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第3章. 親が子に、子が親に捧げる日々
34. 父の心
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手紙を開くと、お母さんの名前が目に入って来た。
────────
リッちょんへ
ヴァルトが高等学院に入学して初めての定期テストで首位を取ったと聞き、遠く離れた場所からでも彼の成長に心からの喜びを感じています。会ったこともない私が父親としての自分を名乗ることがどれほど奇妙なことかは理解していますが、それでもヴァルトを誇りに思わずにはいられません。恥ずかしながら、リッちょんの手紙でヴァルトが首位を取ったと聞いた時には喜びと安堵で涙が溢れてしまいました。
私たちの関係がどのように見えるか、そして私がどのように映るかは重々承知しています。しかし、私の心は常にリッちょんとヴァルトの側にあります。私の不在が彼にどれほどの苦痛を与えているか、そしてリッちょんがどれほどの負担を背負っているか、私には理解が及ばず、お金だけでは解決できないことでしょう。 ヴァルトを守り、彼が立派な若者へと成長するための道を切り開いてくれたことに、深く感謝しています。私の力が及ばないところで、彼のためにしてくれたことすべてに対し、私の尊敬と感謝の気持ちは計り知れません。
ヴァルトが学校で直面している困難について聞いて、私の心は痛みます。彼が私のせいで苦しんでいるという事実は、私にとって耐え難いものです。私は彼に、彼の価値は私の肩書きや過去の行動によって決まるのではなく、彼自身の能力によって決まると伝えたいです。
私はヴァルトが自分自身を信じ、自分の道を歩むことができるように、そして彼が望む未来を手に入れることができるように、遠くからでも支え続けます。彼がどんなに遠くにいても、私の愛と祈りは常に彼と共にあります。 リッちょんとヴァルトに平和と幸福が訪れることを願ってやみません。 永遠にあなたを愛しています。
ヴァレリア・ド・セルナストリア
────────
ヴァルトは震えながら目線を手紙から外す。
「何……これ……」
初めて父親の心に触れた気がした。涙が……溢れてしまいそうだ。こんなできた男が、僕の父親。僕は何を憎んでいたんだ。
でも、生きる意味は分かった気がする。このまま努力して能力を高めていけばきっと殿下に会える。殿下のようになりたい。
私のお金も、命も何もかも殿下から頂いた物。これからはなおさら、何も失うわけにはいかない。失敗はできない。
お母さんのふりをすれば、私でも殿下に手紙が出せる。
手紙を机の上に置き、両手で頬を思い切り叩く。
……だめだ。殿下の手紙の相手はお母さんであって私ではない。殿下の息子としての誇りをもって行動しなければならないんだ。絶対に殿下の恥になることはできない。
====================
18歳になってもヴァルトは必死に努力を続けていた。座学だけでなく、実技でも他を圧倒し続けていた。とにかく自分の能力を高めて自分の父親に近づくことだけを求め続けた。そのために常に無理をして、何度心を壊したことか。だが、全ての考えの根源にあるのは常にヴァレリアのことだった。
首位をキープして高等学院を卒業し、セルナスト王国騎士団に入団した。
「せっかく騎士団に入団したというのに。王族との謁見を許されるのは騎士団の幹部になってからか……。でも、ちょうど良いのかもしれない。もっと力をつけて王子の息子として恥ずかしくない者にならないといけない」
騎士団の訓練場で休憩中に椅子に座った。
「すでに騎士団長に次ぐほどの能力を持っているというのに流石の向上心だな、ヴァルト」
ヴァルトが所属している部隊の小隊長が声をかけて来た。
「ベルノス小隊長」
「きっとお前は簡単に俺を踏み越えて上に登って行ってしまうんだろうな」
====================
ヴァルトが20歳になった年、ヴァレリアは王となった。
さすが私の父親だ。この国を一番に考えてる。この国を統べるにふさわしい。
騎士団の中にもヴァレリアに反発して騎士団を抜ける者もいた。
平和のためと言って国を売ろうとした妹を殺したという噂もあって反対する者も多い。それでも私は陛下を支持するし、私は陛下のためにできることをして陰から支え続けるだけだ。
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リッちょんへ
ヴァルトが高等学院に入学して初めての定期テストで首位を取ったと聞き、遠く離れた場所からでも彼の成長に心からの喜びを感じています。会ったこともない私が父親としての自分を名乗ることがどれほど奇妙なことかは理解していますが、それでもヴァルトを誇りに思わずにはいられません。恥ずかしながら、リッちょんの手紙でヴァルトが首位を取ったと聞いた時には喜びと安堵で涙が溢れてしまいました。
私たちの関係がどのように見えるか、そして私がどのように映るかは重々承知しています。しかし、私の心は常にリッちょんとヴァルトの側にあります。私の不在が彼にどれほどの苦痛を与えているか、そしてリッちょんがどれほどの負担を背負っているか、私には理解が及ばず、お金だけでは解決できないことでしょう。 ヴァルトを守り、彼が立派な若者へと成長するための道を切り開いてくれたことに、深く感謝しています。私の力が及ばないところで、彼のためにしてくれたことすべてに対し、私の尊敬と感謝の気持ちは計り知れません。
ヴァルトが学校で直面している困難について聞いて、私の心は痛みます。彼が私のせいで苦しんでいるという事実は、私にとって耐え難いものです。私は彼に、彼の価値は私の肩書きや過去の行動によって決まるのではなく、彼自身の能力によって決まると伝えたいです。
私はヴァルトが自分自身を信じ、自分の道を歩むことができるように、そして彼が望む未来を手に入れることができるように、遠くからでも支え続けます。彼がどんなに遠くにいても、私の愛と祈りは常に彼と共にあります。 リッちょんとヴァルトに平和と幸福が訪れることを願ってやみません。 永遠にあなたを愛しています。
ヴァレリア・ド・セルナストリア
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ヴァルトは震えながら目線を手紙から外す。
「何……これ……」
初めて父親の心に触れた気がした。涙が……溢れてしまいそうだ。こんなできた男が、僕の父親。僕は何を憎んでいたんだ。
でも、生きる意味は分かった気がする。このまま努力して能力を高めていけばきっと殿下に会える。殿下のようになりたい。
私のお金も、命も何もかも殿下から頂いた物。これからはなおさら、何も失うわけにはいかない。失敗はできない。
お母さんのふりをすれば、私でも殿下に手紙が出せる。
手紙を机の上に置き、両手で頬を思い切り叩く。
……だめだ。殿下の手紙の相手はお母さんであって私ではない。殿下の息子としての誇りをもって行動しなければならないんだ。絶対に殿下の恥になることはできない。
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18歳になってもヴァルトは必死に努力を続けていた。座学だけでなく、実技でも他を圧倒し続けていた。とにかく自分の能力を高めて自分の父親に近づくことだけを求め続けた。そのために常に無理をして、何度心を壊したことか。だが、全ての考えの根源にあるのは常にヴァレリアのことだった。
首位をキープして高等学院を卒業し、セルナスト王国騎士団に入団した。
「せっかく騎士団に入団したというのに。王族との謁見を許されるのは騎士団の幹部になってからか……。でも、ちょうど良いのかもしれない。もっと力をつけて王子の息子として恥ずかしくない者にならないといけない」
騎士団の訓練場で休憩中に椅子に座った。
「すでに騎士団長に次ぐほどの能力を持っているというのに流石の向上心だな、ヴァルト」
ヴァルトが所属している部隊の小隊長が声をかけて来た。
「ベルノス小隊長」
「きっとお前は簡単に俺を踏み越えて上に登って行ってしまうんだろうな」
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ヴァルトが20歳になった年、ヴァレリアは王となった。
さすが私の父親だ。この国を一番に考えてる。この国を統べるにふさわしい。
騎士団の中にもヴァレリアに反発して騎士団を抜ける者もいた。
平和のためと言って国を売ろうとした妹を殺したという噂もあって反対する者も多い。それでも私は陛下を支持するし、私は陛下のためにできることをして陰から支え続けるだけだ。
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