先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない

こえだ

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柏木葵②

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天才ってのは都市伝説のようなものだと思う。


小学校から始めたバスケ。すごいね、天才じゃんとかよく言われるけどそんな事あるわけない。私は多分平凡だ。別に才能に恵まれたわけではない。ないけれど練習をすれば上手くなるぐらいには恵まれていた。だからいっぱい練習をした。誰よりも上手くなるまで。

そしたらいつの間にかみんなと差がついて天才呼ばわりされた。別にどうでも良かった。ただ、母に喜んで貰う事だけが私の目的だから。母はすごく喜んでくれた。でも母は私が何をしても喜んでくれる。試合で負けても勝ってもシュートを入れても外しても何をしても嬉しそうにする。だから私はもっと喜んで貰うにはどうしたらいいか考えてもっと頑張る。それの繰り返し。

勉強も頑張った。私は天才なんかではないので1度で全てが覚えられる特殊能力なんてものは持ち合わせてない。だから時間を見つけてやれるだけの事をやった。毎日勉強をする、忘れないように、ただそれだけ。そしたらまた私は天才になっていた。周りの単純さに少し笑える時もあったし、ムカつく時もあったけど母が喜んでくれていたからどうでも良くなった。

天才だ、完璧だと周りから言われるのにはもう慣れた。それでも私の身の丈に合わないレッテルは私を酷く疲れさせる。
母が自慢出来るような完璧な子を演じるには日々溜まるストレスを溜まり切る前に解放してあげなければならない。だからこれは仕方がない。

「チュッ…チュ…クチュ……」

「んっ………ぅ、はぁ…、っあ…あ…あおい…」

昼休みの人通りの少ない空き教室で唾液が混じり合う決して軽くはないキスをする。

「ん、どうしたの。今日もかわいいね。」

「ん、んんっ…んふっ……っあ…おい……」

ゴーンゴーン。

予鈴が鳴った。一旦唇を離す。

「もう休み終わっちゃう。そろそろ戻ろっか。」

「やだ。」
といって私の服を掴んで抱きつくこのかわいい子は隣の隣のクラスの七海香。去年は隣のクラスだったかな。すごくかわいいと思うし、こうゆう事をするけど付き合ってはいないしそれを本人も了承してる。
まあ、私のストレス捌け口になってもらってるわけで、我ながら最低だと思うけれどそれで心を痛めるほどもう私は良い人でもまともな人間でもない。

「こーら。授業遅れるでしょーが。」

「だってぇ、……っん」

香の言葉を遮るようにもう一度唇を塞いだ。

「ほら!もう!またそうゆうことする!!」

「はは。ごめんてば。だってかおりかわいいんだもん」

そう言うと香が真っ赤にした顔を私の胸にうずめる。だからそっと抱きしめてあげる。


「今日放課後いけるよね。いつもみたいにちょっと待ってもらわないといけないけど。」
そうやって香の頭を優しく撫でながら耳元で囁く。

コクリ…。

私の腕に抱かれて香が静かに頷いた。



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