先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない

こえだ

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クリスマスイブ② (美咲ver)

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24日。練習試合が終わり部室で先輩のことを待っていた。

先輩は挨拶だとかで忙しそうでいつもより遅かった。


「お待たせ、遅くなってごめんね!」

先輩が急いだ様子で部室に入ってきた。

「全くです!お疲れ様です!」

「ちょっと待ってね。すぐに準備するから。」

そうして先輩がすぐに着替えを済ませて、帰る準備をした。

「よし!行こっか!時間無くなっちゃう!」

先輩に手を引かれて目的の場所まで目指す。
先輩の手はとても温かかった。

到着した。
ここは毎年クリスマスになると豪華なイルミネーションで飾られ、時間になるとクリスマスツリーが点灯する。

こんな所へ先輩と来れるなんて夢にも思わなかった。

もうすぐクリスマスツリーが点灯するので既に人が集まっていた。
カップル、家族、友達、たくさんの人で埋め尽くされる。

先輩が離していた手をもう1度繋いできた。
ここは学校から近いということもあって誰かにバレるかもしれないと思って繋ぐのを控えていた。

葵先輩と付き合っているというのがバレることよりも姉妹で付き合っているという事実がバレるのが怖かった。
私1人で抱えてる分にはそんな心配はしなかったが、いざ他の人も知るとなると不安になる。

「繋ぐの嫌?」
私の小さな不安を見透かしたかのように先輩が聞いてきた。

「嫌じゃないです。むしろ繋ぎたいですけど…。その、知り合いがいたらーとか…。」

「別にいいんじゃない?見られても。」

「え?」

「美咲は考えすぎだよ。私が言うのも何だけど、疲れるじゃん。考えたってどうにもならないことは考えても無駄だよ。色々複雑なこともあるけどさ、私は美咲と一緒にいたい。美咲が一緒にいてくれるならもう何だって大丈夫な気がするんだ。」

「先輩…。」
私は先輩の手を強く握り返した。
言いたいことがたくさんあるのに言葉ならない。

「それにさ、なんで私といるのに他のことに気が散ってるのさ!美咲はさ、私だけ見てくれたらいいよ。他のことは全部置いといて私のことだけ見て。」

先輩は真っ直ぐに私の目を見て言った。
なんて素敵な人なんだろう。
先輩にこんな風に言われて先輩以外のことを
考えるなんて不可能だ。

「はい、すみませんでした。もう、先輩のこと以外見れないです。」

「うん。よろしい。」
そう言って私の頭を撫でてくれる。

「あ、クリスマスツリーはちゃんと見なきゃダメだよ!」

するとその瞬間ツリーが点灯した。
とてもキレイだった。
今まで見た何よりもキレイな気がした。

ツリーに視線が集中している中、首に何かが掛かった。
見るとネックレスが首に掛けられている。

「え…、あの、先輩。」

「ん?あー、メリークリスマス?」

先輩がいつもの優しい笑顔をこちらに向けてくれる。
もうダメだ。限界だ。さっきから心臓が限界を迎えている。

「ありがとうございます…。」
感動して今にも枯れそうな声を必死で絞り出した。

「あ、そろそろ帰らないと時間やばいよね!」

先輩がまた手を引いて人混みをかき分けて連れて行ってくれる。
人が少なくなってきた。

私も少し落ち着いて話せるようになってきた。

「先輩ってホントに今まで付き合ったことないんですか?」

「え?なに、私を疑うっていうの?」

「そうじゃなくて、なんか、もう完璧すぎて…。好きです。」

「あはは。美咲はいつもいきなりだね。」

「それは、先輩が急に素敵なことをしてくるから…。」

「てか、先輩!」

「ん?」

「プレゼント交換しないって先輩が言いませんでしたっけ。」
話が決まった頃に先輩がそう言っていた。

私としたら先輩ほどの人に何をあげればいいかわからないのと、お金をいっぱい使う時はなんでか報告しないといけないので助かった部分もある。
きっと私のそんな部分も考えてくれている気がした。

でも、先輩がくれるなら別の話になる。ちゃんとお返しがしたい。

「うん、交換はしないよ?」

「ええ?どういうことですか?」

「いや、だから代わりに頼みたいことあって。」

「は、はい!なんでもどうぞ!なんですか?」

「葵って呼んで。」

「え!ええ!?」

「だってー、付き合ってんだから呼んで欲しいじゃんー!」

「でも…。恐れ多いと言いますか…。」

「なにそれ、怒るよ?」

「す、すみません!」

「言ってくれたら許してあげる。」

「あおい…。」
私は今にも消えそうな声で答えた。
すると先輩が私を抱きしめる。
人通りが少ないとはいえ人は通る。
でも、そんなこと気にならないくらいに先輩のことで頭がいっぱいだった。

「もう1回。」

「あおい。」
先輩の顔が耳まで赤くなっている。

「ふぅ。それしばらく禁止ね。」
しばらくして先輩が顔をあげる。

「ま、またですか!?」

「え?なに?呼びたいの?」

「そうじゃないですけど…。もうなんて呼べばいいかわからなくなりました…。」
 
「あはは、お好きにどーぞ!」

「あ!てか!ホントに早く帰らないと!!」
先輩が思い出したように足を早める。

それをやめさせるかのように私は手を引っ張ってゆっくり歩く。

「美咲?」

「もうちょっと一緒にいたいです。」

私はもうこの時先輩以外のことを考えられないでいた。
先輩以外のことがどうでも良くなっていた。

全部どうでもいい。
先輩さえいてくれるなら全部どうでも…。
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