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七海香①
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「っん…チュッ……クチュ…ッチュ……んん…はぁ……」
葵とこうやってキスをするのは何度目だろう。もう何回もした。何回もしたけど何も変わらない関係。変わらなくていいと私は心の底から思っている。そう、葵に私以外にもこんな事をする人がいてもそれでもいい。そばにいたい。それが葵のためになるのだから。
葵は高校へ入学してすぐに有名になっていた。バスケ、勉強、何においてもトップクラスの葵は隣のクラスでもいつも話題に出るほどの人気者だ。
だから葵のことは雲の上のような存在でなんの魅力らしい魅力のない私なんかが関われるような人ではないとずっと思っていた。
入学して2、3ヶ月が経った頃いつものようにバスを降りようとした時バスの運転手さんに止められた。
「お客さん!申し訳ないけど定期切れてるからお金払ってね!」
「あ、すみません」と言ってお金を入れていたら10円が無いことに気づいた。
(やば、最悪…後ろ詰まっちゃうじゃん…)
仕方なく両替をしようとしたら一万円札しか無い。
(あ………。えと、一万円札は両替機じゃさすがに無理だよね。じゃあ、こういう時はどうしたら…)
などと考えていると後ろの人がチッと舌打ちをした。
その瞬間体が熱くなって頭が真っ白になった。電車やバスの公共機関を利用し始めたのは高校生からで、まだ慣れていない私にとって知らない人からの舌打ちという行為は私の思考を停止させるには十分すぎる行為だった。
(どうしよう、早く降りなきゃ。でも、お金…。運転手さんに両替お願いしないと。でも、声が出ない……。)
すると
「あ、ちょっとすみません」と後ろから誰かが来てチャリンと音がした。
私は最初何が起こったかわからず顔を上げるとそこには葵がいた。
葵は優しく微笑んで「行こっ!」と手を引いてくれた。
私は少し時間が経って状況を理解した。
「ほんっっとにすみません!!お金は絶対すぐ返します!」と土下座でもするかの勢いで葵に謝った。
「え、いいよ10円ぐらい」と葵が少し笑いながら答えた。
「いやいや!ダメだから!絶対に返します!柏木さんにこんなことしたら天罰下るよ!」
「あっはは!なにそれ、てか、あおいでいいよかおりちゃん。」
「え……と…。何で私の名前…。」
情報量が多くて1度に全ては処理ができなかった。楽しそうに笑う葵や、葵でいいよとか無理難題を押して付けてきた葵とか他にもつっこみたい所はあったけれど私の名前を呼んでくれたことが多分この時の私は1番衝撃的だったのだろう。
「何でって入学式からもう結構経ってるよ!隣のクラスだよね?体育も一緒だし普通に覚えるでしょ!」
「え!普通覚えないよ!喋ったことも無い人のこと!」
というか私の本音は葵みたいな人が私程度の人を覚えないでしょってことを言いたかった。
「いや、かおりちゃんも私のこと知ってるご様子ですけど」
「そ、それは当たり前でしょ!柏木さんのこと知らない人とかこの学校にいないよ!」
「はいはい。あおいでいいよ。」
少し呆れたようにまた無理難題を押し付けてくる。
「あ……の…それはき、きびしくないですか?」
「なーに?恩人のこーんな簡単なお願いも聞けないのー?」
と少し悪い顔をして言ってくる。
「う…、じゃあ、あ…あおい………ちゃん」
これが今の私の中の限界だ。
でも葵は「あ!お!い!」とまだ呼び捨てを強要してくる。
「ぁ…ぉぃ…」と今にも消えそうな声で答えた。
そしたら満足したのか葵が嬉しそうに「さ!早く行こー!」また私の手を引いた。
この奇跡のような会話に私の頭が中々追いつかず少し気まずいような変な空気になってしまった。
それを察してくれたのか葵が
「てかさー、さっき実はお金に入れる時5、6人?いや多分もっと?とりあえずいっぱい順番抜かしちゃったんだよねー。」と空気を入れ替えるように話し始めた。
「え……と…」
びっくりして何も言えない私に構わずまた葵が言葉を発する。
「うん!ついてる、ラッキーだよね!ありがとね、かおりちゃん!今日いつもとバスの時間違ったから混んでてちょっとイラついてたんだ!だから合法的に順番抜かしできて助かったよ!」と葵がこれでもかという優しい笑顔で私に言ってきた。
「そ、そんなの…私。迷惑しかかけてないし…お礼なんて……」葵の優しさと自分の不甲斐なさで泣きそうになった。
「あー。じゃあかおりちゃんも私がバスにいて良かったね!うん!お互い今日ついてる日だね!」そう言って葵が私の頭をポンポンと優しく叩いてくれる。
その優しさに応えなければと「うん!柏木さんホントにありがとう!」
精一杯の笑顔で応えた。
「どーいたしまして!」
また葵が優しい顔をする。
なんなのだろう本当にこの人は。こんなにも優しさで溢れた人を今まで見た事がない。私はこの人に惚れない方法を何度探してもどこを探しても見つからない。私は多分100回人生をやり直したとして100回葵に振られるとしても100回とも葵を選ぶだろう。
絶対に無理だとわかっているけれど好きになる以外に選択肢が無い。好きでいるだけ。それだけ許してもらおう。そうやって心でそっとしまっておこう。
しばらくして「あ!あおいでいいからね!」
と思い出したように葵がつぶやいた。
「はい…頑張ります…。」
だったら私のことも呼び捨てにして欲しいなんて厚かましいお願いを出来るわけがなかった。
葵とこうやってキスをするのは何度目だろう。もう何回もした。何回もしたけど何も変わらない関係。変わらなくていいと私は心の底から思っている。そう、葵に私以外にもこんな事をする人がいてもそれでもいい。そばにいたい。それが葵のためになるのだから。
葵は高校へ入学してすぐに有名になっていた。バスケ、勉強、何においてもトップクラスの葵は隣のクラスでもいつも話題に出るほどの人気者だ。
だから葵のことは雲の上のような存在でなんの魅力らしい魅力のない私なんかが関われるような人ではないとずっと思っていた。
入学して2、3ヶ月が経った頃いつものようにバスを降りようとした時バスの運転手さんに止められた。
「お客さん!申し訳ないけど定期切れてるからお金払ってね!」
「あ、すみません」と言ってお金を入れていたら10円が無いことに気づいた。
(やば、最悪…後ろ詰まっちゃうじゃん…)
仕方なく両替をしようとしたら一万円札しか無い。
(あ………。えと、一万円札は両替機じゃさすがに無理だよね。じゃあ、こういう時はどうしたら…)
などと考えていると後ろの人がチッと舌打ちをした。
その瞬間体が熱くなって頭が真っ白になった。電車やバスの公共機関を利用し始めたのは高校生からで、まだ慣れていない私にとって知らない人からの舌打ちという行為は私の思考を停止させるには十分すぎる行為だった。
(どうしよう、早く降りなきゃ。でも、お金…。運転手さんに両替お願いしないと。でも、声が出ない……。)
すると
「あ、ちょっとすみません」と後ろから誰かが来てチャリンと音がした。
私は最初何が起こったかわからず顔を上げるとそこには葵がいた。
葵は優しく微笑んで「行こっ!」と手を引いてくれた。
私は少し時間が経って状況を理解した。
「ほんっっとにすみません!!お金は絶対すぐ返します!」と土下座でもするかの勢いで葵に謝った。
「え、いいよ10円ぐらい」と葵が少し笑いながら答えた。
「いやいや!ダメだから!絶対に返します!柏木さんにこんなことしたら天罰下るよ!」
「あっはは!なにそれ、てか、あおいでいいよかおりちゃん。」
「え……と…。何で私の名前…。」
情報量が多くて1度に全ては処理ができなかった。楽しそうに笑う葵や、葵でいいよとか無理難題を押して付けてきた葵とか他にもつっこみたい所はあったけれど私の名前を呼んでくれたことが多分この時の私は1番衝撃的だったのだろう。
「何でって入学式からもう結構経ってるよ!隣のクラスだよね?体育も一緒だし普通に覚えるでしょ!」
「え!普通覚えないよ!喋ったことも無い人のこと!」
というか私の本音は葵みたいな人が私程度の人を覚えないでしょってことを言いたかった。
「いや、かおりちゃんも私のこと知ってるご様子ですけど」
「そ、それは当たり前でしょ!柏木さんのこと知らない人とかこの学校にいないよ!」
「はいはい。あおいでいいよ。」
少し呆れたようにまた無理難題を押し付けてくる。
「あ……の…それはき、きびしくないですか?」
「なーに?恩人のこーんな簡単なお願いも聞けないのー?」
と少し悪い顔をして言ってくる。
「う…、じゃあ、あ…あおい………ちゃん」
これが今の私の中の限界だ。
でも葵は「あ!お!い!」とまだ呼び捨てを強要してくる。
「ぁ…ぉぃ…」と今にも消えそうな声で答えた。
そしたら満足したのか葵が嬉しそうに「さ!早く行こー!」また私の手を引いた。
この奇跡のような会話に私の頭が中々追いつかず少し気まずいような変な空気になってしまった。
それを察してくれたのか葵が
「てかさー、さっき実はお金に入れる時5、6人?いや多分もっと?とりあえずいっぱい順番抜かしちゃったんだよねー。」と空気を入れ替えるように話し始めた。
「え……と…」
びっくりして何も言えない私に構わずまた葵が言葉を発する。
「うん!ついてる、ラッキーだよね!ありがとね、かおりちゃん!今日いつもとバスの時間違ったから混んでてちょっとイラついてたんだ!だから合法的に順番抜かしできて助かったよ!」と葵がこれでもかという優しい笑顔で私に言ってきた。
「そ、そんなの…私。迷惑しかかけてないし…お礼なんて……」葵の優しさと自分の不甲斐なさで泣きそうになった。
「あー。じゃあかおりちゃんも私がバスにいて良かったね!うん!お互い今日ついてる日だね!」そう言って葵が私の頭をポンポンと優しく叩いてくれる。
その優しさに応えなければと「うん!柏木さんホントにありがとう!」
精一杯の笑顔で応えた。
「どーいたしまして!」
また葵が優しい顔をする。
なんなのだろう本当にこの人は。こんなにも優しさで溢れた人を今まで見た事がない。私はこの人に惚れない方法を何度探してもどこを探しても見つからない。私は多分100回人生をやり直したとして100回葵に振られるとしても100回とも葵を選ぶだろう。
絶対に無理だとわかっているけれど好きになる以外に選択肢が無い。好きでいるだけ。それだけ許してもらおう。そうやって心でそっとしまっておこう。
しばらくして「あ!あおいでいいからね!」
と思い出したように葵がつぶやいた。
「はい…頑張ります…。」
だったら私のことも呼び捨てにして欲しいなんて厚かましいお願いを出来るわけがなかった。
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