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第十三話

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「、、、これ?」

「、、、はい。春とか秋とかに着るんなら分かるんですけど、、、真冬にそのコートじゃ、寒くないのかなって。あとは、傷ひとつないから、大事にしている理由があるのかな、と」

癖で敬語になる。

瑞さんは一瞬、口をへの字に曲げたが、観念したのか、自虐気味に笑った。

「実波ちゃんは探偵みたい。姉さんでも聞いてこなかったんだけど。まぁ、いいや。せっかく一ヶ月も居候させてもらってるし。実波ちゃんには、理由わけを話そう」

が強調されているところから察するに、それとなく理由を作ってやり過ごしてきたのだろう。勿論、私にも嘘をつく可能性はある。

でも、私は確信していた。

瑞さんは本当のことをしゃべってくれると。今の私なら、人の思い出話を聞く資格も素質もあるはずだ。

今の私なら、瑞さんと並んで話せる。

「このコートは、元々わたしの父さんからもらったの。実波ちゃんからしたら、お祖父じいさん、、、かな」

「もらいものなんですか」

「昔のわたしにも、今のわたしにも、こんなの買う財力はないわよ。もらったのが十代後半。、、、わたしも、実波ちゃんみたいに不登校になってた」

、、、私は信じられなかった。人の気持ちに寄り添って、アドバイスもできる人が、不登校になるのか、と。
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