映る世界を、雨で磨いて

花栗綾乃

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すっかり体調の良くなった月曜日。私は早速、怜へ報告をした。怜は友人の報告に驚くこともなく、「そう」と言っただけだった。

「それでね、お母さんが呪文を教えてくれたの。雨を降らせるやつ。洋也君の役に立つといいけど」

「ま、確実に降るんなら役立つでしょ。頼まれたのはそれだけ?」

「うん。休日に雨を降らせて、練習をつぶしてほしいって」

私の心には、あの時の高揚が蘇ってくるかのようだった。怜はやや呆れたように息をついていた。だが、彼女の瞳の奥には母に似た安堵の色が浮かんでいた。

その日の昼休みでも、洋也はサッカーをしていた。いつもはカッコいいとだけ思っていたのだが、これからは違うだろう。なぜなら彼は、サッカーが好きではないから。それこそ、付き合いのためにやっているだけなのだろう。

真正面から思いを受け取ってしまったため、いたたまれない気持ちになる。

「、、、ったく、蒼依もとことん王道だね」

「王道?」

「なんでもないよ。それより、土曜を日曜が埋まるってことよね」

「あ、うん。でも、午前中だけだよ」

午後は何もすることないよ。そうだ、昼とか食べに行く?と怜に提案する。怜はしみじみと頷いていた。

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