映る世界を、雨で磨いて

花栗綾乃

文字の大きさ
上 下
3 / 16

2

しおりを挟む
よく、「私、雨女なんで」や、「晴れ男は俺だ!」というのは聞いたことがあると思うのだ。私もその類だが、桁が違う。

私は、九割九分九厘の確率で降るのは当たり前。楽しみに思えば思うほど雨は強くなり、豪雨を招いてしまう女。

実はこの力、私だけでなく、かつて祖母や母も持っていた力なのだ。が今、二人には雨女の力はなく、晴れの日の外出を楽しんでいる。

私は羨ましくてたまらない。日光を浴びて外出をしたい。

「っていうか、そんなに好きなら、試合に押しかける?」

「そうしたいとこなんだけどさーっ。私が行ったら」

「、、、ゲリラ豪雨確定演出だね」

私たちの学校では、試合観戦に行くことは許可されている。暇な生徒や部員の友人などは、よく足を運んでいる。

私は行ったことがない。

というのも、私が行けば雨が降るからだ。サッカーは雨でも決行するケースが多いが、それは小雨や普通の雨だったら、の話である。

好いている人が出場している試合なのだから、ドキドキもするだろうし、ワクワクもするに決まっている。ゲリラ豪雨のフラグ立ちまくりなのだ。

いくら気象予報士が晴れだと予報を出しても、こればかりは無駄である。

「私のせいで試合がつぶれたら申し訳ないし、、、。サッカーやってる洋也君、カッコいいし、、、」

「ふうん?」

「だから、、、行ってないし、行けない」

ため息をつく。恋というものはこうも人の心にダメージを与えるものなのか。それとも、私の想いが重すぎるのであろうか。

怜が何かを呟く。そして、おもむろに窓の外へ手を出した。

まるっこい雨音。

これは、やらかしてしまったようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件

石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」 隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。 紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。 「ねえ、もっと凄いことしようよ」 そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。 表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

トレンチコートと、願いごと

花栗綾乃
ライト文芸
私のちっぽけな殻を破ってくれたのは、ふらりとやってきた訪問者だったー。 冬休み。部屋に閉じこもっていた実波は、ふらりとやってきた伯母の瑞穂と再会する。 そんな数週間の、記録。

タダで済むと思うな

美凪ましろ
ライト文芸
 フルタイムで働きながらワンオペで子育てをし、夫のケアもしていた井口虹子は、結婚十六年目のある夜、限界を迎える。  ――よし、決めた。  我慢するのは止めだ止め。  家族のために粉骨砕身頑張っていた自分。これからは自分のために生きる!  そう決めた虹子が企てた夫への復讐とは。 ■十八歳以下の男女の性行為があります。

処理中です...