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第2章. 反乱の野心
30. あなたのために私のために
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ドアを閉める瞬間、後ろからレクロマの声が聞こえた気がするけど……。今すぐレティアに言ってやらなければ気が収まらない。
レティアの部屋は一番奥から一つ手前の部屋だったかな。
コンッコンッコンッ……
「シアです。レティアに話したいことがある。入れてもらいたい」
レティアは、レクロマも来ていると思ってすぐに出て来た。レティアは私を部屋に入れてドアを閉じた。
「私のことを紫って呼ばないの珍しいわね。それに、レクロマ君はいないの?」
紫ちゃんなんて呼ぶ気分じゃない。
「あなた、本当に自分のことばかり。相手のことは何も考えていない。自分が欲しいものは相手の気持ちを考えずに手に入れようとする。本当に、セルナスト王族らしいよ」
「いきなり何の話?」
「そういうところ。あなたの言葉でレクロマを深く傷つけたこと、わかってないでしょ」
「そんなわけないでしょ。そんなこと言ってないじゃない」
「あなたは王族だから気を使ってもらってばかりで相手の気持ちなんて気にしたこともないのでしょ。レクロマに、私と手を繋いでいる時だけは身体能力が高いなんて言うのは素のレクロマを否定してるとしか思えない」
レティアはシアの圧力に当てられて椅子にへたり込んだ。
「私は、そんなつもりじゃない。ただ、褒めようとしただけ」
「それはレクロマだってわかってる。でも、あなたの無神経な発言のせいでどれだけレクロマが苦しんでるのかわかる? ずっと酷い色だった。帰って来るまでも、苦悩が重なっていくのが見えた」
レティアは動揺した様子でシアを見つめてくる。
「ごめんなさ──」
「私に謝って何になるの。それに、あなたの言葉が原因ではあるけどあなたが謝って済む話じゃない。レクロマは自分が動けなくて他人に頼りっきりになってることをコンプレックスに感じてる。あの子は活発だけどとっても繊細なの。少し心のしこりに触れるだけで崩れてしまう。部屋を使わせてもらってることには感謝してるけど、もうレクロマに近づかないで。迷惑だから。これが言いたかっただけだから、じゃあね」
====================
レクロマは一人きりの部屋でベッドに横たわっている。
今は泣きたいのか落ち着かせたいのかわからない。自分がわからず声をあげて泣いてみたり深呼吸してみたりする。それでも訳の分からない焦燥は収まらない。
シアのハグが恋しい。その温もりに包まれていたい。
ただひたすらに重い空気がレクロマを押し付ける。
「シアと出会うまではずっと一人だったはずなのに」
シアの気持ちを最優先に考えたいと思っていたのに自分のことしか考えていない自分がいる。気持ち悪い。
コッコッ……小さなノックが聞こえる。
シア! シアが、戻って来てくれたのか。
「こんにちは、コエンです。お昼ご飯をもってきました」
シアじゃないのか……
「どうぞ」
コエンは二人分の料理をトレーに載せて入って来た。
「あれ、レクロマさん、どうしました? こんな時間に横になって。それにシアさんは……」
コエンなりに気を使っているのか涙でぐちゃぐちゃの顔のことには触れてこない。
「何でもないよ、シアは用事があるらしくてどこかに行ってしまった」
「そうなんですか……」
コエンはタオルを濡らして持って来た。
「顔、拭きますね」
「ありがとう」
そういえば、コエンにはシアに似たお姉さんがいたって言ってたな。
「コエンのお姉さんってどんな人だったんだ?」
「優しい人でした。喧嘩なんて一度もしたことなくて、僕はいつも姉の後ろをついて行くだけでした。僕も姉のようになれたら良いなって思っているんですけど、なかなか難しいです」
コエンは呆れたように笑う。
「やっぱり、シアに似てるな」
====================
初めてコエンがご飯を食べさせてくれた。何も問題は無いし、やってることはシアと変わらないはずなのにどこか虚しい。
「ありがとうコエン」
コエンは食事を片付けて椅子に座った。
「シアさんが戻ってくるまでここにいましょうか?」
「いや、いいよ。コエンは好きにしてて」
「分かりました。では、何かありましたらお呼びください」
コエンはトレーを持って部屋を出て行った。
あぁ、部屋が広い。やっぱりコエンにいてもらった方が良かったかな。
レティアの部屋は一番奥から一つ手前の部屋だったかな。
コンッコンッコンッ……
「シアです。レティアに話したいことがある。入れてもらいたい」
レティアは、レクロマも来ていると思ってすぐに出て来た。レティアは私を部屋に入れてドアを閉じた。
「私のことを紫って呼ばないの珍しいわね。それに、レクロマ君はいないの?」
紫ちゃんなんて呼ぶ気分じゃない。
「あなた、本当に自分のことばかり。相手のことは何も考えていない。自分が欲しいものは相手の気持ちを考えずに手に入れようとする。本当に、セルナスト王族らしいよ」
「いきなり何の話?」
「そういうところ。あなたの言葉でレクロマを深く傷つけたこと、わかってないでしょ」
「そんなわけないでしょ。そんなこと言ってないじゃない」
「あなたは王族だから気を使ってもらってばかりで相手の気持ちなんて気にしたこともないのでしょ。レクロマに、私と手を繋いでいる時だけは身体能力が高いなんて言うのは素のレクロマを否定してるとしか思えない」
レティアはシアの圧力に当てられて椅子にへたり込んだ。
「私は、そんなつもりじゃない。ただ、褒めようとしただけ」
「それはレクロマだってわかってる。でも、あなたの無神経な発言のせいでどれだけレクロマが苦しんでるのかわかる? ずっと酷い色だった。帰って来るまでも、苦悩が重なっていくのが見えた」
レティアは動揺した様子でシアを見つめてくる。
「ごめんなさ──」
「私に謝って何になるの。それに、あなたの言葉が原因ではあるけどあなたが謝って済む話じゃない。レクロマは自分が動けなくて他人に頼りっきりになってることをコンプレックスに感じてる。あの子は活発だけどとっても繊細なの。少し心のしこりに触れるだけで崩れてしまう。部屋を使わせてもらってることには感謝してるけど、もうレクロマに近づかないで。迷惑だから。これが言いたかっただけだから、じゃあね」
====================
レクロマは一人きりの部屋でベッドに横たわっている。
今は泣きたいのか落ち着かせたいのかわからない。自分がわからず声をあげて泣いてみたり深呼吸してみたりする。それでも訳の分からない焦燥は収まらない。
シアのハグが恋しい。その温もりに包まれていたい。
ただひたすらに重い空気がレクロマを押し付ける。
「シアと出会うまではずっと一人だったはずなのに」
シアの気持ちを最優先に考えたいと思っていたのに自分のことしか考えていない自分がいる。気持ち悪い。
コッコッ……小さなノックが聞こえる。
シア! シアが、戻って来てくれたのか。
「こんにちは、コエンです。お昼ご飯をもってきました」
シアじゃないのか……
「どうぞ」
コエンは二人分の料理をトレーに載せて入って来た。
「あれ、レクロマさん、どうしました? こんな時間に横になって。それにシアさんは……」
コエンなりに気を使っているのか涙でぐちゃぐちゃの顔のことには触れてこない。
「何でもないよ、シアは用事があるらしくてどこかに行ってしまった」
「そうなんですか……」
コエンはタオルを濡らして持って来た。
「顔、拭きますね」
「ありがとう」
そういえば、コエンにはシアに似たお姉さんがいたって言ってたな。
「コエンのお姉さんってどんな人だったんだ?」
「優しい人でした。喧嘩なんて一度もしたことなくて、僕はいつも姉の後ろをついて行くだけでした。僕も姉のようになれたら良いなって思っているんですけど、なかなか難しいです」
コエンは呆れたように笑う。
「やっぱり、シアに似てるな」
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初めてコエンがご飯を食べさせてくれた。何も問題は無いし、やってることはシアと変わらないはずなのにどこか虚しい。
「ありがとうコエン」
コエンは食事を片付けて椅子に座った。
「シアさんが戻ってくるまでここにいましょうか?」
「いや、いいよ。コエンは好きにしてて」
「分かりました。では、何かありましたらお呼びください」
コエンはトレーを持って部屋を出て行った。
あぁ、部屋が広い。やっぱりコエンにいてもらった方が良かったかな。
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