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皆川美咲①

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この人の事を嫌いだという人はこの学校に1人もいないと思う。
バスケがすごく上手で有名、勉強では学年で1番を取るような完璧な先輩。柏木葵先輩。
すごく整った顔立ちをしていてサラサラした髪のショートカットヘアが抜群に似合う。
そしていつもキラキラしたオーラをまとっている。


この完璧な先輩は私のお姉ちゃんらしい
そして先輩はそれを知らない。



私がそれを知ったのは小学生の頃。
2年生だったか3年生だったかとりあえずまだ小さかった頃。
母にバスケがやりたいと言った。テレビでやってたのを見て楽しそうだと思った。
母は少し複雑そうな顔をしていたけれどその当時はなぜだかわからなかった。
私はバスケが出来れば何でも良かった。
母にやたら長く車で揺られて連れられたのは県で1番強いバスケクラブだった。私はただバスケが出来ること嬉しくて喜んで通った。

クラブに入ってすぐに試合があった。私はもちろんまだまだ初心者なので見学だけだった。
隣のコートの試合をふと見た時に初心者が見ても上手いとわかるほどズバ抜けて上手い人がいた。そこのチームは決してレベルの高いチームでは無かったけれど1人だけ周りを寄せ付けないほどの上手さですごく輝いて見えた。私がその人を目で追っているとお母さんが言った。
「あの子には何があっても絶対負けてはダメよ、、、」

突然の事すぎて、?で頭がいっぱいになったが落ち着いてから聞き返す。

「なんで?」

「あれはあなたのお姉ちゃんなの。あなたとは違うお母さんから産まれた子よ。
だけどあの子は私たちを恨んでいるのよ。
だからあの子には関わっちゃダメ。悪い人の子供なの。
あなたがあの子に負けたらお母さんまで負けた事になっちゃうの。お母さんのためにも頑張ってね。これは絶対誰にも言わないで。お母さんと2人の秘密よ約束してね。」

???

意味がわからなかった。わからなかったけど母はそれ以上何も教えてくれなかった。
だから家に帰ってお父さんに聞いてみたお母さんに言われた通りのことを
そしたら父の空気が変わった。
すごく怖い雰囲気だった。いつも優しくて温厚な父で怖いなんて思ったことは1度も無かったけれどこの時初めて父の事を怖いと思った。
それから父はすぐに元の父に戻り何も気にする事ないよと優しい声で言ってくれた。

その夜、父の怒鳴り声と母の泣き声混じりの声が聞こえた。何を言っているかわからないけれど子供ながらに私が余計な事を言ってしまった事はわかった。だから2度とこの話題には触れないでおこうと誓った。

少し成長してから色々理解した事なのだが、どうやら私と先輩はお父さんが一緒らしい。つまりお父さんが浮気をして産まれのが私でお父さんは私のお母さんを選んだ。向こうの家族には2人も子供がいるそうだ。私の1つ上の女の子と私の2つ下の男の子。父は私を産んだことを向こうの家族には隠していた。そして、最終私の母を選んで向こうの家を出た。

(そら恨まれるわけだ……)

色んなことを理解して先輩とは関わってはいけない、わたしには関わる資格が無い人だと言うことはわかっている。
わかっているけれどあの時コートで輝く姿がいつまでも離れない。
そしてみんなが憧れる人が私の姉だと言うこと誰にも言えずただ1人でひっそりと誇らしく思っている。
いつも先輩の姿を見るたびに心がぎゅっと痛くなる。

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