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第七話
しおりを挟む「いいね、いいねー、、、っていうか、昨日、わたしがキツイこと言ったから?泣かせるつもりじゃなかったんだけど」
私は気がついた。
瑞さんは、自分が認めていない限り、謝罪の言葉を口にしないことに。
今も、泣かせてしまったことに対しては申し訳なさそうにしているが、私に言ったことに対しての謝罪はない。瑞さんのなかでは、発言すべきであったという絶対的な自信があるのだろう。私のためには、必要な慟哭であったと。
私もそう思う。
「あの、瑞さんの力を借りたいことがあって」
「何?何?面白い?」
「私の部屋の片づけを手伝って欲しいんですけど、、、」
「オーケーオーケー!楽しそうじゃん!」
、、、ノリが軽いが、大丈夫なのだろうか。
母は仕事に出ていた。昼間はよくパートにいっている。
手慣れた手つきでゴミ袋を持ってきた瑞さんは、一目見て「重病だよ。やっぱ」と言った。
部屋の窓を全開にして、カーテンを一つにまとめる。本は、文庫本、コミックなどに分別しておく。
瑞さんは作業中、スマホでラジオをかけていた。私にも聞こえてくる。全く存じ上げないパーソナリティの、フランスパンの話や、リスナーの感謝の言葉、人生相談、、、などなど、めっきりラジオを聞いていなかったのもあり、とても面白かった。
「ラジオはいいよねー。生の生活って感じでさ。行くところによって全く内容も違うしね」
瑞さんが、窓レールを拭きながら言った。
「瑞さんは、どうして各地を転々としているんですか」
「え、言ってなかったっけ。なんだと思う?」
「、、、うーん。車が好きだから?」
停車されている軽自動車をチラ見しながら、言ってみる。しかし瑞さんは「いや、違うね」と言った。
「どこかに留まるのが嫌いだから、、、かな。それと、せっかく日本っていう狭い国に住んでるんだし、一周したら面白そうだなって」
「どうやって収入を得てるんですか。まさか、借金」
「んなバカな。そこまではいってないよ。行った先々でバイトを探して、食ってってるの。日銭暮らしみたいなもんかな」
「バイト、、、」
「あ、実波ちゃんもやりたかったら、やってみるといいよ?今の時代、すぐに日銭バイトに入れるアプリもあるし、ビジネスホテルもあるし、優しい人もいるし。それなりに楽しいよ」
「でも、、、今後のこととか、考えないんですか」
「うーん。わたしは結婚する気、ないしなー」
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