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第十五話
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「帰るなら帰るって、二日前に言ってくれればよかったのに」
「えぇ?また、姉さんがグチグチ言うじゃん」
「お土産、買ってきてあげようと思ったのになぁ。瑞穂のために」
「うそでしょ!」
大きめのカバンとスーツケースを車に詰め込んだ瑞さんは、相変わらず母と言い合っていた。今考えてみると、姉妹の絆に裏打ちされた言い合いなのだろう。
今更、瑞さんがいなくなることに、寂しさを覚える。初詣に行ったその日に「明日、出るよ」と言ったのだ。荷物まとめを手伝っているうちに、出発の時刻になっていた。
「じゃ、最後に実波ちゃんにプレゼントを」
赤いリボンと白い袋で包装されていた。なるべく破くことのないように、ゆっくり取り出す。
「え」
「ずっと去年から持ってたんだけどね。せっかく昨日、その話もしたわけだしチャンスだ、って。あげるよ」
瑞さんが私に贈ったのは、瑞さんと型の同じ、トレンチコート。今の私とっては、やや大きいサイズかもしれない。薄めのグレー。
「ありがとうございます」
「いーのいーの。じゃ、バイバイ!」
激しく車のドアが閉まる音。エンジンがかかる音。意外にも軽めな音がする。
見えなくなるまで手を振り、おもむろにトレンチコートをはおる。
余った端が、風にもまれてバタバタとわめく。
「似合っているわ」
母の呟きが、耳のそばでさらり、と響いた。
「えぇ?また、姉さんがグチグチ言うじゃん」
「お土産、買ってきてあげようと思ったのになぁ。瑞穂のために」
「うそでしょ!」
大きめのカバンとスーツケースを車に詰め込んだ瑞さんは、相変わらず母と言い合っていた。今考えてみると、姉妹の絆に裏打ちされた言い合いなのだろう。
今更、瑞さんがいなくなることに、寂しさを覚える。初詣に行ったその日に「明日、出るよ」と言ったのだ。荷物まとめを手伝っているうちに、出発の時刻になっていた。
「じゃ、最後に実波ちゃんにプレゼントを」
赤いリボンと白い袋で包装されていた。なるべく破くことのないように、ゆっくり取り出す。
「え」
「ずっと去年から持ってたんだけどね。せっかく昨日、その話もしたわけだしチャンスだ、って。あげるよ」
瑞さんが私に贈ったのは、瑞さんと型の同じ、トレンチコート。今の私とっては、やや大きいサイズかもしれない。薄めのグレー。
「ありがとうございます」
「いーのいーの。じゃ、バイバイ!」
激しく車のドアが閉まる音。エンジンがかかる音。意外にも軽めな音がする。
見えなくなるまで手を振り、おもむろにトレンチコートをはおる。
余った端が、風にもまれてバタバタとわめく。
「似合っているわ」
母の呟きが、耳のそばでさらり、と響いた。
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