20 / 46
第2章. 反乱の野心
20. 嫉妬の女、紫ちゃん
しおりを挟む
レティアはレクロマの両手を取って強く握ってきた。
「ねぇ、あなたも王に反抗するのなら、手を組まない? さっきの戦いぶりを見る限りかなりの力を持ってるんでしょ。私たちだって仲間は100人近くいて、相当の力を持っているつもりだけど、まだ足りない。あなたの力が欲しい」
「いや、それは嬉しい話だけど俺は動けないから、迷惑をかけるだけだ。足手まといになるだけだよ。日常生活でだって他人に頼り切りになるしかない」
「それなら大丈夫でしょ。その子が剣になってあなたが持っていれば動けるんでしょ? それならずっと持っていればいいじゃない。その子は剣が本来の姿なら、そっちの方がいいでしょ。そうすればきっとあなたは素晴らしい戦力になる」
こいつ……
「……」
「どうしたの? レクロマ君」
反乱軍と協力しようかとも思ったが、やっぱり無理だ。
「シア、ごめん」
シアは俺を地面に降ろし、右手を握って剣となった。何も言わなくても俺が何をしたいのか感じ取ってくれるようだ。
「いいよ、その色を見ればわかる」
レクロマはシアを左手に持ち替えた。
「ほら、動けるじゃない。そうしていれば何も問題ないんでしょ」
レクロマは思い切り拳を握ってレティアにずいと身を乗り出した。レティアは少し距離を取ってレクロマの胸を手で軽く押した。
「え? 何? どうしたの?」
レティアの左頬を思い切り右拳で殴り飛ばすとレティアの体は軽く3メートルは吹っ飛んだ。
「……? は? え?」
レティアは上体だけ起き上がって左頬に手を当て、面を食らったようにレクロマの方をじっと見ていた。
「レティア様っ……」
アリジスは急いでレティアの元へ駆け寄った。
「貴様、どういうつもりだ。よくもレティア様を殴ってくれたな」
アリジスは剥き出しの不信感を俺にぶつけてくる。でも、今の俺にはそんなものどうだっていい。
「……ふざけるな……ふざけるな! シアを道具扱いするな。シアは俺の大切な唯一信頼できるパートナーなんだ。シアはただがむしゃらで必死なだけの空っぽの俺に意味をくれる。俺のわがままを聞いてもらって、迷惑をかけて、俺は初めてこうやって動いて王を倒すって目標に向かって進めるんだ。何も知らないお前みたいな奴が、シアを下に見て語るな!」
レティアは一瞬驚いてみせたが、目をとろんとさせてレクロマを見つめてきた。
「……こんなの、初めて……」
レティアは顔を背けて指をいじっている。
「はぁ? 何だその返し、ふざけてるのか」
「レティア様、どうしました? 大丈夫ですか?」
アリジスはレティアを抱き起こした。そして、レティアの前で手を振ってみるが、反応は無い。
「……芯を持った志、かっこいい」
レティアはレクロマに聞こえないくらいの声でぽそりと呟いた。
「レティア様? なんで……」
レティアは焦ったように起き上がって、両腕をアリジスに向けて思い切り伸ばして否定するように手を振った。
「違うよ、違う、冗談だから。殴られてそんなこと思うわけないでしょ」
「冗談ですか……」
「そうよ、冗談……そんなわけないもんね……ははは……」
俺は膝立ちになってシアを手放した。すると人間の姿に戻って俺を正面から抱きしめた。
「レクロマ、ありがとう。私のパートナー」
シアはそのままレクロマを抱き抱えて、レティアの方へ向かった。そして、レティアの目を覗き込んでじっと見た。
「何よ!」
「醜いね、嫉妬の色だ」
嫉妬の色、紫色か。
「はぁ? 失礼な人ね。そんなわけないでしょ。あなたがその人に何しようが私はどうも思わないわよ」
「取り繕わなくていいよ、紫ちゃん」
「紫……ちゃん……」
レティアは自分の身体を見渡して紫がどこにあるのかを探しているようだ。
「紫って何のことよ、おちょくってるの?」
「そんなことはないよ、紫ちゃん」
シアはおちょくったように紫ちゃんことレティアに笑いかける。
「そ……そんなことよりも! お礼とお詫びを兼ねて私たちの施設に来て欲しいの」
「レティア様、本当にこいつらを基地に入れるんですか? レティア様に手を出すような奴ですよ」
「いいの、私が気に入ったから」
「そうですか……わかりました」
「ねぇ、あなたも王に反抗するのなら、手を組まない? さっきの戦いぶりを見る限りかなりの力を持ってるんでしょ。私たちだって仲間は100人近くいて、相当の力を持っているつもりだけど、まだ足りない。あなたの力が欲しい」
「いや、それは嬉しい話だけど俺は動けないから、迷惑をかけるだけだ。足手まといになるだけだよ。日常生活でだって他人に頼り切りになるしかない」
「それなら大丈夫でしょ。その子が剣になってあなたが持っていれば動けるんでしょ? それならずっと持っていればいいじゃない。その子は剣が本来の姿なら、そっちの方がいいでしょ。そうすればきっとあなたは素晴らしい戦力になる」
こいつ……
「……」
「どうしたの? レクロマ君」
反乱軍と協力しようかとも思ったが、やっぱり無理だ。
「シア、ごめん」
シアは俺を地面に降ろし、右手を握って剣となった。何も言わなくても俺が何をしたいのか感じ取ってくれるようだ。
「いいよ、その色を見ればわかる」
レクロマはシアを左手に持ち替えた。
「ほら、動けるじゃない。そうしていれば何も問題ないんでしょ」
レクロマは思い切り拳を握ってレティアにずいと身を乗り出した。レティアは少し距離を取ってレクロマの胸を手で軽く押した。
「え? 何? どうしたの?」
レティアの左頬を思い切り右拳で殴り飛ばすとレティアの体は軽く3メートルは吹っ飛んだ。
「……? は? え?」
レティアは上体だけ起き上がって左頬に手を当て、面を食らったようにレクロマの方をじっと見ていた。
「レティア様っ……」
アリジスは急いでレティアの元へ駆け寄った。
「貴様、どういうつもりだ。よくもレティア様を殴ってくれたな」
アリジスは剥き出しの不信感を俺にぶつけてくる。でも、今の俺にはそんなものどうだっていい。
「……ふざけるな……ふざけるな! シアを道具扱いするな。シアは俺の大切な唯一信頼できるパートナーなんだ。シアはただがむしゃらで必死なだけの空っぽの俺に意味をくれる。俺のわがままを聞いてもらって、迷惑をかけて、俺は初めてこうやって動いて王を倒すって目標に向かって進めるんだ。何も知らないお前みたいな奴が、シアを下に見て語るな!」
レティアは一瞬驚いてみせたが、目をとろんとさせてレクロマを見つめてきた。
「……こんなの、初めて……」
レティアは顔を背けて指をいじっている。
「はぁ? 何だその返し、ふざけてるのか」
「レティア様、どうしました? 大丈夫ですか?」
アリジスはレティアを抱き起こした。そして、レティアの前で手を振ってみるが、反応は無い。
「……芯を持った志、かっこいい」
レティアはレクロマに聞こえないくらいの声でぽそりと呟いた。
「レティア様? なんで……」
レティアは焦ったように起き上がって、両腕をアリジスに向けて思い切り伸ばして否定するように手を振った。
「違うよ、違う、冗談だから。殴られてそんなこと思うわけないでしょ」
「冗談ですか……」
「そうよ、冗談……そんなわけないもんね……ははは……」
俺は膝立ちになってシアを手放した。すると人間の姿に戻って俺を正面から抱きしめた。
「レクロマ、ありがとう。私のパートナー」
シアはそのままレクロマを抱き抱えて、レティアの方へ向かった。そして、レティアの目を覗き込んでじっと見た。
「何よ!」
「醜いね、嫉妬の色だ」
嫉妬の色、紫色か。
「はぁ? 失礼な人ね。そんなわけないでしょ。あなたがその人に何しようが私はどうも思わないわよ」
「取り繕わなくていいよ、紫ちゃん」
「紫……ちゃん……」
レティアは自分の身体を見渡して紫がどこにあるのかを探しているようだ。
「紫って何のことよ、おちょくってるの?」
「そんなことはないよ、紫ちゃん」
シアはおちょくったように紫ちゃんことレティアに笑いかける。
「そ……そんなことよりも! お礼とお詫びを兼ねて私たちの施設に来て欲しいの」
「レティア様、本当にこいつらを基地に入れるんですか? レティア様に手を出すような奴ですよ」
「いいの、私が気に入ったから」
「そうですか……わかりました」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる