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第四話

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「でね、実波ちゃんにお土産」

来たときと変わらない格好の瑞さんとは違い、私は風呂を済ませ、ソファーでボッとしていた。瑞さんは私の手のひらに、小さなイヤリングを置いた。軽く揺らしてみると、ついている小鈴が、チリチリと音をたてた。

「どうして、イヤリング?」

「うーんと、最初に会ったとき、わたしのイヤリング見つめてたからさ。てっきり、欲しいのかなって。勝手に考えちゃってたんだけど」

そういえば、ずっと観察はしていた。今更、赤面する。

「ま、叔母さんからのささやかなプレゼントってことでね。ー姉さん、風呂入っていい?」

瑞さんは、玄関に置いてあった大きなカバンを手に、洗面所へ向かう。

私は午後九時になると、リビングから姿を消す。自室にこもり、眠気が来るのを待つのだが、今日はそうもいかない。

「うーん。どこに敷けばいい?」

「すみません、、、」

瑞さんの分の布団は用意できたものの、それを敷く場所が自室になかったのだ。

原因は明快。私が整理整頓はおろか、掃除に疎いのである。本は重ねられ積み上げられているし、紙も散らばっている。ほこりが舞い上がるのも、時間の問題。

「おし。じゃ、片付ければいいんじゃない?」

「今ですか」

「勿論。わたしも寝たいし」

瑞さんはおもむろに一冊、本を手に取った。小五のときに買った、漫画だ。

「へー。こういうジャンルが好きなんだね。可愛い」

「すみません、、、」

平謝りの私に、瑞さんはそっと、動きを止めた。

「どうして謝るの?」

私に対する疑問でありながら、不思議と独り言に聞こえた。例えるとするのなら、葉のこずえのような、鳥の羽ばたく音のような。

「あのね、実波ちゃん。あんまり説教くさいことは言いたくないけど、これだけは言う。聞くかは実波ちゃん次第」

静寂が包んだ室内。私の瞳を捉えたまま離そうとしない、瑞さんの目。

「謝罪、自己卑下は、口に出した数だけ言葉の価値を失って、心を汚していくよ」

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