化学ファンタジア

saiha

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恋愛編

23話:冬の物理的サプライズ

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 夏も終わり、日に日に寒くなっていった。2人の携帯待ち受け画面は夏に行ったビーチの時の写真にしていた。相当楽しかったのか、フラーレンはその写真を見るたびにニヤニヤした。そして、フラーレン自身のビキニ姿を見ては自分の体を触って確認していた。コバルトから見て、女子の悩みは深いのだろうと察した。
「おいおい、そんなに僕との写真を真近に見るフラーレンを見てると恥ずかしいよ…。それに何を確認してるの?さっきからフラーレンの体を触りながら何か確認してるように見えるけど…」
「…ん?あー私のコンプレックスでちょっとね…。綺麗な小麦色になったのは良かったけど元に戻るのが早くてしかも、私ってどこか足りないところあるよなぁって思ってさ」
 女の子の悩みは、男の子から見ても理解に遠のくものだ。コバルトはゆっくりとフラーレンの横を歩きながら、授業の話をした。
「もうすぐテストだし、その後はまた時間もあるから勉強しながらがんばろう」
 コバルトの励ましにフラーレンはふふっと笑った。その夜、フラーレンは1人で勉強をしていた時一つの考えが生まれた。夏にコバルトから海水浴のサプライズを用意されたから、今度はこっちが用意してみようという考えだ。
「コバルトがあんなに楽しみに計画立ててサプライズを私に用意してたから、私も私なりに何か良い方法ないかなぁ…」
 ペンを走らせながら考えていた時、ルートがフラーレンを呼んだ。
「フラーレン!お風呂だよ!」
 その問いかけに答えてフラーレンはお風呂に入ってコバルトへのサプライズを考えた。そして、なぜかコバルトがあの時にジュースをこぼしてベタベタになった胸元とビキニの場面を思い出してしまった。
「あっ……私、なんであの時のこと思い出しちゃうのかな…。普通なら変態だよね。そもそも高校生が大人のようなビキニを着たら他の男の人から集られるし」
 胸がキュンっとなったフラーレンは少しだけ笑顔だった。コバルトへの愛は本物だ。椅子に戻ってのぼせた体を休ませていた時、コバルトへのサプライズが思いついた。
「そうだ!全ての授業が終わったら、コバルトにサプライズプレゼントしよう!そして、2人っきりになってご飯食べたり遊んだりしてみよう。そうしたらコバルトも喜ぶはず」
 フラーレンは髪を乾かしながら思いついた考えに、にやけが止まらない。サプライズを行う理由は、異世界にてアクリロニトリルから貰った守り石を加工し、ネックレスにしてプレゼントしてくれたことを未だにあの時の嬉しさを忘れることができなかったのが大きな理由だった。そして、全てのテストが終わった後フラーレンはコバルトを呼んだ。
「急に呼び出しちゃってどうしたんだい?テスト悪かったから僕に八つ当たりするのはやめてくれよ」
 笑みが溢れてるフラーレンは、全身が痺れていた。でも今ここで言わないと時間ない中、コバルトを呼び出したことに対して申し訳ないと思った。しかし、緊張のあまり全身汗をかいてしまい着ていたブラウスがベチャベチャになっていた。
「フラーレン!緊張せずに言ってごらん?流石にこれ以上汗をかいちゃうと他の男子にその姿見られたらまずいでしょ?これ、替えの制服だけど元々この学校デザイン一緒だから着替えときな?生徒指導に見つかったら大変だし」
 自分の姿を見たフラーレンは赤面してしゃがみ込んで見られたくないものを隠した。
「あわわわわ…どうしよう恥ずかしいよ。何でこんな時に汗かいちゃうのかな…私らしくないよね…」
 コバルトに聞いたが、そのコバルトもフラーレンの姿を見て赤面した。
「夏のビキニを思い出しちゃうから早く女子トイレに移動して着替えて!じゃないと、本当に僕おかしくなりそうだから」
 2人とも気まずい空気になって一旦フラーレンは着替えることにした。心配になってコバルトは女子トイレの近くでフラーレンのことを待った。数分もしないうちに、すぐ出てきた。
「コバルトの匂いがする!なんか安心感があるよ。さっき伝えようかなと思ったのはこの日空いてるかな…?」
「この日は僕の誕生日かー。なるほどね…空いてるよ!僕の家は前夜祭でするからね」
 やっと言えたフラーレンはホッとしたのか、教室に戻って操り人形の倒れ込むようにして椅子に座った。そして小さくガッツポーズをしてコバルトから借りた服を隠すようにして着込んだ。コバルトは、1人自販機の近くにある椅子に座っていた。フラーレンの水着姿やさっきの出来事を見てしまったコバルトは流石にどう対処すればよかったのか悔いた。
「僕もまだまだ男としてダメだな…。ちゃんとしないとフラーレンのこと守れないからもっともっとしっかりしないと!」
 フラーレンはルンルンとして帰宅した後、コバルトにプレゼントするものを探した。そして時は過ぎて寒い風が吹き込む中、コバルトの誕生日前夜になった。コバルトの家族はケーキを用意しては楽しんだ。
「こりゃ大きいな…でも、お父さんの健康的思考での糖質制限ケーキだから体に良いしもっともっと頑張らなきゃ」
 コバルトは来年から始まる受験に対して意気込んだ。そして翌日、コバルトはフラーレンの家へ向かった。フラーレンは寒さに弱く、いつも自分で編んだコバルト色のセーターを着ている。パスカル中学高等学校へ入る前に選んでもらったのがコバルトだった。インターホンが鳴り響くと、フラーレンは玄関へと向かった。そこには大きな手提げ袋を持ったコバルトがフラーレンの前に現れた。
「色々とあったけど今日は本当にありがとう」
「全然問題ないよ!外寒いから早速だけど家の中へ入って…」
 2人はフラーレンの部屋へ入ると、ルートが暖かい飲み物を渡してくれた。
「コバルト君今日はうちのフラーレンのワガママに付き合ってくれてありがとうね!外寒かったでしょ?紅茶を淹れたから良かったら…」
 コバルトが家に入ったと同時に窓の外は吹雪になっていた。ゆっくりと飲んでいると、フラーレンはとある袋のようなものを取り出してコバルトにプレゼントした。
「夏の思い出を私のために作ってくれて本当にありがとう!これは私からコバルトへの冬の思い出をプレゼントします」
 手渡された袋の中身は手編みのマフラーとニット帽のフラーレンとのお揃いだった。
「これはとても暖かいね!本当にありがとうってよく見たらフラーレンのセーター僕の名前にちなんでコバルト色だね。とても可愛い」
 コバルトの喜ぶ顔を見てフラーレンの心は天に舞うかのような感情で嬉しそうだった。そして、大きな袋を持ってきたコバルトも中身を取り出してフラーレンに渡した。
「これは僕からだけど、もうすぐ聖夜の夜を迎えるから一緒にどうかな?ケーキだけど僕の家は糖質を制限されたものばかりで隠れて食べるにしても怒られるの嫌だからフラーレンとルートさんで一緒に食べよう」
 そのケーキは全部で4層に分かれていて、バニラの層と苺の層、そしてチョコレートの層に抹茶の層とバラエティ豊かなものだった。フラーレンは甘いものがとても好きなのに対して、コバルトは健康に気を遣うように言われて多くは食べれないらしい。でも、今日だけは一緒に食べようと心に決めて持ってきたという。
「じゃ、ルートさんのいる部屋へ持って行ってみんなで食べよう!」
 コバルトとフラーレンはルートのいるリビングへケーキを運んだ。ルートはそのケーキを見て驚いていた。
「あら、これはまたすごいケーキだね!事情は分かった。みんなで食べましょ!」
 切り分けたケーキは綺麗な色で談笑しながら食べた。美味しく食べた後、フラーレンと部屋に戻りまた楽しく話をしながら2人でハマっていたゲーム、ケミカルラボをしながら2人の小さく甘酸っぱいおうちデートが終わった。
「それじゃ、もう帰らないといけないからフラーレンが編んでくれたマフラーとニット帽かぶっていこうかな。温めてくれると思って…」
 早速使ってくれたことにフラーレンは嬉しそうに笑った。
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