涙をそそぐ君へ

15話

「､､､えっ」
「ふふっ。駿も嘘つくの下手だなー、分かってるくせに。あの女の人と同じだね」

カラカラと乾いた笑み。本心ではないのは、明らかだ。

「僕がよそ見をしていたのが悪かったんだ。あのとき、親戚がやってくるって知って大急ぎで駅に向かっていたんだ。駿を轢いて、僕も道路に投げ出されて､､､見たよ。女の人が駆け寄っているのを」

柚が駿の元へ駆け寄り、必死で声をかけていた姿を。泣きながら叫んでいたことを。

「色々済んで､､､僕も精神不安定になって、うつになったんだ。人を殺した罪悪感もあったし、そのせいで親にも迷惑をかけたから。唯一覚えているのは、あの女の人ー本条さんの元へ謝罪に行ったときかな」
「柚のところに行ったのか」
「僕が一番謝るべき人だと思ったんだ。本条さんはずっと笑顔を浮かべていたけれど、許したとは言ってくれたけど、本条さんは､､､僕よりも闇にいるように感じたんだ。､､､それで、まぁ、自殺？」

手で輪っかをつくり、それに首を入れる仕草をしてみせた。

「柚に会ったのか､､､。それと、俺は港希を恨んでいるわけじゃ、ない」
「そうなの？」
「あぁ。どうせ人は死ぬんだし、起きたことを悔やんでも仕方ないじゃないか。､､､後のことは、港希じゃなくて、俺が考えるべき問題だ」

柚のことを忘れる危険を犯すか、このまま調魂師として生き続けるか。頭を抱えた駿に、港希はふと、もらす。

「忘れるにしても、やってからの方がいいんじゃない？あ、僕が言えることじゃないけど。でも、本条さんのなかで駿が生きている。駿自身が忘れても、いなくなっても、本条さんは､､､」
「覚え続けてくれる､､､か」

駿は体の力が抜けていくのが分かった。
こんなに簡単なことに、気が付かなかっただなんて。

「ありがとう港希。大切なことに気がつけた」
「は、はぁ」
「じゃ、また明日！」

自室に戻っていく駿。

「､､､命を奪った張本人に、お礼を言う人もいるんだ」