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葵の本音② (葵ver)
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美咲と別れを済ました後、香澄と連絡を取って、香澄の最寄りの駅まで行った。
駅前だと人通りが多かったので少し歩いた小さな公園で話をした。
「ごめんね、呼び出して。」
「いや、全く問題ないです!わざわざ来てもらってありがとうございます!」
「うん…。」
「あのね…。話したいことっていうのは…。」
「はい!」
真っ直ぐな瞳で私をにっこりと見つめる。
「その…。もうやめた方がいいと思って…。」
「わかりました!葵先輩がそう思うならやめましょう!」
香澄は即答だった。
「え…。それだけ?」
「それだけとは?」
「もっと私に文句とか言いたいこととか無いの?私のしたこと最低だよ?」
「なんでですか?私、葵先輩に文句を言うようなことされてませんよ。」
多分香澄は本当にそう思っているんだろう。
私のしてきた事の重さを痛感した。
「違うの…。私最低なんだ。だから謝らないと…。」
なかなか言葉にならない。自分からやめようと切り出したのは初めてだった。
「はい…。なんでも言って下さい。」
その私の気持ちを察したのか、香澄がいつもの汚れのない笑顔で私に微笑んだ。
「私…。香澄のこと傷つけようと思って近づいた。それで私のこと嫌いになればいいって…。私は香澄が憎いと思ってた。だから、落としてやろうって…。」
「はい…。」
「でも、本当は私が香澄みたいになりたかったの。本当の自分をみんなから受け入れて貰えてて…。真っ直ぐにバスケを頑張ってる香澄が羨ましかった。」
「そうなんですか…。私なんか大したこと無いですよ…。普通に嘘だってつきますし、程よく練習サボったりもします。私だって頑張ってるつもりだけど、私の何倍も先輩の方が努力しててかっこいいと思いました。」
「違うよ、私は自分のために頑張ってるだけ。そのために色んな人を傷つける。」
「葵先輩、私だって自分勝手なんです。先輩に触れてもらえるのが嬉しくて先輩が苦しんでたことを見ようとしてなかった。全部、葵先輩に押し付けてた。すみませんでした。」
「そんなことないよ…。香澄が謝ることは1つもない。」
「でも、私のせいで先輩は苦しんでたんでしょう。なら、せめて謝らせて下さい。」
「香澄、ありがとう。ずっとずっとそのままでいてくれて…。それから1つだけお願いしていい?」
「はい。」
「香澄はすごいんだよ。だから、もう私なんか目指しちゃダメ。だから、私を追い越して。ちゃんとなりたい自分になって。」
「あはは。それはかなりの難しいこと言ってますよ。」
「もちろん簡単には抜かれてあげないよ。」
「自信はないけど頑張りますね。」
「ありがとう。」
「よし!じゃー、明日からは全力で行くので覚悟しておいて下さいね!」
そう言ってさっきまで重かった空気を香澄が一瞬で吹き飛ばした。
「え…あ、はい。」
突然のことで思わず敬語で答えてしまった。
「大丈夫ですか?私に追い越されて病まないでくださいね?」
「や、病まないよ!!説得力全然無いけど……。多分大丈夫。」
「あっはは!ホントに全然説得力ないですね!」
(ホントにすごいな…。)
さっきまでの暗い雰囲気がもう少しもない。
「あの、香澄。」
「はい?」
「1発ぐらい殴らなくても大丈夫?」
「んーーー。じゃあ、1発だけいいですか?」
「あ、え、どうぞ!!」
殴られる覚悟でギュッと目を閉じる。
すると、香澄がそっと私のほっぺたに手を当てた。
「1発いっとこうと思ったんですけど、もう誰か代わりにしてくれたみたいですね。」
「あ、これは…。美咲が…。」
「はは。やっぱりそうか。すごいな美咲は!」
「先輩。今までありがとうございました。」
少し悲しそうで、でも優しい顔をしていた。
「こちらこそありがとう。」
こうして私と香澄の関係は終わった。
心のドロドロが少しずつ消えていく感覚がした。
久しぶりにちゃんと空気が吸えた気がする。
ありがとう、香澄。
駅前だと人通りが多かったので少し歩いた小さな公園で話をした。
「ごめんね、呼び出して。」
「いや、全く問題ないです!わざわざ来てもらってありがとうございます!」
「うん…。」
「あのね…。話したいことっていうのは…。」
「はい!」
真っ直ぐな瞳で私をにっこりと見つめる。
「その…。もうやめた方がいいと思って…。」
「わかりました!葵先輩がそう思うならやめましょう!」
香澄は即答だった。
「え…。それだけ?」
「それだけとは?」
「もっと私に文句とか言いたいこととか無いの?私のしたこと最低だよ?」
「なんでですか?私、葵先輩に文句を言うようなことされてませんよ。」
多分香澄は本当にそう思っているんだろう。
私のしてきた事の重さを痛感した。
「違うの…。私最低なんだ。だから謝らないと…。」
なかなか言葉にならない。自分からやめようと切り出したのは初めてだった。
「はい…。なんでも言って下さい。」
その私の気持ちを察したのか、香澄がいつもの汚れのない笑顔で私に微笑んだ。
「私…。香澄のこと傷つけようと思って近づいた。それで私のこと嫌いになればいいって…。私は香澄が憎いと思ってた。だから、落としてやろうって…。」
「はい…。」
「でも、本当は私が香澄みたいになりたかったの。本当の自分をみんなから受け入れて貰えてて…。真っ直ぐにバスケを頑張ってる香澄が羨ましかった。」
「そうなんですか…。私なんか大したこと無いですよ…。普通に嘘だってつきますし、程よく練習サボったりもします。私だって頑張ってるつもりだけど、私の何倍も先輩の方が努力しててかっこいいと思いました。」
「違うよ、私は自分のために頑張ってるだけ。そのために色んな人を傷つける。」
「葵先輩、私だって自分勝手なんです。先輩に触れてもらえるのが嬉しくて先輩が苦しんでたことを見ようとしてなかった。全部、葵先輩に押し付けてた。すみませんでした。」
「そんなことないよ…。香澄が謝ることは1つもない。」
「でも、私のせいで先輩は苦しんでたんでしょう。なら、せめて謝らせて下さい。」
「香澄、ありがとう。ずっとずっとそのままでいてくれて…。それから1つだけお願いしていい?」
「はい。」
「香澄はすごいんだよ。だから、もう私なんか目指しちゃダメ。だから、私を追い越して。ちゃんとなりたい自分になって。」
「あはは。それはかなりの難しいこと言ってますよ。」
「もちろん簡単には抜かれてあげないよ。」
「自信はないけど頑張りますね。」
「ありがとう。」
「よし!じゃー、明日からは全力で行くので覚悟しておいて下さいね!」
そう言ってさっきまで重かった空気を香澄が一瞬で吹き飛ばした。
「え…あ、はい。」
突然のことで思わず敬語で答えてしまった。
「大丈夫ですか?私に追い越されて病まないでくださいね?」
「や、病まないよ!!説得力全然無いけど……。多分大丈夫。」
「あっはは!ホントに全然説得力ないですね!」
(ホントにすごいな…。)
さっきまでの暗い雰囲気がもう少しもない。
「あの、香澄。」
「はい?」
「1発ぐらい殴らなくても大丈夫?」
「んーーー。じゃあ、1発だけいいですか?」
「あ、え、どうぞ!!」
殴られる覚悟でギュッと目を閉じる。
すると、香澄がそっと私のほっぺたに手を当てた。
「1発いっとこうと思ったんですけど、もう誰か代わりにしてくれたみたいですね。」
「あ、これは…。美咲が…。」
「はは。やっぱりそうか。すごいな美咲は!」
「先輩。今までありがとうございました。」
少し悲しそうで、でも優しい顔をしていた。
「こちらこそありがとう。」
こうして私と香澄の関係は終わった。
心のドロドロが少しずつ消えていく感覚がした。
久しぶりにちゃんと空気が吸えた気がする。
ありがとう、香澄。
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