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清水香澄②

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あの日、葵先輩との関係が終わった。

悲しくなかったと言ったら嘘になる。
でも、何が1番悲しかったかと言われると葵先輩を私が苦しめていたことが1番悲しい。
だから、これで良かったんだと思う。

それから、髪を切った。
元々長いわけではなかったボブ系のショートカットからさらに切った。いわゆるベリーショートである。

失恋だとか思ってたわけではない。元々恋だったのか憧れだったのかは曖昧だから。
でも、何か気持ちの切り替えをしたかった。
葵先輩を追いかけるのではなく、追い越すためのリセットを。
それが葵先輩のお願いだったから。

髪を切った次の日部活に行ったらみんな驚いていた。

「香澄!やっばいな!めちゃくちゃ似合うじゃん!!」
えっちゃんが興奮している。
えっちゃんはすぐ興奮する。

「うん、やばい。香澄…。新学期始まったら覚悟しときなよ。」
とまどかが意味深なことを言う。

「何を覚悟するのよ…。」

「わかんないか。まあ、始まったらわかるよ。香澄はもっと自覚した方がいいよ。ほんとに。」

何のことだか本当にわからない。

少し早く来ていた美咲を見つけた。
私は美咲に駆け寄った。

「美咲!おはよ!」

「あ、香澄ちゃん!おはよっ!?!?え!香澄ちゃん!髪の毛!」

「あー、そう結構バッサリいったよねー。ちょっと切りすぎたかなー。」

「いやいや!すごく似合ってる!すごく良いよ!」

「美咲に言われるとなんか恥ずかしいな。」

「え、ごめんね!でも本当に似合ってる!」

「あはは。ありがとう。あ、ちなみに失恋でとかじゃないからね!全然心配しないでね!」

「あ、え、そうだよね!」

(多分これは完全にそうだと思ってた顔だな。)

「てかさ、美咲ありがとね。」

「なにが?」

「ん?色々あるけど…。とりあえず先輩のこと殴ったこととか?」

「わ!それは!殴ったんじゃなくて、しばいたの!」

「あっはは!一緒だよ!結構腫れてたね先輩!」

「そうなんだよ…。自分でもびっくりしたよー。」

本当に私は良い友達に恵まれたと思う。

「美咲!応援してるからね!」

「え、いや、私も終わってる様なもんだし…。」

「なんで?振られたの?」

「や!振られてはないし告ってもないけど…。」

「なら、頑張ってみようよ!ね?」

「いいのかな…。頑張っても。」

「良くないわけがない!!」

「ありがとう。香澄ちゃん。」

私は美咲がいい。
葵先輩がもし誰かと付き合うのなら美咲がいいと思った。


「おーい、2人ともー!そろそろ準備しないとー!」

「あ、ごめんね、今行く!行こ!美咲!」

「うん!」


今日から私はなりたい自分になっていく。
もう、葵先輩の後をついて行く私じゃない。
そう思うと少し怖かった。
私が今までどれだけ葵先輩を頼っていたかがわかった。

葵先輩。本当に今までありがとうございました。


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