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第2章. 反乱の野心
24. アテンダントのコエン
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コッコッ……翌朝、部屋のドアがノックされた。話していたら聞こえない程度の音だ。
シアが扉を開けると男の子が、朝食を乗せたトレーを持ってきた。緊張でガチガチになっている。
「おっ、おはようございます。今日からお二人のアテンダントになりました。こっ……コエン・カートッフェルと申します。よろしく……お願いします!」
コエンは声を張り上げ、トレーを水平に保ったまま、腰を直角に曲げてお辞儀をした。
「そんなに緊張しなくても良いよ。コエン君」
シアがにっこりと微笑みかけるとコエンは照れたように目を逸らした。
「よろしく、コエン」
「昨日レティア様にお二人の強さを聞いてから、早く会ってみたいと思いまして。
レティア様の一行が辺境の街との協力を取り付けた帰りに我々の情報を聞きつけた騎士団に襲われた。もうだめだって時にレクロマさんが颯爽と現れた。そして、何十人もの王国兵にも全く臆さず、圧倒的な力で一瞬で薙ぎ倒してレティア様を救っていただいたと聞きました。
レティア様が居なくなったらカミツレは空中分解ですよ」
なんだそのエピソード、脚色が過ぎるだろ。俺が実際に戦ったのは2人だけだ。しかも1人はまだ新兵だった。
「そんな大層なものじゃない。確かに初めは数十人いたが、大半が戦意喪失してにげていった。だから、俺がそこまで強いなんてことは……」
「ははっ……ご謙遜を。レティア様は言うには、レクロマさんは魔神の如き魔法を使い、地鳴りの如き雄叫びをあげ、流星の如き高速移動で、剣神の如き剣技を見せたとか。とてつもなくかっこよかったと仰っていましたよ」
昨日この部屋を訪ねて来る前に何をしてるのかと思ったが、そんなこと話していたのか。しかもどんな化け物だよ。そんな人間存在しない。
これ以上否定しても、謙遜だと取られるんじゃないのか?
「そうか……そんなふうに言われると小っ恥ずかしいな」
「それに、私の強さと言っても私は何もしてないよ」
「そうですか……。あっ、そうだ朝食です」
コエンは頭を下げ、腕をまっすぐに突き出してトレーをシアの目の前に出して来た。
「ありがとう」
「どうぞ。あっ、うわっ……」
シアがトレーを受け取ろうとしたが、コエンは頭を上げたところでトレーに頭をぶつけてトレーを落としてしまった。硬そうなパンが転げ落ち、クラムチャウダーがこぼれた。
「あっ……すっ、すいません。すぐに片付けて僕の分を持って来ます」
コエンは急いでパンをトレーにのせ、部屋を出て行った。
「そそっかしい子だったね。それにとんでもない英雄ね、あなた」
シアは椅子をレクロマの椅子の隣まで移動させて座った。そのままレクロマに寄りかかってすり寄っている。
「まぁな、酷い誤解だ」
「誤解かわからないけどね。紫ちゃんからみたらそれが真実なんでしょ。私からもそう見えたけど」
シアは俺の後ろ髪に手を当て、撫でた。
走って来る足音が聞こえた。
「失礼します」
コエンが急いで入ってきた。コエンは水の入ったバケツを持っている。
「コエン君、手伝うよ」
「だめですよ。客であるシアさんにそんなことさせるわけにはいかないですので」
「良いから良いから」
コエンは一瞬顔が強張り、目を逸らした。
シアは雑巾を絞って床に飛び散ったクラムチャウダーを拭き取っている。コエンはシアに手間をかけさせないようにするためか、必死に片付けようとしている。
「マル……いやシアさん、すいません」
「コエン君、私の分食べない? 私、お腹空いてないから」
シアは、泣きそうになりながら必死で床を拭うコエンに優しく声をかけた。
コエンは一瞬体を硬直させた。
「えっ、でもそんなことまで……」
「良いんだよ、シアもそう言ってるんだから善意は素直に受け取った方が良い」
「わかりました。ありがとうございます」
コエンは床を拭き終わり、バケツを持って部屋を出て行った。
俺だけが何もできずに座っているだけなのがもどかしい。それに、シアが手伝うって言った時のコエンの表情が気になる。
「シア、今回会う前にコエンに会ったことあるの?」
「いや、ないけど。なんで?」
「シアが話しかけた時の反応が過敏すぎると思ったんだよ。緊張のしすぎとか個性だって言うならそれまでだけど」
シアが扉を開けると男の子が、朝食を乗せたトレーを持ってきた。緊張でガチガチになっている。
「おっ、おはようございます。今日からお二人のアテンダントになりました。こっ……コエン・カートッフェルと申します。よろしく……お願いします!」
コエンは声を張り上げ、トレーを水平に保ったまま、腰を直角に曲げてお辞儀をした。
「そんなに緊張しなくても良いよ。コエン君」
シアがにっこりと微笑みかけるとコエンは照れたように目を逸らした。
「よろしく、コエン」
「昨日レティア様にお二人の強さを聞いてから、早く会ってみたいと思いまして。
レティア様の一行が辺境の街との協力を取り付けた帰りに我々の情報を聞きつけた騎士団に襲われた。もうだめだって時にレクロマさんが颯爽と現れた。そして、何十人もの王国兵にも全く臆さず、圧倒的な力で一瞬で薙ぎ倒してレティア様を救っていただいたと聞きました。
レティア様が居なくなったらカミツレは空中分解ですよ」
なんだそのエピソード、脚色が過ぎるだろ。俺が実際に戦ったのは2人だけだ。しかも1人はまだ新兵だった。
「そんな大層なものじゃない。確かに初めは数十人いたが、大半が戦意喪失してにげていった。だから、俺がそこまで強いなんてことは……」
「ははっ……ご謙遜を。レティア様は言うには、レクロマさんは魔神の如き魔法を使い、地鳴りの如き雄叫びをあげ、流星の如き高速移動で、剣神の如き剣技を見せたとか。とてつもなくかっこよかったと仰っていましたよ」
昨日この部屋を訪ねて来る前に何をしてるのかと思ったが、そんなこと話していたのか。しかもどんな化け物だよ。そんな人間存在しない。
これ以上否定しても、謙遜だと取られるんじゃないのか?
「そうか……そんなふうに言われると小っ恥ずかしいな」
「それに、私の強さと言っても私は何もしてないよ」
「そうですか……。あっ、そうだ朝食です」
コエンは頭を下げ、腕をまっすぐに突き出してトレーをシアの目の前に出して来た。
「ありがとう」
「どうぞ。あっ、うわっ……」
シアがトレーを受け取ろうとしたが、コエンは頭を上げたところでトレーに頭をぶつけてトレーを落としてしまった。硬そうなパンが転げ落ち、クラムチャウダーがこぼれた。
「あっ……すっ、すいません。すぐに片付けて僕の分を持って来ます」
コエンは急いでパンをトレーにのせ、部屋を出て行った。
「そそっかしい子だったね。それにとんでもない英雄ね、あなた」
シアは椅子をレクロマの椅子の隣まで移動させて座った。そのままレクロマに寄りかかってすり寄っている。
「まぁな、酷い誤解だ」
「誤解かわからないけどね。紫ちゃんからみたらそれが真実なんでしょ。私からもそう見えたけど」
シアは俺の後ろ髪に手を当て、撫でた。
走って来る足音が聞こえた。
「失礼します」
コエンが急いで入ってきた。コエンは水の入ったバケツを持っている。
「コエン君、手伝うよ」
「だめですよ。客であるシアさんにそんなことさせるわけにはいかないですので」
「良いから良いから」
コエンは一瞬顔が強張り、目を逸らした。
シアは雑巾を絞って床に飛び散ったクラムチャウダーを拭き取っている。コエンはシアに手間をかけさせないようにするためか、必死に片付けようとしている。
「マル……いやシアさん、すいません」
「コエン君、私の分食べない? 私、お腹空いてないから」
シアは、泣きそうになりながら必死で床を拭うコエンに優しく声をかけた。
コエンは一瞬体を硬直させた。
「えっ、でもそんなことまで……」
「良いんだよ、シアもそう言ってるんだから善意は素直に受け取った方が良い」
「わかりました。ありがとうございます」
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俺だけが何もできずに座っているだけなのがもどかしい。それに、シアが手伝うって言った時のコエンの表情が気になる。
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