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別れ② (香ver)
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ある放課後に葵に呼ばれた。
部活が早く終わるから教室で待って欲しいと。
いつもと違う曜日に呼ばれたのは久しぶりだった。
でも、なんとなく嫌な予感がした。
最近薄々感じていた。
葵がちょっとずつ良い方向に変わっていっていることを。
その変化が怖かった。
ガラッ
「ごめんね!」
「ううん!全然!」
葵はいつになく真剣な顔をしている。
(やっぱりそうか…。)
その顔を見て察した。
大丈夫。準備は出来ている。だから、きっと笑顔で終われる。
「今日は真面目な話があって。」
「うん!」
「……。」
葵はなかなか口に出せないでいた。
私はその時が来るまでじっと待つ。
「あのね…。本当に勝手な話なんだけどもう香とのあの関係を終わりにしたい。」
「うん…。」
「大切な人がいる。もちろん香のこともすごく大事に思ってる。だけど、ちゃんとして向き合いたい子がいる。」
「うん。わかったよ!」
そう言って笑顔を作る。
よかったちゃんと笑えてる。
「香…。」
でも多分葵には私の作り笑顔が全部バレてる。葵は悲しそうに私の名前を呼んだ。
「葵、1つだけ聞いていいかな。」
「うん。」
「私の何がダメだったんだろう。」
少しずつ声が震える。
「香にダメなとこなんて1つもないよ。」
「そっか…………。」
堪えてた涙が少しずつ溢れ出す。
「だったら私でいい…じゃん。」
どんどん涙が流れていく。
私は大量の涙を流しながら葵の胸に体を預ける。
「ごめんね。私じゃ香を幸せにしてあげられない。」
「そんなこと…ない…よ。葵といる時間…すごく幸せ……だったよ…。」
「ごめん…。」
我ながら情けない。
葵が望むならすぐにでも終わりにする。葵が幸せならなんでもいい。
そう思っていたのに。
本当は自分でもわかっているのに涙が止まらない。
「葵…。好き…大好きだよ…。」
「うん。ありがとう。」
葵がずっと抱きしめてくれる。
本当は自分でもわかっている。
なんでダメだったか。
葵は何回も私にサインを出していた。
助けて欲しいって。
でも、葵が変わってしまうのが怖くて何も出来なかった。
変わったら葵が私のそばからいなくなる気がして怖かった。
ただただ受け入れて支えている気になっていただけ。
だから、葵を責める資格なんてどこにもない。
ちゃんとお別れしなきゃ。
なのにそれらしい言葉が全然出てこない。
「葵…。やだよ…。終わっちゃうなんてやだよ。」
「ごめんね。」
葵はごめんしか言えないのにどうしてお別れの言葉が出ないのだろう。
頭ではわかっている。
大好きだった。優しい彼女が。ありえないくらい優しくて温かくて、なのに少し弱い部分があって私に頼る葵が大好きだった。
多分この先これ以上好きな人は現れないだろうと思うぐらいに大好きだった。
葵にはたくさんの優しさをもう充分すぎるぐらいにもらっている。
だから、ちゃんと終わりにしないといけない。
「葵…。今までありがとう。」
「こっちのセリフだよ。」
葵の声は少し震えていたけど泣いていなかった。
「葵、いっぱい優しくしてくれてありがとう。葵にはもうたくさんもらったよ。だからもう大丈夫だよ。私も葵も、もう大丈夫。」
「うん。ありがとう。」
こうして私たちの関係に幕が閉じた。
ありがとう葵。
大好きだったよ。
部活が早く終わるから教室で待って欲しいと。
いつもと違う曜日に呼ばれたのは久しぶりだった。
でも、なんとなく嫌な予感がした。
最近薄々感じていた。
葵がちょっとずつ良い方向に変わっていっていることを。
その変化が怖かった。
ガラッ
「ごめんね!」
「ううん!全然!」
葵はいつになく真剣な顔をしている。
(やっぱりそうか…。)
その顔を見て察した。
大丈夫。準備は出来ている。だから、きっと笑顔で終われる。
「今日は真面目な話があって。」
「うん!」
「……。」
葵はなかなか口に出せないでいた。
私はその時が来るまでじっと待つ。
「あのね…。本当に勝手な話なんだけどもう香とのあの関係を終わりにしたい。」
「うん…。」
「大切な人がいる。もちろん香のこともすごく大事に思ってる。だけど、ちゃんとして向き合いたい子がいる。」
「うん。わかったよ!」
そう言って笑顔を作る。
よかったちゃんと笑えてる。
「香…。」
でも多分葵には私の作り笑顔が全部バレてる。葵は悲しそうに私の名前を呼んだ。
「葵、1つだけ聞いていいかな。」
「うん。」
「私の何がダメだったんだろう。」
少しずつ声が震える。
「香にダメなとこなんて1つもないよ。」
「そっか…………。」
堪えてた涙が少しずつ溢れ出す。
「だったら私でいい…じゃん。」
どんどん涙が流れていく。
私は大量の涙を流しながら葵の胸に体を預ける。
「ごめんね。私じゃ香を幸せにしてあげられない。」
「そんなこと…ない…よ。葵といる時間…すごく幸せ……だったよ…。」
「ごめん…。」
我ながら情けない。
葵が望むならすぐにでも終わりにする。葵が幸せならなんでもいい。
そう思っていたのに。
本当は自分でもわかっているのに涙が止まらない。
「葵…。好き…大好きだよ…。」
「うん。ありがとう。」
葵がずっと抱きしめてくれる。
本当は自分でもわかっている。
なんでダメだったか。
葵は何回も私にサインを出していた。
助けて欲しいって。
でも、葵が変わってしまうのが怖くて何も出来なかった。
変わったら葵が私のそばからいなくなる気がして怖かった。
ただただ受け入れて支えている気になっていただけ。
だから、葵を責める資格なんてどこにもない。
ちゃんとお別れしなきゃ。
なのにそれらしい言葉が全然出てこない。
「葵…。やだよ…。終わっちゃうなんてやだよ。」
「ごめんね。」
葵はごめんしか言えないのにどうしてお別れの言葉が出ないのだろう。
頭ではわかっている。
大好きだった。優しい彼女が。ありえないくらい優しくて温かくて、なのに少し弱い部分があって私に頼る葵が大好きだった。
多分この先これ以上好きな人は現れないだろうと思うぐらいに大好きだった。
葵にはたくさんの優しさをもう充分すぎるぐらいにもらっている。
だから、ちゃんと終わりにしないといけない。
「葵…。今までありがとう。」
「こっちのセリフだよ。」
葵の声は少し震えていたけど泣いていなかった。
「葵、いっぱい優しくしてくれてありがとう。葵にはもうたくさんもらったよ。だからもう大丈夫だよ。私も葵も、もう大丈夫。」
「うん。ありがとう。」
こうして私たちの関係に幕が閉じた。
ありがとう葵。
大好きだったよ。
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