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休日(香ver)

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体育祭の次の日、私は葵に呼び出されて家の前まで来ていた。
葵と学校の外で決められた日以外に会えることなんて滅多にない。
実際に私は初めてでその緊張からインターホンが押せなくなっていた。

すると家のドアが開いた。

「あ!やっぱり来てた!来てくれてありがとー」
そう言って勇気の出なかった私を家の中へ呼んでくれた。

「あらー!かわいい子ね!いらっしゃい!」
そう。私が緊張していた1番の理由がこれだ。
今日は葵のお母さんがいる。
目元が葵にそっくりだ。

「こ、こ、こんにちは!今日はお邪魔します!!」

「何この子緊張してるのー!かーわいー!」
そう言って葵のお母さんが私の頭をくしゃくしゃした。葵がやたら頭を触るのは絶対この人の影響だ。

「お母さん!困ってるでしょ!」

「ごめーん!なんか嬉しくなっちゃって。」
 
しばらく雑談して葵の部屋に行った。

「ごめんねー、いきなり呼んで。」

「ううん!嬉しいよ!」

そう言うと葵がキスをして来た。
違う部屋に葵のお母さんがいると思うとすごく熱くなった。

私と葵は隣同士で座る。
いつもと同じ部屋のはずなのに今日はとても緊張する。

「そんな緊張しないで、お母さんいるし襲ったりしないからさ。」

「あ…。そ…うなんだ。」

「ん?襲われたかった?」
葵が少しいじわるな顔をする。

「違う!そうじゃない!!」

「あはは。そーだよねー。ごめんごめん。今日はそんなつもりで呼んでないからさ安心して。」
葵が私の肩にもたれかかる。

今日はどうしたんだろ。本当にいつもと違う。

「なにかあった?あおい。」

「ちょっと疲れちゃった。」

「私に出来ること何かある?」

「………。そのままでいて…。」

「わかった。」

そのままでいてとはこのまま私に肩を貸して欲しいということなのか。それともこの関係を続けて欲しいということなのか。
まあ、どれでもいい。
葵が望むのなら私はそうするだけだ。

「かおりさ、今日予定とかなかったの?」

「無かったよ。」
嘘だった。クラスの子と何人かで遊ぶ予定をしていた。葵に呼ばれたので体調が悪いと嘘をついてしまった。普段は絶対そんな事しないのに葵のことになると平気で嘘がつけてしまう。

「そっか…。」
そう言いながら私の手を握って来た。
なんとなく私が嘘をついたことがバレている気がした。

葵の方が友達はたくさんいる。だから、予定を入れようと思っただけならいくらでも入れられたはずだ。
でもそれをしなかった。なら私はそれに応える。

「かおりって何で私のこと嫌いにならないの?」

あおいが急にそんなことを言いだす。

「どこを嫌いになればいい?」

「どこって…。普通に考えたらやってること最低じゃん。」

「それでいいって言ったの私だよ?」

「そうだけど…。それでも普通は離れていてく。」

「私は何があってもあおいが私を必要としてくれてるなら離れないよ。」

「離れた方が良いと思う」

「なんで?」

「私どんどん最低になっていく。汚くなっていっぱい人を傷つける。」

私はそっと葵を抱きしめる。

「私でいいなら傷つけて。いっぱい傷つけて。葵が汚れるなら私も一緒に汚れてあげる。どこまでも一緒に落ちてあげる。だから離れろなんて言わないで…。」

そう言ってそっと葵に口づけをする。多分私から葵にしたのは初めてだった。

「うん…。ごめんね、変な事言って。かおり、一緒にいて…。」

「うん。」

しばらくして私たちはベッドに寝転がっていた。葵が腕枕をしてくれている。

「はぁ…。かおり絶対おかしいよ…。」

「そうかな?」

「そうだよ!」

葵が少し元気になっていた。それを見て私はすごく幸せになる。

「私は多分あおいに人を殺せって言われても余裕で殺せちゃうよ。」

葵が私を抱きしめる。

「もう…。かおりお願いだから将来変な人に騙されないでね…。」

私はつい笑ってしまった。
「あっはは!おかしいのはあおいだよー。普通こんな事言われたら引くよ?」

「引くわけないよ!かおりだもん!」

不意にそんなことを言われて私の顔は多分赤くなっている。
それを見たからなのか葵の唇が私の唇を塞ぐ。

「んっ……はっ…ん…あっ……んんっ……はぁ…っん…あおい…」

徐々に激しくなって熱くなって葵を求める。

「かおり…」
葵に名前を呼ばれると一層体が熱くなった。

「ちょっとー!あおいーーー!!」
と急に葵のお母さんの声が入ってきて流石の葵も動揺していた。

「あ、は、はい!なにー?」

「かおりちゃんごはん食べて行くー?」

「だって。どうするかおり。」

「えっと…。どうしよ…。」

「私はかおりがだめじゃないなら食べていって欲しいけど…。」
少し上目遣いで言ってきた。

(うぐっ……。一体そんなのどこで覚えたの!?!?)

「あ、じゃあ、お願いしてもいいかな?」

「わかった!言ってくるね!」

そのいつもの優しい笑顔じゃなくて嬉しそうに笑う葵に心がえぐられる。

(なにそれ…。反則じゃない?可愛すぎる……。)

ご飯を食べ終えた帰り道。葵が駅まで送ってくれる。

葵がいつもより少し強く抱きしめて「今日はありがとう」と言った。

「私の方こそ、すごく楽しかったよありがとう。」

そう言ってとても自然にキスをした。
まるで付き合ってると錯覚してしまうぐらい自然だった。

でも、期待はしてはいけない。それは葵の重りになってしまうから…。

「じゃあ、またね」

そして帰った。
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