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第二話

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「、、、それで、どうしておばさんが来たの」

「えーっと」

「っていうか、どうしてノックもなしに、私の部屋に、、、」

「ゴメン。それは謝ります」

しゅんとこうべを垂れた瑞穂さんは、いかにも叱られている犬のようだった。

私は、向かい合いながら、まじまじと叔母を観察していた。

「、、、おばさんって、いつぶり?」

「四年、、、かな。まだ、実波ちゃんが小四か、小五のとき。いやー大きくなったよね。あんなに小さかったのにさー」

瑞穂さんは、イヤリングを揺らしてほほえんだ。さっきの幼子のような表情との差が大きく、私は正直、戸惑ってしまう。

「おばさん」

「あ。実波ちゃん、言うの忘れてたけど、おばさんはやめて。まだまだわたしは三十二よ?瑞穂さんか、瑞ちゃんか、瑞さんで」

「選択肢、多くないですか」

「変わんないって。じゃ、どうぞ」

「、、、瑞さん」

「いいね!それにしよう。、、、それで?」

瑞穂さん改め、瑞さんは、私に質問を促した。

「どうして来たんですか。お母さんには言ったんですか」

「どうしても、こうしても、、、。年越しが近いのもあるけど、冬は車中泊が怖いし。せっかくここまで来たんだから、寄るのも一興かなって。、、、姉さんには昨日言ったけど」

「昨日?」

「だって、わたしにはここしか帰る家はないし。実家に帰るのに、予約はいらないでしょ」

あっけらかんと言い放った。ここが、私の母、華穂かほとの違いだろう。母は、瑞さんの姉にあたる。

母はしっかり者で、いつも気を張っている。それに対し、瑞さんは楽天的で、“明日は明日の風が吹く”を体現しているような人だ。私は、瑞さんと話す機会も少なかったから、詳しくどういった人物なのかは、分からない。

ただ、母と瑞さんの実家は既になく、身を寄せる家が母と私の住む、この家しかないのは、事実だ。

「瑞穂!あんた、また実波の邪魔をして!」

母がエプロン姿で乗り込んでくる。私は思わず息を呑む。母の声が耳の中で反響する。母に対し瑞さんは、態度を変えることもなく、「邪魔してないよ」と反論する。

「本当に邪魔なら、雰囲気からして嫌悪が滲んでくるけど、それもないもん。いくら叔母でも追い出そうとするでしょ。わたしのことは、入れてくれたからね」
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