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第五話
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「口に出した、、、数、、、」
「言葉の重みが変わるの。口に出された言葉には、事実にしてしまう力があるの。その力がなくなるのがひとつ。そして、事実となったとき、心が汚されて、固まっていくの。、、、実波ちゃんの場合は、もっとダメ」
私は、思わず身じろぎをした。心の奥底に隠していたもの全てを、見透かされているような心地がする。
「実波ちゃんの申し訳ないっていう気持ちは、確かに素晴らしいよ。悔いることもね。でも、本当に大事なのは、そこからの出発ってこと、忘れないで。悔いるだけじゃ、何も生まれない。自分自身を誇れたほうが、素敵だよ」
瑞さんは私を責めてはいなかった。苛立ってもいない。ただ、アドバイスをしてくれていた。姪への愛のそれだ。
十割愛から言ってくれているアドバイスなんて、この世に存在するのだと驚いた。
絹ごしどうふをほろほろ崩していくように、私は自分のナニカが溶けていくのがわかった。
「実波ちゃん?泣いてるの?」
視界の隅で瑞さんがオロオロしている。泣かせたと思っているかもしれない。
「タ、タオル?いや、えっと」
「いかないで」
瑞さんの寝巻きを掴む。私自身が想定していたよりも強い力がでた。瑞さんの動きが止まる。
「行かないで、、、ください。そばにいて。、、、ください」
恥ずかしいことを言ったかもしれないと思った。それでも、瑞さんは私の背に腕を回し、壊れかけの心もろとも包み込んでくれた。
「わたしはここにいるよ。大丈夫。泣いちゃいな。顔なんて、見ないから」
こぼれ落ちた涙がどこへ行きついたのかは、分からない。
「言葉の重みが変わるの。口に出された言葉には、事実にしてしまう力があるの。その力がなくなるのがひとつ。そして、事実となったとき、心が汚されて、固まっていくの。、、、実波ちゃんの場合は、もっとダメ」
私は、思わず身じろぎをした。心の奥底に隠していたもの全てを、見透かされているような心地がする。
「実波ちゃんの申し訳ないっていう気持ちは、確かに素晴らしいよ。悔いることもね。でも、本当に大事なのは、そこからの出発ってこと、忘れないで。悔いるだけじゃ、何も生まれない。自分自身を誇れたほうが、素敵だよ」
瑞さんは私を責めてはいなかった。苛立ってもいない。ただ、アドバイスをしてくれていた。姪への愛のそれだ。
十割愛から言ってくれているアドバイスなんて、この世に存在するのだと驚いた。
絹ごしどうふをほろほろ崩していくように、私は自分のナニカが溶けていくのがわかった。
「実波ちゃん?泣いてるの?」
視界の隅で瑞さんがオロオロしている。泣かせたと思っているかもしれない。
「タ、タオル?いや、えっと」
「いかないで」
瑞さんの寝巻きを掴む。私自身が想定していたよりも強い力がでた。瑞さんの動きが止まる。
「行かないで、、、ください。そばにいて。、、、ください」
恥ずかしいことを言ったかもしれないと思った。それでも、瑞さんは私の背に腕を回し、壊れかけの心もろとも包み込んでくれた。
「わたしはここにいるよ。大丈夫。泣いちゃいな。顔なんて、見ないから」
こぼれ落ちた涙がどこへ行きついたのかは、分からない。
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