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バレた秘密① (美咲ver)

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先輩と付き合いだしてしばらくが経った。
とても順調だと思う。

付き合い出してからの先輩が甘々で頭がおかしくなりそうなる。

「みさきー、電話鳴ってるわよー。」
母がソファに置いていた携帯を渡してきた。
先輩からだった。
ヒヤリとしたけど母の顔はいつもと変わらない。

「ありがとう。」
携帯を受け取って部屋へ戻った。

「はい、もしもし。」

「みさきー、ごめんね大丈夫だった?」

「はい、全然大丈夫です!」

「良かったあ。」

「今日いつもよりちょっと早くないですか?」

「んー、なんかさー、今日あんまり話せなかったから早く声聞きたくなっちゃって。」

「………。」
先輩はこうゆう事を恥ずかしげも無くすぐに言ってしまう。
私には刺激が強すぎる。

「みさき?聞こえてる?」

「聞こえてます…。」

「あはは、なら良かったー!」

「先輩ー、勉強ってもうしてますか?」

「あー、ちょくちょく?」

「ですよねー。」

先輩は本当にすごいと思う。テストが終わってまた、1ヶ月後ぐらいには勉強を始めているのだから。それを毎回していたのだから。
私はすでに限界を迎えようとしていた。
先輩というモチベーションが無ければとっくに終わっていただろう。

「また、一緒にする?」

「したいです。したいですけど今先輩と一緒の部屋で勉強出来る自信ないです…。」

「あー、それは私の方が無いわ。ごめん、100%手出す。」

「先輩…。」

「ごめんね。」
先輩は少し笑いながら謝っていた。きっといつもみたいに呑気な笑い方をしているのだと思う。

「じゃーさー、今度の日曜日の練習終わりどっか遊びに行こうよ!だから、それまで勉強頑張るっていうのはどうかな?」

「ええ!いいんですか!?」

「私はむしろめちゃめちゃ行きたい!」

「でも先輩、他の人に見られたりしたら迷惑じゃ無いですか?」

「遊んでるくらいどーてことないでしょ。」

「あ、確かにそうですね!」

「そーだよ、ホテルに入って行くとこ見られるわけじゃ無いんだし。」

「入るんですか?」

「入らないよ!!」

「そうなんですか?」

「え、入る?」

「入らないですよ!」

「あはは!だよねー!じゃあ、日曜日だね!勉強頑張れそう?」

先輩が優しい声で聞いてきた。
きっと先輩は私が勉強に困っていることに気付いて提案してくれたんだ。
こんなことをしてくれるから私は先輩のことがどんどん好きになっていく。

「はい!死ぬ気で頑張れます!!日曜日すっごく楽しみです!」

ガタッ

扉の方で物音がした気がした。
人の気配がした気がしたけど扉を開けると誰もいなかった。

「美咲?どうかした?」

「いえ、なんでも無いです!」

「よし、じゃー、明日から頑張って出来るだけ何とかして極力電話を控えるように努力するね。」

「その言い方とても不安なんですけど…。」

「えー?まあ、大丈夫だよー。」
本当に信用できない。先輩から電話があったらその余韻でしばらく勉強なんて手につかなくなってしまう。


「先輩。大好きです。」
本当に毎日言っても言いたり無いくらいに好きだ。

「ガタッ…ゴト…」
先輩が多分携帯を落とした音を立てた。

「もー、急過ぎだってー。準備してない。」

「準備がいるんですか?」

「い、いるよ!心臓が止まりそうになるじゃん!」

「先輩が?」

「うん。」

「そうなんですね、私はドキドキし過ぎて何回も先輩に殺されかけてます。」

「………。」

「先輩?」

「聞こえてる…。」

「あはは、なら良かったです!」

「美咲?」

「はい。」

「大好きだよ。」

「私もです。」

こんな感じで毎日電話をしている。
学校ではバレないように話したいのをすごく我慢している分電話がいつも長くなってしまう。
私はこの時間がとても好きだ。


「じゃあ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


待ちに待った日曜日になった。
でも、その日の練習が長くなってしまいもう日が傾きかけている。

「だいぶ遅くなっちゃたねー。」

「そうですねー。」

「ごめんね?」
先輩が悪いわけでは無い。
気まぐれな顧問が悪いのだ。
私はこの日ほど顧問を恨んだ日はなかった。

「いえ!先輩が悪いわけじゃないじゃないですか!それよりもお時間は大丈夫なんですか?」

「うん!私は全然!美咲の方が心配だよ。」

「うちも遅くなるって言っているので大丈夫だと思います!」

すると母から夜ご飯どうするのかと連絡が入った。

「先輩。夜ご飯てどうしますか?」

「どーする?美咲がいいなら食べて帰ろうか。」

「はい!それじゃあ、そう連絡しますね!」
そう言いながらLINEを開いた。

「うん!お母さん?」

「はい。うち結構厳しくてすぐ連絡来るんですよね。」

「そーなんだー。うちは結構自由だなー。」

するとその瞬間にまたLINEが届いた。
来週はお父さんの誕生だから帰りにケーキ予約してくれる?って内容と写真が送られた。
掃除してたらこんなのが出てきたと。

母はなぜかこのタイミングでお父さんと私との3人の写真を送ってきた。

それを見て私は慌てて携帯の画面を伏せた。

だけど、遅かった。
先輩の顔なんて怖すぎて見れなかった。
でも、空気感で伝わる。
冷たい空気が漂う。

「どーゆうこと?」
先輩がしばらくして今にも消えそうな声で話し出した。私は何も言えないでいた。

「ずっとこれを知ってたってこと?」

「…………。」

「美咲。答えて。」

「すみ…ません…。」

「うそでしょ…。」
先輩が頭を抱え込んだ。

「先輩…本当にすみません…。」

「いつから気付いてた?」

「最初から…。」   

「………。」

先輩が言葉を失ったかのようにため息混じりの息を吐き出す。
先輩の顔を見るととても苦しそうな顔をしていた。
私がこんな顔をさせてしまったんだ。


「先輩。本当にすみません。でも、気持ちは本当で本気で先輩のこと…。」

「ごめん。」

私の言葉を遮るように先輩が言葉を発した。

「ちょっと頭整理させて…。」

「あの、先輩待って下さい。」
そう言って先輩の腕を掴もうとしたら腕を振り払われる。

「今日はもう帰ろう。」

「でも…。」

「帰ろう。」

「はい…。すみません。」

その日の帰りは一言も話さなかった。
先輩は1つも目を合わせてくれなかった。
さよならの言葉も言える雰囲気ではなかった。
私達はそのまま何も言わないでお別れをした。
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