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清水香澄①

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私がバスケを始めたのは小学5年生の頃でみんなよりは少し遅かった。

たまたま1番近いクラブチームに入ったら県で1番の所だった。
練習はかなりハードで最初はびっくりしたがしばらくしてわりとすぐに周りのみんなと同じぐらいになり安心していた。
周りのみんなは「あんた天才だね」みたいなことを言っていたが自分ではよくわからなかった。

まだ6年生が残っていた頃の県大会の決勝で私はベンチからコートを眺めていた。私は2試合目に少し出させてもらったのがルールがあまり良く理解できておらずチームに大迷惑をかけた。

私のチームは毎年優勝しているらしく1回戦からも順調に勝っていたのでまた普通に勝つものだと思って見ていた。

しかし、なかなか点差がつかず苦しい試合をしていた。その理由はすぐにわかった。向こうの4番の人が異様に上手いのだ。4番の人だけで試合が成り立っていた。
私は初めてこんなに上手い人を見た。
かっこいい…。
初めての感情だった。
その人が柏木葵先輩だった。

その日私のチームは何年ぶりかに負けてみんな落ち込んでいたが私は初めて抱いた感情で落ち込む気分になれなかった。

その後葵先輩はどんどん有名になって行った。
私は葵先輩の様になりたくて何度も動画を見て少しでも近づけるよう練習した。

高校選びも全く悩まなかった。たとえ推薦が来なくても勉強で行こうと思っていた。
だから、先輩の高校から推薦が来たときは本当に嬉しかった。

部活はやっぱりハードだったが葵先輩がいるのでなにも苦ではなかった。というか、すぐ近くに憧れの先輩がいる日々は楽しくて仕方がなかった。

入部してしばらく経った日。
いつもの朝練の時間より早く着いてしまい暇だったのでシュート練習をしていた。
葵先輩のフォームを想像してそれと同じ様にする。いつもこれをすると周りの音が聞こえなくなる。世界で私と先輩だけしか存在しないこの感覚が好きだった。

「ねえ、それ私の真似?」

急に声が聞こえた。先輩だった。
私はびっくりしたが先輩にわかってもらえたのがすごく嬉しくて。

「はい!そうなんです!ずっと参考にしてて!」
元気にそう言った。

「じゃあそれやめた方がいいよ」

「え…」
私はそれを言われたショックでおかしくなりそうだった。もう死んでも構わないとさえも思った。

「あの…真似してすみませんでした…」
それでも憧れの人に嫌われたくない一心で返事をした。

「あー、違う違う!!そういう意味じゃ無くて!清水さ、めちゃくちゃ才能あるから私の真似したらそれが死んじゃう!もっとやりたいようにやりなよ!」

「え…と。そうなんですか…?」
衝撃的だった。私が今まで見た中で先輩が1番上手いと思っていたし先輩になれれば1番になれると思っていたから。

「そうした方が絶対いいと思う。参考にしてくれたのはすごく嬉しいよ。」

「先輩が言うならそうします。」

そう言うと先輩がにっこり笑った。

先輩以外の人に言われても絶対に聞かなかったが、先輩に言われてしまったのでそうするしかなかった。

それから何も考えず自分のやり易い様にやったら自分でもわかるぐらいに上達が早かった。それが嬉しくて先輩に報告したら先輩も喜んでくれた。

しばらくして先生に呼び出された。
そこには先輩もいる。

内容は私を春のインハイ予選から使っていくからそのつもりでってことと3年生が抜けたときの副キャプテンにと考えているという話だった。
この学校は3年生に1人ずつキャプテン副キャプテンがいて、もう1人の副キャプテンを2年生がすることになっていた。
それを今葵先輩がしていて私がその後を継ぐことになる。
それが嬉しくて「頑張ります!!」と元気に答えた。

「こんな入部したてで大変だけど頑張ってね。私もサポートするし。めちゃくちゃ期待してんのよあのオッサン。」

部室に着いたら先輩が話し始めた。
でも先輩と部室で2人っきりというのにドキドキして会話が全然入ってこない。

「あ…。え…と。はい!」

「あんた…。全然人の話聞いてないよね。」

「違うんです!これは!先輩と2人だからドキドキして!!」

(やっば……。ごまかさないと…。)

「じゃなくて!先輩のこと小さい頃からずっと見てて…。だから…その…」

(やっぱり無理だ…。もういっか何を言ってもどうせバレてる。)

「あの!だから!つまり先輩のことが大好きなんです!!」

(あーあ。もうどうなってもいいや…。)
どうなっても良いけど明日から先輩と普通に話せないかと思うとすごく悲しかった。

先輩がこちらに近づいてきた。
そして私にキスをした。

(!?!?!?!?)

「ごめん、人と付き合うとか考えられないんだよね」
そう言ってまたキスをしてきた。
今度はさっきのとは違ういやらしいやつだ。

「っんん…チュッ…ん……チュル…っん…はぁ…ん……」

先輩の矛盾した行動に頭が追いつかない。この初めての経験にただただ流されていく。

「せ…んぱい。あの…わたし…どうすれば……」

「じゃあもっと舌出して」

そんなの恥ずかしいに決まってる。でもすでに私の感覚は麻痺していてそれに大人しく従うしかなかった。

「っは…チュ…っん……ジュル…あ…っん…クチュ……っんん」

体が熱い。とにかく熱い。
でも、嫌な感じでは無くてこのままこの感覚にどこまでも溺れたいと思った。
もっともっと…。

しかし、私の欲求は叶わなかった。先輩の唇が離れた。

「あ…の…。これで終わりですか……?」
多分私はめちゃくちゃ恥ずかしいことを言っている。でも、それよりももっとして欲しい欲求が上回っていた。

「もっと欲しい?」
先輩が耳元で囁く。

「欲しいです…」

「じゃあ今度うちに来て?」

「い、いいんですか?」

「いいよ。でもその代わり私は多分清水とは付き合えない。それでもいいって割り切れる?」

「はい…。それでも構いません。」
私の頭は考える事をやめた。ただ自分のやりたいようにやった。

「ありがとう。じゃあまた連絡するね!」

そう言って軽く私にキスをして帰って行った。

そうして私と先輩の関係が始まった。


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