12 / 19
11話
しおりを挟む
「え?」
「私、こんなに幸せになるべきじゃ、ないなって最近思って」
「、、、分かったってこと?」
茉夕は自信なさげながらも「うん」と頷いた。恥ずかしそうに頬が緩む。
「私、ずっと自分がどうして死んだのか、曖昧のままだったの。京介さんはそれを許してくれてたんだけど、病気が死因のようにも思えないし、、、やっぱり何か違和感があってね。それが、この前調魂師の試験を受けたとき、、、会ったのよ。私を殺した友達に。、、、刑務所で」
「殺した?茉夕は、、、殺された?」
頷き。これにも肯定らしい。話しているときの茉夕は、大学生にしか見えなかった。駿の通っていた塾にもこんな感じの人は多くいた。
「相手の子は私を覚えていたし、、、私も薄々見覚えがあって。私が全部話したら、その子思いっきり憎悪を滲ませて言ったんだ。“あんたは葉月を自殺に追いやった!いじめをして嫌がらせをして、耐えきれなくなった葉月は自殺した!だから、あんたを殺したのよ。あんたが罰も受けずにのほほんとしていて、許されるわけがない。地獄に堕ちろ!”って」
茉夕が覚えていなかったということは、故意のいじめではなかったのだろう。だが、会話の中での葉月さん、、、被害者は、その事実にも苦しめられたのだろう。
茉夕はそっと、ため息をついた。
「そう言われたら、全部思い出しちゃってさ。もちろん、刺されるところも。人って死ぬとき、こんなに苦しいんだって」
「あぁ、、、死ぬときの?」
「そう。でもね、逆に考えたら、葉月にも同じ思いをさせてしまったってこと。、、、ね?私、地獄に行くべきなの。加害者であることにも変わりないし、私が苦しめなければあの子が加害者になってしまうこともなかった、、、私は二つの罪を背負わなくてはいけないの」
茉夕は存在していないであろう闇を見ていたように思う。闇も罪も全て一人で受け止めて、消化してしまったのだろう。
「だからね、駿たちと一緒にはいられないの。港希ーーーあの子も、私は好きだった。、、、でも、思い出してからは自殺した葉月と重ねてしまっていたけれど」
港希は被害者、茉夕は加害者。正反対の立場であるはずなのに、ほんのたまゆらでも家族同然になれる。
人の魂とは不思議なものだ。
「駿も、後悔はしないでね。自分のやりたいことくらい、やったほうがいいわ。だって、私たちは死んだんだもの」
もう失うものは、ないでしょう?
「そう、、、だね。茉夕、ありがとう。俺も悩んでたんだ。背中を押してもらった気分だ」
「よかった。一人くらい、幸せにしたいもの。人殺しでも」
無邪気な笑み。本心なのかはわからない。駿は、彼女の役にたてたのならばそれで構わなかった。
茉夕は、市名京介に事情を話した後、姿を消した。
「私、こんなに幸せになるべきじゃ、ないなって最近思って」
「、、、分かったってこと?」
茉夕は自信なさげながらも「うん」と頷いた。恥ずかしそうに頬が緩む。
「私、ずっと自分がどうして死んだのか、曖昧のままだったの。京介さんはそれを許してくれてたんだけど、病気が死因のようにも思えないし、、、やっぱり何か違和感があってね。それが、この前調魂師の試験を受けたとき、、、会ったのよ。私を殺した友達に。、、、刑務所で」
「殺した?茉夕は、、、殺された?」
頷き。これにも肯定らしい。話しているときの茉夕は、大学生にしか見えなかった。駿の通っていた塾にもこんな感じの人は多くいた。
「相手の子は私を覚えていたし、、、私も薄々見覚えがあって。私が全部話したら、その子思いっきり憎悪を滲ませて言ったんだ。“あんたは葉月を自殺に追いやった!いじめをして嫌がらせをして、耐えきれなくなった葉月は自殺した!だから、あんたを殺したのよ。あんたが罰も受けずにのほほんとしていて、許されるわけがない。地獄に堕ちろ!”って」
茉夕が覚えていなかったということは、故意のいじめではなかったのだろう。だが、会話の中での葉月さん、、、被害者は、その事実にも苦しめられたのだろう。
茉夕はそっと、ため息をついた。
「そう言われたら、全部思い出しちゃってさ。もちろん、刺されるところも。人って死ぬとき、こんなに苦しいんだって」
「あぁ、、、死ぬときの?」
「そう。でもね、逆に考えたら、葉月にも同じ思いをさせてしまったってこと。、、、ね?私、地獄に行くべきなの。加害者であることにも変わりないし、私が苦しめなければあの子が加害者になってしまうこともなかった、、、私は二つの罪を背負わなくてはいけないの」
茉夕は存在していないであろう闇を見ていたように思う。闇も罪も全て一人で受け止めて、消化してしまったのだろう。
「だからね、駿たちと一緒にはいられないの。港希ーーーあの子も、私は好きだった。、、、でも、思い出してからは自殺した葉月と重ねてしまっていたけれど」
港希は被害者、茉夕は加害者。正反対の立場であるはずなのに、ほんのたまゆらでも家族同然になれる。
人の魂とは不思議なものだ。
「駿も、後悔はしないでね。自分のやりたいことくらい、やったほうがいいわ。だって、私たちは死んだんだもの」
もう失うものは、ないでしょう?
「そう、、、だね。茉夕、ありがとう。俺も悩んでたんだ。背中を押してもらった気分だ」
「よかった。一人くらい、幸せにしたいもの。人殺しでも」
無邪気な笑み。本心なのかはわからない。駿は、彼女の役にたてたのならばそれで構わなかった。
茉夕は、市名京介に事情を話した後、姿を消した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
余命3年の君が綴った、まだ名前のない物語。
りた。
ライト文芸
余命3年を宣告された高校1年生の橋口里佳。夢である小説家になる為に、必死に物語を綴っている。そんな中で出会った、役者志望の凪良葵大。ひょんなことから自分の書いた小説を演じる彼に惹かれ始め。病気のせいで恋を諦めていた里佳の心境に変化があり⋯。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
流星の徒花
柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。
明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。
残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。
透明人間になった僕と君と彼女と
夏川 流美
ライト文芸
――あぁ、お母さん、お父さん。つまりは僕、透明になってしまったようです……。
*
朝、目が覚めたら、透明人間になっていた。街行く人に無視される中、いよいよ自分の死を疑い出す。しかし天国、はたまた地獄からのお迎えは無く、代わりに出会ったのは、同じ境遇の一人の女性だった。
元気で明るい女性と、何処にでもいる好青年の僕。二人は曖昧な存在のまま、お互いに惹かれていく。
しかし、ある日、僕と女性が目にしてしまった物事をきっかけに、涙の選択を迫られる――
毒の美少女の物語 ~緊急搬送された病院での奇跡の出会い~
エール
ライト文芸
ある夜、俺は花粉症用の点鼻薬と間違えて殺虫剤を鼻の中に噴射してしまい、その結果生死の境をさまようハメに……。ところが緊急搬送された病院で、誤って農薬を飲み入院している美少女と知り合いになり、お互いにラノベ好きと知って意気投合。自分達の『急性薬物中毒』経験を元に共同で、『毒を操る異世界最強主人公』のライトノベルを書き始めるのだが、彼女の容態は少しずつ変化していき……。
行くゼ! 音弧野高校声優部
涼紀龍太朗
ライト文芸
流介と太一の通う私立音弧野高校は勝利と男気を志向するという、時代を三周程遅れたマッチョな男子校。
そんな音弧野高で声優部を作ろうとする流介だったが、基本的にはスポーツ以外の部活は認められていない。しかし流介は、校長に声優部発足を直談判した!
同じ一年生にしてフィギュアスケートの国民的スター・氷堂を巻き込みつつ、果たして太一と流介は声優部を作ることができるのか否か?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる