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43話:伝承されるもの
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山本の思いが届いたのか、雲ひとつ無い快晴だ。この先に待っている体育祭応援演舞本番が…と思うと怖さの反面、今までの事を乗り越えれたからには全て出来ると思っていた。
練習の最中に男子を見ると、大山はキレッキレの演舞を披露。
「おい、三國!これが団長だ。よく目に焼き付けておけよ。次期団長」
「ウィッス」
なんか見覚えのあるような場面だったが、大山の思いや男気が全て伝わっているようにも見える。
女子応援団も次期団長予定の嘉藤は守山の意志を引き継ごうと必死になっていた。
「まだ…ここはこうじゃなくて守山先輩はこうしていたはず」
「ん?教えようか、手の動きをよく見てて!その動きはダメだから私の後についてくるようにして舞ってみて」
伝承の瞬間を目の当たりにしていた。山本には、黒岩桐乃を中心に自身の覚えている技術とその継続を伝える。
「先輩…一つ聞いても良いですか?終わった後で構いませんか?」
「桐乃ちゃんどうしたの?でも、とりあえず今は技の伝承時間だからそうだね。分かった」
放課後の練習が終わると黒岩は山本と2人で話をした。
「前宮先輩死んでしまってからあの後どうだったのか心配で…それで今はどうなのかなと思って聞きたかったのです。もしあれなら、私たち後輩でケアできたらと…」
「なるほどね…桐乃ちゃん優しいや。あの後本当に病んで大変だったけどなみから怒られて今は涼太の為に演舞を捧げようかなって決めたの。このネックレス見るとわかるけど飾りが2つあるの分かるかな…?これ、涼太君が付けてたネックレスの飾りを受け取って形見としてこの胸に肌身離さず着用してるの。これ付けてるだけで、何故かとても落ち着くの…」
「なるほど…。前宮先輩って何か私の感じ方が間違ってなければなのですが、大山先輩と同じものを感じます。漢気があるけどその分優しさがあるというか…」
2人は話をしながら駅でそれぞれの家へ帰宅する。山本も少しだけ大山と前宮が似てると黒岩の話を聞いて感じていた。
「確かに言われてみれば、大山君と涼太君似てたな…。涼太君天から見守ってると思うけど、君のネックレスの飾りを受け取って私のネックレスに通したよ。その飾りはとても心が熱くなるというか、臆病な私の心を鼓舞してくれるようなそんな気分だよ。君の心と熱意、確かに受け取ったよ」
列車内で山本は音楽を聴きながら心の中で呟く。その音楽は、一緒に聴いていた心の支えでもあったので隣にいるようなそんな感覚があった。
帰宅した後、山本は一つの考えが生まれる。それはあの時のクッキーを再現しようというものだ、
「結構前の味だけど、確か…バターの風味も出してたから…そうだったよね。あのお菓子を再現してるんだわ。あいつすげぇな…」
キッチンにはココアパウダー、抹茶の粉末と牛乳にホットケーキミックス、バターを用意した。一つ一つ丁寧に型抜きした後、予熱したオーブンで心を込める。
「涼太君の味になってるかな…間違ってたらごめんね」
出来上がりを見て焼き立てを1個試食する。病んでた時に食べたあの素朴で美味しい味に仕上がっていた。
「これが、私なりに考えたものだよ。この文書と共に持参して本番の応援演舞に費やした、私たちの努力を見届けてほしい」
袋に一つずつ入れた後、いつものように動きや体の柔らかさを確認する。
昔のように負荷をかけたりする事なく、伸び伸びとした体のメンテナンスに彼女の心のどこか余裕があるように見えた。その夜は何事もなくぐっすり眠ることができた。
体育祭まであと5日となり、山本は自分で焼いたクッキーを応援団員分プレゼントした。分かる人は分かったのか、嬉し涙を流して食べた。
「この味懐かしい…。直接本人に聞いてレシピを知ったの?」
「違うよなみ、私がこうだろうと思って思い出しながら作ったの。これ食べて応援演舞、最後まで頑張ろう」
山本の粋な計いで男子女子共に士気が上がる。最後の演舞となる5人と、その気合と熱意を伝える後輩らの心は一つになった瞬間だった。
しかし、今まで妨害をしてきた4人の先生のうちの1人である三武がとある計画を起こそうとしていた。彼は、教育委員会から除名されて逮捕される前の一嶋と全ての作戦が失敗した時のために予備の作戦を企てる。
「とりあえず、こういう感じで様子を見ましょう。あいつが死んだ時のためにとっておけば成功率はぐーんと上がりますよ」
「間違いないな。準備する分に越した事はない。この作戦は三武に任せとくぞ」
体育祭当日には闇に染まりつつなのに、団員は山本が作ったお菓子で絆が深まりつつでそのことを知る由も無かった。
練習の最中に男子を見ると、大山はキレッキレの演舞を披露。
「おい、三國!これが団長だ。よく目に焼き付けておけよ。次期団長」
「ウィッス」
なんか見覚えのあるような場面だったが、大山の思いや男気が全て伝わっているようにも見える。
女子応援団も次期団長予定の嘉藤は守山の意志を引き継ごうと必死になっていた。
「まだ…ここはこうじゃなくて守山先輩はこうしていたはず」
「ん?教えようか、手の動きをよく見てて!その動きはダメだから私の後についてくるようにして舞ってみて」
伝承の瞬間を目の当たりにしていた。山本には、黒岩桐乃を中心に自身の覚えている技術とその継続を伝える。
「先輩…一つ聞いても良いですか?終わった後で構いませんか?」
「桐乃ちゃんどうしたの?でも、とりあえず今は技の伝承時間だからそうだね。分かった」
放課後の練習が終わると黒岩は山本と2人で話をした。
「前宮先輩死んでしまってからあの後どうだったのか心配で…それで今はどうなのかなと思って聞きたかったのです。もしあれなら、私たち後輩でケアできたらと…」
「なるほどね…桐乃ちゃん優しいや。あの後本当に病んで大変だったけどなみから怒られて今は涼太の為に演舞を捧げようかなって決めたの。このネックレス見るとわかるけど飾りが2つあるの分かるかな…?これ、涼太君が付けてたネックレスの飾りを受け取って形見としてこの胸に肌身離さず着用してるの。これ付けてるだけで、何故かとても落ち着くの…」
「なるほど…。前宮先輩って何か私の感じ方が間違ってなければなのですが、大山先輩と同じものを感じます。漢気があるけどその分優しさがあるというか…」
2人は話をしながら駅でそれぞれの家へ帰宅する。山本も少しだけ大山と前宮が似てると黒岩の話を聞いて感じていた。
「確かに言われてみれば、大山君と涼太君似てたな…。涼太君天から見守ってると思うけど、君のネックレスの飾りを受け取って私のネックレスに通したよ。その飾りはとても心が熱くなるというか、臆病な私の心を鼓舞してくれるようなそんな気分だよ。君の心と熱意、確かに受け取ったよ」
列車内で山本は音楽を聴きながら心の中で呟く。その音楽は、一緒に聴いていた心の支えでもあったので隣にいるようなそんな感覚があった。
帰宅した後、山本は一つの考えが生まれる。それはあの時のクッキーを再現しようというものだ、
「結構前の味だけど、確か…バターの風味も出してたから…そうだったよね。あのお菓子を再現してるんだわ。あいつすげぇな…」
キッチンにはココアパウダー、抹茶の粉末と牛乳にホットケーキミックス、バターを用意した。一つ一つ丁寧に型抜きした後、予熱したオーブンで心を込める。
「涼太君の味になってるかな…間違ってたらごめんね」
出来上がりを見て焼き立てを1個試食する。病んでた時に食べたあの素朴で美味しい味に仕上がっていた。
「これが、私なりに考えたものだよ。この文書と共に持参して本番の応援演舞に費やした、私たちの努力を見届けてほしい」
袋に一つずつ入れた後、いつものように動きや体の柔らかさを確認する。
昔のように負荷をかけたりする事なく、伸び伸びとした体のメンテナンスに彼女の心のどこか余裕があるように見えた。その夜は何事もなくぐっすり眠ることができた。
体育祭まであと5日となり、山本は自分で焼いたクッキーを応援団員分プレゼントした。分かる人は分かったのか、嬉し涙を流して食べた。
「この味懐かしい…。直接本人に聞いてレシピを知ったの?」
「違うよなみ、私がこうだろうと思って思い出しながら作ったの。これ食べて応援演舞、最後まで頑張ろう」
山本の粋な計いで男子女子共に士気が上がる。最後の演舞となる5人と、その気合と熱意を伝える後輩らの心は一つになった瞬間だった。
しかし、今まで妨害をしてきた4人の先生のうちの1人である三武がとある計画を起こそうとしていた。彼は、教育委員会から除名されて逮捕される前の一嶋と全ての作戦が失敗した時のために予備の作戦を企てる。
「とりあえず、こういう感じで様子を見ましょう。あいつが死んだ時のためにとっておけば成功率はぐーんと上がりますよ」
「間違いないな。準備する分に越した事はない。この作戦は三武に任せとくぞ」
体育祭当日には闇に染まりつつなのに、団員は山本が作ったお菓子で絆が深まりつつでそのことを知る由も無かった。
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