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8話
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上を見つめていた駿は、視界を誰かの顔面が侵食してきていることに気が付いてた。しかし、なにも動かなかった。自分が現の世界の人に見えるわけがないと、たかをくくっていたからだ。
「ねぇ、無視しないで。どうして寝っ転がってんの?」
「、、、」
「もっ、少年!」
目の前から飛んできた、腹の底からの怒声で、瞬時に起き上がる。これは男子の性だ。
「人の話はちゃんと聞くって教わんなかったの?あたしが知ってる限りの人間は知ってるわ。、、、どうして固まってんの?」
「そりゃ、だって、、、」
おもむろに駿は、少女に手を差しだす。その手を握ろうとした手が、空ぶる。
「あ、幽霊さん?あたし、そういうのよく見える性質なんだよねー。あ、でも今まで見てきたものよりもマシに見えるー。身近にいそうだもの」
「、、、何、見てきたんだ?」
「そりゃー、、、トイレの花子さんとか、音楽室のベートーヴェンとか?肝試しもしたことあるよー」
「出てくるものが幼いな」
トイレの花子さんも、ベートーヴェンも、小学校の七不思議の類だろう。調魂師というのは、それらと同類にされてよいものか。
「ずっと話してたでしょ?あたしの弟と。呪縛霊かと思った」
「冗談じゃない。俺は呪縛霊なんかじゃない」
「わかってるよ。弟ー暁矢のあの顔を見たらね」
駿にむけてくれた笑顔のことだろう。思うところでもあったのだろうか。
「ずっと元気がなかったからね。友達と喧嘩しただけだとは、思わなかったけど」
当たり前のように少女は駿の隣へ落ち着く。透けて見えているであろう駿の身体を踏みつけることもしなかった。
「あたし、すっごい気になるわ。あなたのこと。どうして弟を助けてくれたの?あぁ、もちろんタダでとは言わないけど」
調魂師になったときにもらったカード型の証明証が、熱を持ってきた。仕事が終わっても戻らないことを、言外に咎めているようだ。
(少し待って)
彼女は暁矢の姉。姉弟そろって悩んでいる可能性もあるだろう?そう、証明証に言い聞かせる。
「ねぇ、無視しないで。どうして寝っ転がってんの?」
「、、、」
「もっ、少年!」
目の前から飛んできた、腹の底からの怒声で、瞬時に起き上がる。これは男子の性だ。
「人の話はちゃんと聞くって教わんなかったの?あたしが知ってる限りの人間は知ってるわ。、、、どうして固まってんの?」
「そりゃ、だって、、、」
おもむろに駿は、少女に手を差しだす。その手を握ろうとした手が、空ぶる。
「あ、幽霊さん?あたし、そういうのよく見える性質なんだよねー。あ、でも今まで見てきたものよりもマシに見えるー。身近にいそうだもの」
「、、、何、見てきたんだ?」
「そりゃー、、、トイレの花子さんとか、音楽室のベートーヴェンとか?肝試しもしたことあるよー」
「出てくるものが幼いな」
トイレの花子さんも、ベートーヴェンも、小学校の七不思議の類だろう。調魂師というのは、それらと同類にされてよいものか。
「ずっと話してたでしょ?あたしの弟と。呪縛霊かと思った」
「冗談じゃない。俺は呪縛霊なんかじゃない」
「わかってるよ。弟ー暁矢のあの顔を見たらね」
駿にむけてくれた笑顔のことだろう。思うところでもあったのだろうか。
「ずっと元気がなかったからね。友達と喧嘩しただけだとは、思わなかったけど」
当たり前のように少女は駿の隣へ落ち着く。透けて見えているであろう駿の身体を踏みつけることもしなかった。
「あたし、すっごい気になるわ。あなたのこと。どうして弟を助けてくれたの?あぁ、もちろんタダでとは言わないけど」
調魂師になったときにもらったカード型の証明証が、熱を持ってきた。仕事が終わっても戻らないことを、言外に咎めているようだ。
(少し待って)
彼女は暁矢の姉。姉弟そろって悩んでいる可能性もあるだろう?そう、証明証に言い聞かせる。
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