涙をそそぐ君へ

14話

市名京介に呼び出されたのは、それから間もなくだった。もちろん、何に対してかも薄々想像がついている。

「､､､調魂師としても、しっかり励んでいるらしいじゃないか。偉い」
「ありがとうございます。ですが、褒めるためだけに呼び出しなんかしないですよね」
「そうだな､､､。調魂師として現うつつの世界に下りること自体が特別だということは、理解しているだろう。特別な力を持つからこそ、平等に力を注ぐべきであるということも。､､､そう、個人のためにつかうべきではない」

心が痛む。そんなこと、分かっている。分かっているから、痛むのだ。

「君が一人のためだけに力を使うのであれば、最悪の場合、記憶が消される」
「俺の？」

それはつまり､､､目的を忘れて、調魂師として存在し続ける､､､ということか。

柚のことを忘れる？
茉夕や港希のことも？
信じられない、冗談じゃない。

「こんなことは言いたくないが､､､やめた方がいい。わざわざ危険な橋を渡るな」
私達はもう、死んでいる。

市名京介は、茉夕と同じ単語を口にした。
が、言の葉に込められた意味は違う。どちらを選ぶべきなのか。それを突きつけられているような気がした。

市名京介の前を辞しても、柚の顔が頭から離れなかった。
泣き声も、姿も､､､。
忘れてたまるものかとさえ、思う。だからといって、ここまで七海が調べてくれているものを諦めることもできない。

「しゅーん」

とんっと肩を叩いてきたのは、港希だ。

なまじあのことを七海から聞いただけに、反応に困ってしまう。

「京介さんから聞いたよ？自分のことについて、調べてるんでしょ？」
「あ、あぁ」
「じゃー僕が加害者っていうことにも、気が付いてた？」