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七海香② 京子との出会い

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私が初めて葵のそれを知ったのは1年生の冬頃。冬休みに入る少し前だったと思う。

葵が1つ上の美人で有名な雨宮京子先輩とキスをしているところを目撃した。
私はその場をバレないようにすぐに立ち去った。
あまりにお似合いな2人に失恋だとか考える隙も無かった。本当に納得できる組み合わせだと思った。

その次の日の昼休み誰かに呼び出された。そこには京子先輩がいた。
なぜ呼ばれたのか全く検討が付かなかったが昨日の2人のキスシーンが頭をよぎって少し熱くなった。

「付き合ってないよ」
唐突に京子先輩が言い放った。

「………。」
何も言えなかった。 

そして先輩が言い直す。
「私とあおい別に付き合ってないよ。昨日見てたでしょ。」

「え…。」

「あなたあおいのことすごく好きでしょ?」

顔が熱くなる。

「教えてあげよっか?どうしたら触れてもらえるのか。」

「………結構です!やめてください!」

先輩はまた話を続けた。

「あおいはね、疲れてるんだよ。だから誰かが助けてあげなきゃいけない。でもみんなすぐやめちゃうの。手に入らないから。それを承知で始めたはずなのに本当に手に入らないとわかったらすぐやめちゃうの。」

先輩はなんだか複雑そうな顔をしている。悲しそうな寂しそうなそんな顔だ。

「なんでそんなことを私に言うんですか…。」

本当に疑問だった。今まで1度も会話をしたことの無い先輩がどうしてこんなことを言ってくるのか。

「だって、あなたはあおいのことがすごく好きだから。」

「柏木さんのこと好きな人はいっぱいいますよ…。」

「まあねー。でもなんとなくあなたからは本気の匂いがするわ!」
先輩が少しドヤりながら言ってきた。

「本気以外の好きがあるんですか?」
私は当たり前のように答えた。でもみんなからしたら当たり前では無いのかも知れない。

「ほらねー!!本気だ本気!」

「………。」

「ま、だからさ!あおいを助けると思ってさっきの話考えといてよ!」

そう言って先輩は立ち去った。

考えてみたけどやっぱり私には無理だと思った。私は葵のことが好きなだけでそういうのをしたいわけじゃ無い…。
そう思って時間が過ぎていった。

冬休みが明け新学期が始まって少し経った。
いつも通りの電車に乗ったはずがやけに人が少ない。
ふと時計を見るといつもより1時間以上前だ。
学校についてもほとんど人はいない。
運動部の朝練の時間よりも早いようだ。

仕方なく職員室に鍵をもらいに行こうと思ったら体育館からボールの跳ねる音がした。
そこには葵がいた。
1人で練習をしている。

そこでふと先輩の言葉がよぎる。
「あおいはね、疲れてるんだよ。」

私は葵のことを好きだと言いながら何も見ていなかった。みんなの憧れる葵。それを作り上げるためにどれだけの努力が必要か。
考えただけで心がギュッと痛くなった。

その日私はこの間もらった先輩の連絡先に連絡した。

先輩から直接話そうって連絡が来た。

昼休みに指定された場所で待っていると後ろから「お待たせー!」と元気に飛びついて来た。

「来てくれてありがとね!」

「こちらこそありがとうございます。」

「て、ゆうか!連絡遅いし!タイミング悪すぎ!!」

「え…。」

「今ね!新しい子入ったばっかりだから大体1ヶ月後ぐらいかなー。」

「あ…新しい子?」


「そー!あおいはね、大体3人ぐらいまでしか作ん無いのよ。てか、作れないのかな時間的に。で、それぞれあおいの家に週一回決まった曜日に呼ばれる。それ以外の日は滅多に学校の外で会ってくれないからそれで断念しちゃうのよみんな。」

「はあ…な…るほど?」

「その私以外の2人が最近変わったばっかなの!もうちょっと前に言ってくれたら良かったのに!ほんとにタイミング悪い!!」

「だからまた空いたら今だよーって連絡するね!」

「え!ちょっと待ってください!連絡もらってどうしたら?」

「簡単だよ!その時にあおいがかわいーって思えばいいの!それであなたがあおいに好意があることをわかってもらえればいけるわ!」

「めちゃくちゃ難しいこと言ってますけど?」

「え、どこが?」

「いや、私なんかに柏木さんがかわいーって思うわけないじゃ無いですか!そら、先輩みたいな美人なら楽勝ですけど…。」

すると先輩が私の顔を両手で包み込む。
「大丈夫よ。かおりちゃんはかわいいわ!自信持ちなさい!!」

自信なんて1ミリも出てこなかった。
でも、私が葵の助けになれるのなら頑張れる気がした。


先輩から連絡が来たのはすでに春休みに入った頃だった。





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