トレンチコートと、願いごと

花栗綾乃

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第一話

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その人は、私の冬休みにやってきた。

パラパラと雪の降る朝、母はいつもよりも気だるげだった。

「ったく、あの子ったら、、、。どうして先に言わないのよ、、、」

やがて、玄関扉の前が、ポッと明るくなった。バックで家に近寄ってきたのは、丸いルックスの軽自動車。

実波みなみーっ」

「、、、」

「聞いてるの?」

「、、、」

後には、誰の言葉も続かない。母が折れるからだ。私は自室で、手にシャープペンシルを持っていたし、テキストもやっていた。勉強を中断したくなかったし、母とも会いたくなかった。

もっと言えば、誰とも会いたくなかった。

しばらくすると、階段を登ってくる音がし始めた。母とは違う。母よりも軽い足音だ。

ドアの鍵をかけるのを忘れていたため、勢いよくドアが開けられる。

「ひっさしぶりー。実波ちゃん!」

大人にしては高めの声と、子供のような口調。

「、、、瑞穂みずほおばさん」

ドアから顔を覗かせたのは、叔母の瑞穂だった。
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