかまわず母が先輩を怒鳴りつける。

「本当に思ってるの!?美咲がこれまでこんなことしたこと1度もなかったのよ!?それがあなたと関わってるせいでどんどんダメになっていって…。だから、バスケなんてやらせたくなかったのよ。あなたのいる所でなんか!もう娘に近づかないで!」

冷静ではいられなかった。こんなことを冷静に見ていられるわけは無い。
どんどんと顔が熱くなる。
そして、目から熱いものが込み上げる。

「やめて…。やめてよお母さん!いい加減にしてよ!先輩は何も悪くない!悪いのはお母さんでしょ…。先輩の家めちゃくちゃにしたのお母さんじゃん!なんでそんな酷いことが言えるの!?お母さんなんて大っ嫌い。」

すぐに先輩の手を引いて逃げるように家とは逆方向へ走った。

「美咲。」

私は返事もしないで走った。
返事なんて出来なかった。
なんて言ったらいいかわからなかった。
加えて涙でそれどころではなかった。

「美咲!」
先輩が強く手を引いた。
そこでやっと止まる。

「せんっ…ぱい…ひっく。」

先輩が優しく抱きしめてくれる。

「せんぱい…。すみ…ひっく…ませっ…ん…うう。」
私は号泣してしまいまともで話せなかった。

「大丈夫だから。落ち着いて。」

「ひっく…はい…んっ…ひっく…」

先輩が優しく背中をさすってくれる。
ずっとさすってくれていた。


「先輩ホントにすみませんでした。」

「んーん。気にしないで。」

「でも…。」

「大丈夫だって!それより今日どーする?家帰れる?」

「もう!あんな家2度と帰りたくありません!」

「あっはは!そっか、じゃあウチ来る?」

「ええ!?いや、迷惑じゃ…。」

「ウチは全然大丈夫だから。」

先輩の声がいつもに増して優しい。

「お母さんに連絡は入れといて。心配するだろうから。」

「はい…。」

お母さんに連絡をいれた。
連絡なんてしたくなかったが先輩が言うので仕方なく入れた。
こう言う時の先輩は本当に大人っぽくてとても安心する。

先輩の家に到着した。

「お母さんにはもう泊まること言ってあるから緊張しないで大丈夫だよ。」

「は、はい…。」
とは言われたもののそんなことは無理だった。
ガチガチに緊張している。

ガチャ

先輩が玄関の扉を開けた。

「ただいまー。」

私はガチガチに緊張しながらその扉を通った。

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