トレンチコートと、願いごと

花栗綾乃

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第九話

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「人生の長さは、白紙ページ数のようなものだと思うの。寿命には抗えない。だから、枚数が決まっているということね。でも、どのような字体で、大きさで、間隔で、文章を書くのかは自分次第。で、死んだ後に残った本が、結局回顧録として存在することになる。、、、それが、人生。わたしはそう考えているかな」

瑞さんは、私の見たことがある限り一番真剣な顔をしていた。

「、、、しっかりとした意見、、、ですね」

「なによ、それ。それじゃ、いつもわたしがしっかりしてないみたいじゃない。これでもわたしは全国回っているんですからね。人の何倍も善悪は見てきているわ」

私がいらないと言った小物入れが、ゴミ袋に吸い込まれていく。サイズが小さくなった服が、畳まれ縮んでいく。

「、、、ありがとうございます」

夕方。ようやく終わった部屋の片づけ。すっかり物の少なくなった自室。本棚にはコミックもしっかり入っている。瑞さんのくれたイヤリングを置くための、ガラスの小皿はとっておいた。

私の口からもれていた感謝の言葉。瑞さんは軽く目を見開き、満足げに言った。

「よし」
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