トレンチコートと、願いごと

花栗綾乃

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第十一話

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「ただいま」

バイトから帰ってきたばかりの瑞さんは、いつものトレンチコートをはおっていた。

「おかえり」

「行かなくていいの?」

瑞さんは、主語を言わなかった。

「うん。結果オーライ、スケートリンクに行けるのなら、一石二鳥」

「一石二鳥ってことは、他のご友人と行くってこと?」

「それも、違う」

緑茶を湯呑みに注ぐ瑞さんに、言った。

「私と二人で初詣、行ってくれませんか」

「、、、へっ?」

想定外だったのか、瑞さんの間抜けな声が漂った。私は、笑いそうにになるのを寸前で止めながら頷く。瑞さんの手元で、緑茶が湯呑みをのりこえ。こぼれていた。だが、私は気がつかないふりをして、瑞さんに近づく。

「可愛い姪の、お願いですよ?」

「、、、自分で言うのね」

小声のツッコミを、照れ笑いでごまかす。私なりの、必死の冗談だった。

「もちろん。実波ちゃんと行けるなら、嬉しいよ」

同年代の友人のように、瑞さんは体を揺らす。淡色のトレンチコートが弾んだ。
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