先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない

こえだ

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2人の関係⑤ 葵と香 (香ver)

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葵と終わって葵のことを嫌いになっただとかそんなことは1つもなかった。
むしろ膨らみすぎた好きという気持ちを消す方法がわからないでいる。

私はどうしたらいいのだろうか。
葵とどう接していいのかわからないでいる。

わからないでいるから葵とは話せないでいる。

このまま葵と話せないでいるのは嫌だ。
でも、話したらまたどんどん葵のことを好きになってしまいそうで怖い。

最近ずっとこんな感じだ。
京子先輩は本当にすごいと思う。

でも、会いたい…。

(私は本当にダメだなぁ…。)

「かおりー。」
ぐるぐると考えていると声が聞こえた。
考え事をしていたのですごく遠くから声が聞こえた気がしたがすぐそこにいた。

「あ…おい…。あ、あおい!?どうしたの!?」
すごくびっくりした。

「ごめんねー、生物の教科書忘れたちゃってー。」

「あ、うん!持ってるよ!ちょっと待ってね!はい!」

「ありがと!」

そういえばこんなことが前にもあった。
前にも1度、葵が私の所へ来て教科書を借りに来た。
葵には友達がたくさんいて、おまけにクラスは隣の隣だから少し離れているのにわざわざ私の所へ来て借りに来てくれたことがすごく嬉しかった。

今もとても嬉しい。
もっと話がしたい。

「わ!あおいー!どーしたの!!」
しかし、他のクラスメイトの子が葵に話しかけた。葵は友達が多いからすぐに人が集まる。
そのまま時間が過ぎて休み時間が終わっていった。

「ごめんね、香。次返しに来るね!」

そう言って葵が出て行った。

ダメだ。全然上手く話せない…。

その次の授業中ずっと考えていた。
どうしたらいいのか、ずっと考えていた。
でも、結局わからなかった。

わからなかったから葵はどうして欲しいのか、自分はどうしたいのか考えた。
そして、自分のやりたいようにしようと思ったら。
授業が終わってすぐに葵の教室へ足を運んだ。

すると、葵がちょうど教室から出て来て鉢合わせになった。

「あ、ごめんね、香。わざわざ来てもらって…。」

葵はずっと普通に話せているように思ったけど全然目が合わない。
いつもすごく目を見て話してくれるのに。
葵だってどうしたらいいかわからないんだ。わからないのに頑張ってくれているんだ。

「葵。」

名前を呼んだ。そこでやっと目があった。

久しぶりに目を見た気がする。
なんだか少し笑えて来た。

「ふふっ。なんだか久しぶりだね。」

「うん…。」
また、葵が目を逸らす。

「葵ってば全然目が合わせてくれない。」

「だってえー…。」
そうやって恐る恐る私を見る。
葵が私に対してこんな風になるなんて思いもしなかった。
そこまでして私と話そうとしてくれることがとても嬉しかった。

「頑張って話しかけてくれてありがとう!」
そんな葵がとても可愛く見えて少しいじわるをした。

「そーゆうこと言わないで…。なんか恥ずかしい。」

「私もね話したかったんだけど、勇気出なくて…。だから、ありがとう。」

「このままだったらもう話してくれないかと思って…。」

「あはは!そんなことないよー!葵が話したいと思ってくれるならいつだって話すよ。私だって話したい。ちゃんと友達になろ?」

そう言うと、葵が抱きついて来た。
人通りの多い廊下で目立つ葵がそんなことをするからどうしても視線が集まる。

「葵?」

「ありがとう、香。」
葵の声は少し震えていた。

「こちらこそ。ありがとう、葵。」

葵はその後すぐに離れた。

「ごめん…。」
視線が集まっていたことに気付いたようだった。

「私は全然構わないけど、気を付けないと彼女さんに怒られるよ?葵ってば基本的にタラシなんだから。」

「ええ!?そうかな?」

「自覚ないの?距離近いし、異常に優しいからすぐ期待されちゃうよ!」

「それは…。そうしたいと思った子だけだし…。」

「はい、そう言う所ね。」

「え、でもホントのことだし…。だから、香にはすごく優しかったと思うけど他の人にはそこまで優しくしてないし…それに…」

「まってまって!!ホントにやめて!いい加減にして!友達になる気あるの!?」

色んな重荷から解放された葵は色々正直すぎて本当にやめて欲しい。
というより少しポンコツすぎる。

「あ、あるよ!」

「はぁ…。だったらいいけど。」

「ごめんね。」

「これから気をつけてね!」

「はい…。」

今はまだ葵への気持ちは消せない。
葵だって多分気づいている。
それでも少しずつ友達として葵と話せるようになりたい。

少しずつでいい。
無理に消さなくたって葵はきっと許してくれる。
ごめんね、葵。もう少しだけ好きでいさせてください。
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