42 / 46
第3章. 親が子に、子が親に捧げる日々
42. 正義の騎士団長との一騎討ち
しおりを挟む
「我が君ヴァレリア陛下から授かったエレスリンネの力、その眩い輝きをお見せしよう」
ヴァルトが俺に向かって鞘に入ったままのエレスリンネを振り下ろすと衝撃波が地面を切り裂いた。レクロマはそれを跳び上がって避けた。
うぉっ……危ない。
「レクロマ……あの攻撃、魔法じゃないよ。魔力の動きが見えない。それに、信頼の……深い青色」
シアの言葉が頭に響いた。
裂け目は底が見えないほど深い。あんな斬撃が魔法じゃないなんて……騎士団長っていうのも伊達じゃないな。
カミツレのメンバーも騎士団員たち一瞬驚いて見せたが、武器を構えて飛び出した。エリネは戦うつもりも無さそうにそのまま立って見ている。
ヴァルトが左手を上に伸ばすと、半球状の結界が広がっていった。結界は騎士団員もカミツレのメンバーも押し退けて拡大していく。それなのに、レクロマだけはすり抜けて中に入れた。
結界は数百メートルまで拡大したとこで動きを止めた。
「陛下のため、そして騎士団長としての名誉のために、力を示す時が来た。レクロマ・セルース、一騎討ちを受けて立つか?」
「受けないっていう選択肢があるのか? どうせ出れないようになっているんだろ」
「当然のことだ。拒むならば、この場で討ち取るまで。セルナスト陛下の偉大な愛国心を理解できぬ反逆者に、この国で生きる価値などないのだからな」
ヴァルトは両手を広げて天を仰いでいる。
爽やかな好青年なのにすごく残念な奴だな。能力も肩書きもあるのに……
ヴァルトは天を仰いだまま、瞳だけを動かしてレクロマを見下ろした。
「その剣、アングレディシアをいただく」
「狂信者が……渡すわけないだろ。あんたにも国王にもシアの価値は分からない」
ヴァルトは、エレスリンネを鞘に入れたまま持っている。
「覚悟するがいい、レクロマ・セルース」
「俺にとってはカミツレはどうだっていい。シアを奪おうとするなら殺す」
レクロマはシアを振るって体の周囲に無数の氷柱を纏う。そして、体を反らして背中から4枚の翼を顕現した。
「もう準備はできたかい?」
これが騎士道精神か。レディファーストの精神は持ち合わせていないようだが。
「出来てるよ」
「では、始めようか」
ヴァルトが水平に左手を振るうと、薄い魔力の膜が水平に広がり、レクロマの首を狙った。その膜は、薄いながらも鋭く光っている。
レクロマは飛び上がり、膜を避けた。そのまま左手を伸ばすと氷柱は円形に並んでレクロマの周りを廻りだした。
「死ね!」
レクロマが左手を握ると、氷柱がヴァルトに向かって飛び出した。同時にシアを円形に振るって円状の雷撃を飛ばした。その雷撃は球状になり、収縮を始めた。
====================
アリジスは騎士団員と戦いながらレクロマの動きを見ていた。
「あれは、私が使った技か……若さか、意欲か、素晴らしい成長性だな」
アリジスは力ない攻撃を受け止めながら、それを弾き飛ばす。
「それより、自分から攻めてきたはずなのに、騎士団員にやる気も強さも感じられない」
「10日間毎日歩き回って、戦うって言われてもやる気なんて感じられるはずがないだろうが」
「やる気のある上司の下に付くと大変だな」
「分かるか、あんたも」
騎士団員の一人は敵を相手取っているにも関わらず、同志に出会えたという喜びを感じていた。
「分からないな。我々は有志が集まった組織なんだ。どれだけ休みを与えても、誰もが自己研鑽に励んでいる。我々は皆誰かのために戦っているんだ」
アリジスはそう言いながら太刀を胸部に突き刺した。
「一緒にするなよ」
騎士団員の一人は絶望とも疑念とも取れるような表情をした。
「やるなら……スッパリ……やって……くれ……」
騎士団員の一人はゆっくりとアリジスに向かって手を伸ばした。
「あぁ……大人しくしろよ」
アリジスは太刀を振り下ろし、首をスッと切り落とした。
それでも緑髪の少女は気にもしないようにじっとヴァルトを見つめている。
「待機……観戦……勝利……」
後ろから近づいて来たカミツレのメンバーの一人には、顔面に一発だけ殴打を喰らわせてそのままヴァルトを見つめ続ける。
ヴァルトが俺に向かって鞘に入ったままのエレスリンネを振り下ろすと衝撃波が地面を切り裂いた。レクロマはそれを跳び上がって避けた。
うぉっ……危ない。
「レクロマ……あの攻撃、魔法じゃないよ。魔力の動きが見えない。それに、信頼の……深い青色」
シアの言葉が頭に響いた。
裂け目は底が見えないほど深い。あんな斬撃が魔法じゃないなんて……騎士団長っていうのも伊達じゃないな。
カミツレのメンバーも騎士団員たち一瞬驚いて見せたが、武器を構えて飛び出した。エリネは戦うつもりも無さそうにそのまま立って見ている。
ヴァルトが左手を上に伸ばすと、半球状の結界が広がっていった。結界は騎士団員もカミツレのメンバーも押し退けて拡大していく。それなのに、レクロマだけはすり抜けて中に入れた。
結界は数百メートルまで拡大したとこで動きを止めた。
「陛下のため、そして騎士団長としての名誉のために、力を示す時が来た。レクロマ・セルース、一騎討ちを受けて立つか?」
「受けないっていう選択肢があるのか? どうせ出れないようになっているんだろ」
「当然のことだ。拒むならば、この場で討ち取るまで。セルナスト陛下の偉大な愛国心を理解できぬ反逆者に、この国で生きる価値などないのだからな」
ヴァルトは両手を広げて天を仰いでいる。
爽やかな好青年なのにすごく残念な奴だな。能力も肩書きもあるのに……
ヴァルトは天を仰いだまま、瞳だけを動かしてレクロマを見下ろした。
「その剣、アングレディシアをいただく」
「狂信者が……渡すわけないだろ。あんたにも国王にもシアの価値は分からない」
ヴァルトは、エレスリンネを鞘に入れたまま持っている。
「覚悟するがいい、レクロマ・セルース」
「俺にとってはカミツレはどうだっていい。シアを奪おうとするなら殺す」
レクロマはシアを振るって体の周囲に無数の氷柱を纏う。そして、体を反らして背中から4枚の翼を顕現した。
「もう準備はできたかい?」
これが騎士道精神か。レディファーストの精神は持ち合わせていないようだが。
「出来てるよ」
「では、始めようか」
ヴァルトが水平に左手を振るうと、薄い魔力の膜が水平に広がり、レクロマの首を狙った。その膜は、薄いながらも鋭く光っている。
レクロマは飛び上がり、膜を避けた。そのまま左手を伸ばすと氷柱は円形に並んでレクロマの周りを廻りだした。
「死ね!」
レクロマが左手を握ると、氷柱がヴァルトに向かって飛び出した。同時にシアを円形に振るって円状の雷撃を飛ばした。その雷撃は球状になり、収縮を始めた。
====================
アリジスは騎士団員と戦いながらレクロマの動きを見ていた。
「あれは、私が使った技か……若さか、意欲か、素晴らしい成長性だな」
アリジスは力ない攻撃を受け止めながら、それを弾き飛ばす。
「それより、自分から攻めてきたはずなのに、騎士団員にやる気も強さも感じられない」
「10日間毎日歩き回って、戦うって言われてもやる気なんて感じられるはずがないだろうが」
「やる気のある上司の下に付くと大変だな」
「分かるか、あんたも」
騎士団員の一人は敵を相手取っているにも関わらず、同志に出会えたという喜びを感じていた。
「分からないな。我々は有志が集まった組織なんだ。どれだけ休みを与えても、誰もが自己研鑽に励んでいる。我々は皆誰かのために戦っているんだ」
アリジスはそう言いながら太刀を胸部に突き刺した。
「一緒にするなよ」
騎士団員の一人は絶望とも疑念とも取れるような表情をした。
「やるなら……スッパリ……やって……くれ……」
騎士団員の一人はゆっくりとアリジスに向かって手を伸ばした。
「あぁ……大人しくしろよ」
アリジスは太刀を振り下ろし、首をスッと切り落とした。
それでも緑髪の少女は気にもしないようにじっとヴァルトを見つめている。
「待機……観戦……勝利……」
後ろから近づいて来たカミツレのメンバーの一人には、顔面に一発だけ殴打を喰らわせてそのままヴァルトを見つめ続ける。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる